「毎日JP」より転載。
受験生やその親にとっては、一生に一度の大学受験を台無しにされたという思いだろう。こういう制度いじりは、決めるのは簡単だが、実施する立場の人間、制度を適応される立場の人間には面倒極まりない話である。
耶律楚材(字はうろ覚え)というのはチンギス・ハーン(これも我々の時代にはジンギス・カンだったのが、いつのまにか変更された。こういうのも迷惑な話だ。鎌倉時代の始まりの年号さえ「いい国作ろう」の1192ではないという話もあるし、西暦はキリストの誕生の年が紀元のはずだのに、キリストはその数年前に生まれていたというに至っては、笑い話である。)の宰相であった男だが、彼が言った名言がある。「一利を興すは一害を除くに如かず」という言葉だ。「改革」や「改善」を考えている、組織の上にいる人間は覚えておくべき言葉だろう。
大学入試センターの制度いじりは数年置きに必ず出てくる。その度に受験生は新しい制度がどんなものになるのか、実施されるまで分からず、不安でたまらないはずだ。しかも下記記事のように実害まである。これでは受験生いじめである。
(以下引用)
. 大学入試:センター試験 トラブル「予想された」 4500人影響、受験生「ずっと動揺」
「みんな緊張して受験している。しっかりやってほしい」--。15日終了した12年度の大学入試センター試験では、問題の配布方法や英語のリスニング機器の搬送漏れなど、基本的な準備不足によるミスやトラブルが相次ぎ、受験生からは怒りや落胆の声が上がった。1990年から始まったセンター試験の歴史に、大きな汚点を残した今回の混乱。予備校関係者は「予想されていた」と指摘、センターは会見で「大変申し訳ない」と陳謝した。【まとめ・福田隆】
「初日はずっと動揺したままで力を十分発揮できなかった。二度とあってほしくない」
大分県立看護科学大(大分市)の試験会場で、「地理歴史」と「公民」の問題冊子を誤配布された私立高3年の男子生徒(17)は、残念そうに話した。
男子生徒は「公民」の倫理を第1解答科目にするため、試験開始直前まで勉強をしていた。だが、午前9時半の試験開始時に配られたのは「地理歴史」のみ。「『あれっ』とびっくりしてすぐに配布の間違いに気付いたが、緊張と試験官が出たり入ったりするので言い出せなかった」。同大がミスに気付いたのは開始30分後で、第1解答科目終了後に「公民」の問題冊子を配布した。結局、男子生徒は最初に本来第2解答科目とするはずだった日本史を解き、次に倫理を解答。希望と逆受験となった。
2科目終了後、試験官が誤配布を告知し、本来と逆になった受験生は申し出るように指示、男子生徒を含む2人が手を挙げた。別室で倫理を第1解答科目の、日本史を第2解答科目の解答用紙に、約20分かけてそれぞれマークし直した。
男子生徒は「試験は別教室だし、休み時間が友人とずれてリラックスできなかった」と不安そうな表情。同大は「申し訳ない」と陳謝している。
また、科目選択の複雑化で、問題冊子の配布に時間を要した試験会場も相次いだ。
兵庫県西宮市の関西学院大B号館では、冊子を間違いなく配布するため開始時間が10分繰り下げとなり、1会場では全国最多となる270人の受験生に影響が出た。県立高3年の女子生徒(17)は、「休み時間も削られた。その時間に次の科目のために何か覚えることができた。人数を確認しておけば遅れずにすんだはずだ」。
トラブルの原因として大学側から聞こえるのが、今回の科目選択方式の複雑さだ。配布ミスで受験生4人が解答を書き直した鹿児島純心女子大(鹿児島県薩摩川内市)は、試験前に研修会を5回開きうち2回は冊子の配布方法を指導したがミスが起き、「確認が十分でなかったのかもしれない」と悔やむ。5会場で問題冊子の配布が遅れた信州大(長野県松本市)は「試験のやり方が複雑化したためではないか」と話した。
◇センター理事陳謝 「試験は共同実施」責任明言せず
大学入試センターの惣脇宏理事は15日夜、東京都目黒区のセンターで記者会見し、多発したトラブルについて「多数の受験生の方にご迷惑をお掛けし、大変申し訳なくおわび申し上げます」と陳謝した。トラブルを招いた責任については「センター試験は、センターと参加大学との共同実施」などとの説明を繰り返し、センター自身の責任を明言しなかった。【木村健二】
◇再試験対象、7会場148人
大学入試センターは、14日に実施した英語のリスニング試験でICプレーヤーの届け忘れがあった宮城県立気仙沼高(気仙沼市)で、機器到着までの待機中に体調不良を訴えた受験生1人について、21日に再試験を実施するとした。
このほか、再試験の対象になったのは6会場で計147人。長崎県立対馬高(対馬市)では、地理歴史と公民の2科目受験で、試験開始後に公民の問題冊子を配り、試験時間が2分間不足。32人に再試験の可能性がある。また、外国語(筆記)では計51人が再試験の対象になった。岩手大は同大試験場(盛岡市)で、暖房機の音が約30分間にわたって断続的に鳴ったため、受験生49人が試験に集中できなくなった。
◇問題訂正6カ所、解答に影響なし
12年度の大学入試センター試験では、誤植などによる問題の訂正が計6カ所あった。大学入試センターは、いずれも解答に影響がないとしている。
センターは15日、14日に行われた外国語の英語(筆記)について出典文献の著者のつづりにミスがあったと発表。15日午後に大学教員からの指摘で判明した。このほか、理科総合B▽数学2・数学B▽地理B▽外国語の韓国語▽地理Aと地理Bの共通問題で、地図の欠落や選択肢の表現ミスがあった。【木村健二】
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■ことば
◇第1解答科目
日本史と世界史を同時に選択できないなど、従来のセンター試験の硬直的な面を改善し、受験生の選択の幅を広げるため、今回の試験から地理歴史と公民(計10科目)、理科(計6科目)の各教科で、最大2科目ずつ受験できるようになった。
最初に解答する科目を「第1解答科目」、二つ目を「第2解答科目」とする。センター試験の点数を合否に使う大学では、2科目とも採用したり、2科目の中から高得点の方を採用したりするパターンがあるが、国立大の多くは第1解答科目の点数を採用するため、受験生にとってはこの科目の出来が勝負どころとなる。今回のトラブルでは、第1解答科目とするはずだった科目の問題冊子の配布が遅れ、やむを得ず第2解答科目から解いた受験生もおり、大学入試センターが救済策を実施している。
毎日新聞 2012年1月16日 東京朝刊
受験生やその親にとっては、一生に一度の大学受験を台無しにされたという思いだろう。こういう制度いじりは、決めるのは簡単だが、実施する立場の人間、制度を適応される立場の人間には面倒極まりない話である。
耶律楚材(字はうろ覚え)というのはチンギス・ハーン(これも我々の時代にはジンギス・カンだったのが、いつのまにか変更された。こういうのも迷惑な話だ。鎌倉時代の始まりの年号さえ「いい国作ろう」の1192ではないという話もあるし、西暦はキリストの誕生の年が紀元のはずだのに、キリストはその数年前に生まれていたというに至っては、笑い話である。)の宰相であった男だが、彼が言った名言がある。「一利を興すは一害を除くに如かず」という言葉だ。「改革」や「改善」を考えている、組織の上にいる人間は覚えておくべき言葉だろう。
大学入試センターの制度いじりは数年置きに必ず出てくる。その度に受験生は新しい制度がどんなものになるのか、実施されるまで分からず、不安でたまらないはずだ。しかも下記記事のように実害まである。これでは受験生いじめである。
(以下引用)
. 大学入試:センター試験 トラブル「予想された」 4500人影響、受験生「ずっと動揺」
「みんな緊張して受験している。しっかりやってほしい」--。15日終了した12年度の大学入試センター試験では、問題の配布方法や英語のリスニング機器の搬送漏れなど、基本的な準備不足によるミスやトラブルが相次ぎ、受験生からは怒りや落胆の声が上がった。1990年から始まったセンター試験の歴史に、大きな汚点を残した今回の混乱。予備校関係者は「予想されていた」と指摘、センターは会見で「大変申し訳ない」と陳謝した。【まとめ・福田隆】
「初日はずっと動揺したままで力を十分発揮できなかった。二度とあってほしくない」
大分県立看護科学大(大分市)の試験会場で、「地理歴史」と「公民」の問題冊子を誤配布された私立高3年の男子生徒(17)は、残念そうに話した。
男子生徒は「公民」の倫理を第1解答科目にするため、試験開始直前まで勉強をしていた。だが、午前9時半の試験開始時に配られたのは「地理歴史」のみ。「『あれっ』とびっくりしてすぐに配布の間違いに気付いたが、緊張と試験官が出たり入ったりするので言い出せなかった」。同大がミスに気付いたのは開始30分後で、第1解答科目終了後に「公民」の問題冊子を配布した。結局、男子生徒は最初に本来第2解答科目とするはずだった日本史を解き、次に倫理を解答。希望と逆受験となった。
2科目終了後、試験官が誤配布を告知し、本来と逆になった受験生は申し出るように指示、男子生徒を含む2人が手を挙げた。別室で倫理を第1解答科目の、日本史を第2解答科目の解答用紙に、約20分かけてそれぞれマークし直した。
男子生徒は「試験は別教室だし、休み時間が友人とずれてリラックスできなかった」と不安そうな表情。同大は「申し訳ない」と陳謝している。
また、科目選択の複雑化で、問題冊子の配布に時間を要した試験会場も相次いだ。
兵庫県西宮市の関西学院大B号館では、冊子を間違いなく配布するため開始時間が10分繰り下げとなり、1会場では全国最多となる270人の受験生に影響が出た。県立高3年の女子生徒(17)は、「休み時間も削られた。その時間に次の科目のために何か覚えることができた。人数を確認しておけば遅れずにすんだはずだ」。
トラブルの原因として大学側から聞こえるのが、今回の科目選択方式の複雑さだ。配布ミスで受験生4人が解答を書き直した鹿児島純心女子大(鹿児島県薩摩川内市)は、試験前に研修会を5回開きうち2回は冊子の配布方法を指導したがミスが起き、「確認が十分でなかったのかもしれない」と悔やむ。5会場で問題冊子の配布が遅れた信州大(長野県松本市)は「試験のやり方が複雑化したためではないか」と話した。
◇センター理事陳謝 「試験は共同実施」責任明言せず
大学入試センターの惣脇宏理事は15日夜、東京都目黒区のセンターで記者会見し、多発したトラブルについて「多数の受験生の方にご迷惑をお掛けし、大変申し訳なくおわび申し上げます」と陳謝した。トラブルを招いた責任については「センター試験は、センターと参加大学との共同実施」などとの説明を繰り返し、センター自身の責任を明言しなかった。【木村健二】
◇再試験対象、7会場148人
大学入試センターは、14日に実施した英語のリスニング試験でICプレーヤーの届け忘れがあった宮城県立気仙沼高(気仙沼市)で、機器到着までの待機中に体調不良を訴えた受験生1人について、21日に再試験を実施するとした。
このほか、再試験の対象になったのは6会場で計147人。長崎県立対馬高(対馬市)では、地理歴史と公民の2科目受験で、試験開始後に公民の問題冊子を配り、試験時間が2分間不足。32人に再試験の可能性がある。また、外国語(筆記)では計51人が再試験の対象になった。岩手大は同大試験場(盛岡市)で、暖房機の音が約30分間にわたって断続的に鳴ったため、受験生49人が試験に集中できなくなった。
◇問題訂正6カ所、解答に影響なし
12年度の大学入試センター試験では、誤植などによる問題の訂正が計6カ所あった。大学入試センターは、いずれも解答に影響がないとしている。
センターは15日、14日に行われた外国語の英語(筆記)について出典文献の著者のつづりにミスがあったと発表。15日午後に大学教員からの指摘で判明した。このほか、理科総合B▽数学2・数学B▽地理B▽外国語の韓国語▽地理Aと地理Bの共通問題で、地図の欠落や選択肢の表現ミスがあった。【木村健二】
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■ことば
◇第1解答科目
日本史と世界史を同時に選択できないなど、従来のセンター試験の硬直的な面を改善し、受験生の選択の幅を広げるため、今回の試験から地理歴史と公民(計10科目)、理科(計6科目)の各教科で、最大2科目ずつ受験できるようになった。
最初に解答する科目を「第1解答科目」、二つ目を「第2解答科目」とする。センター試験の点数を合否に使う大学では、2科目とも採用したり、2科目の中から高得点の方を採用したりするパターンがあるが、国立大の多くは第1解答科目の点数を採用するため、受験生にとってはこの科目の出来が勝負どころとなる。今回のトラブルでは、第1解答科目とするはずだった科目の問題冊子の配布が遅れ、やむを得ず第2解答科目から解いた受験生もおり、大学入試センターが救済策を実施している。
毎日新聞 2012年1月16日 東京朝刊
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