田中宇が現在の東アジア情勢について非常に有益な情報を書いているので、転載しておく。
韓国のイ・ミョンバクの反日的言動の原因は、一見それと無関係な北朝鮮の国情の変化であった、ということだ。しかも、その北朝鮮の国情の変化は、今後の東アジアの政治に大きな影響を与えそうなので、これは重要記事だろう。
正直言って、北朝鮮などアジアのトリックスターにすぎず、連中のやるのは芝居だけだ、と思っていたが、北朝鮮と中国、韓国との関係が日本にも及んでくる、となれば無関心でいるわけにはいかない。
で、北朝鮮で軍部の力が弱まり、経済開放政策を今後取っていく、となれば、「経済的張り子の虎」である韓国が追い抜かれるのもそう遠くはないだろう。韓国から米資本が引き上げたら、韓国はその場で破産である。日韓スワッブ協定を破棄するだけでも相当のダメージだろう。
むしろ、「現在は何もない」からこそ、北朝鮮は飛躍的に発展していく可能性がある、と私は見ている。地下資源は日本以上だし、原爆だって持っているから政治的にも強い。
さて、なかなか面白い情勢になってきたようである。これだから、政治というのは楽しいのだ。(外野席で見る分にはね)
しかし、日本はこの変化にまともに対応できるのかね。そういう政治家や官僚がいるようには、とても思えないのだが。
「国民の生活が第一」も、何だかドメスティックな政治課題にしか関心が無さそうだし、他の政党も同様だ。国際政治となると右翼しか発言しない有様である。
大所高所から物事を見る、という人間が日本の政治の中心には存在していないようである。ましてや国家百年の大計など無理だろう。
横井小楠の構想を大久保利通が現実的な計画にし、西郷隆盛が実行する、というくらいの大人物による政治改革が欲しいところだが、「維新」を名乗ればいい、というわけではない。
(以下引用) *後半略
東アジア新秩序の悪役にされる日本
2012年8月29日 田中 宇
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8月17日、北朝鮮の金正恩の摂政役で、事実上の国策決定者である張成沢(金正日の妹の夫)が北京を訪問し、胡錦涛主席や温家宝首相といった首脳陣と会談した。張成沢は、9月に金正恩を訪中させたいので国賓として受け入れてほしいと中国側に要請した。中国側は、北朝鮮を同盟国として支持するとともに、北朝鮮が中国式の経済改革を採用すれば経済発展できると勧めた。中朝は、両国の国境地帯の北朝鮮側にある黄金坪や羅先の経済特区で、経済協力を強化することを決めた。(China's Wen urges North Korea to let the market help revamp economy)
張成沢は、妻(金正日の妹)である金敬姫と一緒に、以前から北朝鮮の中枢で、中国式の経済開放策をやろうとしてきた。先代の指導者だった金正日は、支援元のソ連が崩壊して北朝鮮が飢餓状態になった90年代、軍部に権力を与える「先軍政治」をやらざるを得ず、昨年末に死ぬまで軍部に頭が上がらなかった。だが今年、金正恩への世代交代が行われるとともに、摂政役の張成沢が、権力中枢の軍幹部(李英鎬ら)を7月に更迭して軍から実権を奪い(朝鮮労働党への権力返還)、北朝鮮の国策を経済開放の方向に大きく転換し始めた。その流れの中の最新の動きが、今回の張成沢の訪中であり、中国が北朝鮮の経済開放策への協力を強めると決めたことだ。(◆経済自由化路線に戻る北朝鮮)
北朝鮮は最近、平壌に駐在する米国のAP通信社に、中朝国境の羅先経済特区を取材させたりして、外資導入に向けた宣伝にも力を入れている。(China's flagging economic aid to North Korea)
北朝鮮はこれまで何度も経済開放策を試みて失敗し、中国の協力も無為に終わってきたので、今後の試みも成功するとは限らない。だが今回が従来と決定的に異なるのは、北朝鮮の中枢で張成沢ら経済改革派が権力を握り、経済改革に反対してきた軍部が失権したことだ。今後、北朝鮮は経済面で中国の傘下に入る傾向をさらに強めるとともに、中国がいやがる核実験や韓国との交戦を避ける傾向を強めるだろう。
この変化は、経済崩壊していく北朝鮮を支援する優位な立場で南北間交渉をしていこうと考えていた韓国政府にとって、危機的だ。韓国優位の南北統一ができなくなり、中国に仲裁してもらわないと北との対話もできなくなる。北朝鮮が中国の傘下でうまく経済成長していくと、韓国の出る幕はなくなり、韓国がいずれ取ろうと考えてきた北朝鮮の経済利権は、中国にもっていかれる。韓国が頼みの綱にしてきた米国は、この数年、ときどき北朝鮮との交渉を試みるも失敗し続け、問題の解決に本腰を入れるまでに至っていない。韓国は今後、米国でなく、中国を仲裁役として頼って北朝鮮と向き合っていく時代に入る。韓国にとって最重要の国が、米国から中国へと、静かにだが劇的に転換している。(Ties with China Are Key to Korea's Future)
そうした現状に立つと、韓国の李明博大統領が8月10日に竹島を訪問し、日韓関係を劇的に悪化させた背景も見えてくる。以前の記事に書いたとおり、今後の韓国は北朝鮮への敵対をゆるめ、南北対話を再開せねばならないので、代わりの悪役として再び日本を引っ張り出す策略だろう。米国政府は、日韓に安保協定を結ばせて、日米と米韓がバラバラだった東アジアの安保戦略を日米韓の三角関係に転換させたい。だから李明博は、これまで日韓関係を良好に保とうとしてきた。だが今や、韓国にとって米国の重要性が落ちている。だから韓国側は、米国の思惑を無視し、米国側からの批判に耳を貸さず、竹島問題で反日感情を煽っている。(◆李明博の竹島訪問と南北関係)(Time for U.S. to help Japan, South Korea to get along)
李明博は来年初めに大統領任期が終わって下野するので、今後万が一、韓国が再び日本と協調せねばならなくなったら、その時の韓国は次期政権だろうから、日本との喧嘩を李明博の竹島訪問のせいにして、再び日本と協調できる。人気が落ちている李明博は、次期政権を狙う同僚の朴槿恵に頼まれ、竹島訪問、反日扇動の戦略に乗ったのかもしれない。
この時期、米国の裁判所は、韓国側の感情を逆撫でするかのように、米国企業であるアップルと、韓国企業であるサムソンの、スマートフォンの技術特許をめぐる裁判で、アップル一方的勝訴の判決を出した。これは、米国企業を勝たせたい陪審員の政治判断の結果なので、韓国側は怒っている。韓国には、米韓FTAに対する不満も残っている。韓国は、経済面でも米国との同盟関係から離脱していくかもしれない。
(日本政府は4年ぶりに北朝鮮との直接交渉を再開する。これも、北朝鮮をめぐる状況の変化を受けた動きだろう。交渉を北京でやるところがポイントだ。尖閣問題でいくら中国と対峙していても、力関係からいって、日本は北朝鮮との交渉を北京でやらざるを得ない)(North Korea, Japan to hold first direct talks in four years)
韓国のイ・ミョンバクの反日的言動の原因は、一見それと無関係な北朝鮮の国情の変化であった、ということだ。しかも、その北朝鮮の国情の変化は、今後の東アジアの政治に大きな影響を与えそうなので、これは重要記事だろう。
正直言って、北朝鮮などアジアのトリックスターにすぎず、連中のやるのは芝居だけだ、と思っていたが、北朝鮮と中国、韓国との関係が日本にも及んでくる、となれば無関心でいるわけにはいかない。
で、北朝鮮で軍部の力が弱まり、経済開放政策を今後取っていく、となれば、「経済的張り子の虎」である韓国が追い抜かれるのもそう遠くはないだろう。韓国から米資本が引き上げたら、韓国はその場で破産である。日韓スワッブ協定を破棄するだけでも相当のダメージだろう。
むしろ、「現在は何もない」からこそ、北朝鮮は飛躍的に発展していく可能性がある、と私は見ている。地下資源は日本以上だし、原爆だって持っているから政治的にも強い。
さて、なかなか面白い情勢になってきたようである。これだから、政治というのは楽しいのだ。(外野席で見る分にはね)
しかし、日本はこの変化にまともに対応できるのかね。そういう政治家や官僚がいるようには、とても思えないのだが。
「国民の生活が第一」も、何だかドメスティックな政治課題にしか関心が無さそうだし、他の政党も同様だ。国際政治となると右翼しか発言しない有様である。
大所高所から物事を見る、という人間が日本の政治の中心には存在していないようである。ましてや国家百年の大計など無理だろう。
横井小楠の構想を大久保利通が現実的な計画にし、西郷隆盛が実行する、というくらいの大人物による政治改革が欲しいところだが、「維新」を名乗ればいい、というわけではない。
(以下引用) *後半略
東アジア新秩序の悪役にされる日本
2012年8月29日 田中 宇
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8月17日、北朝鮮の金正恩の摂政役で、事実上の国策決定者である張成沢(金正日の妹の夫)が北京を訪問し、胡錦涛主席や温家宝首相といった首脳陣と会談した。張成沢は、9月に金正恩を訪中させたいので国賓として受け入れてほしいと中国側に要請した。中国側は、北朝鮮を同盟国として支持するとともに、北朝鮮が中国式の経済改革を採用すれば経済発展できると勧めた。中朝は、両国の国境地帯の北朝鮮側にある黄金坪や羅先の経済特区で、経済協力を強化することを決めた。(China's Wen urges North Korea to let the market help revamp economy)
張成沢は、妻(金正日の妹)である金敬姫と一緒に、以前から北朝鮮の中枢で、中国式の経済開放策をやろうとしてきた。先代の指導者だった金正日は、支援元のソ連が崩壊して北朝鮮が飢餓状態になった90年代、軍部に権力を与える「先軍政治」をやらざるを得ず、昨年末に死ぬまで軍部に頭が上がらなかった。だが今年、金正恩への世代交代が行われるとともに、摂政役の張成沢が、権力中枢の軍幹部(李英鎬ら)を7月に更迭して軍から実権を奪い(朝鮮労働党への権力返還)、北朝鮮の国策を経済開放の方向に大きく転換し始めた。その流れの中の最新の動きが、今回の張成沢の訪中であり、中国が北朝鮮の経済開放策への協力を強めると決めたことだ。(◆経済自由化路線に戻る北朝鮮)
北朝鮮は最近、平壌に駐在する米国のAP通信社に、中朝国境の羅先経済特区を取材させたりして、外資導入に向けた宣伝にも力を入れている。(China's flagging economic aid to North Korea)
北朝鮮はこれまで何度も経済開放策を試みて失敗し、中国の協力も無為に終わってきたので、今後の試みも成功するとは限らない。だが今回が従来と決定的に異なるのは、北朝鮮の中枢で張成沢ら経済改革派が権力を握り、経済改革に反対してきた軍部が失権したことだ。今後、北朝鮮は経済面で中国の傘下に入る傾向をさらに強めるとともに、中国がいやがる核実験や韓国との交戦を避ける傾向を強めるだろう。
この変化は、経済崩壊していく北朝鮮を支援する優位な立場で南北間交渉をしていこうと考えていた韓国政府にとって、危機的だ。韓国優位の南北統一ができなくなり、中国に仲裁してもらわないと北との対話もできなくなる。北朝鮮が中国の傘下でうまく経済成長していくと、韓国の出る幕はなくなり、韓国がいずれ取ろうと考えてきた北朝鮮の経済利権は、中国にもっていかれる。韓国が頼みの綱にしてきた米国は、この数年、ときどき北朝鮮との交渉を試みるも失敗し続け、問題の解決に本腰を入れるまでに至っていない。韓国は今後、米国でなく、中国を仲裁役として頼って北朝鮮と向き合っていく時代に入る。韓国にとって最重要の国が、米国から中国へと、静かにだが劇的に転換している。(Ties with China Are Key to Korea's Future)
そうした現状に立つと、韓国の李明博大統領が8月10日に竹島を訪問し、日韓関係を劇的に悪化させた背景も見えてくる。以前の記事に書いたとおり、今後の韓国は北朝鮮への敵対をゆるめ、南北対話を再開せねばならないので、代わりの悪役として再び日本を引っ張り出す策略だろう。米国政府は、日韓に安保協定を結ばせて、日米と米韓がバラバラだった東アジアの安保戦略を日米韓の三角関係に転換させたい。だから李明博は、これまで日韓関係を良好に保とうとしてきた。だが今や、韓国にとって米国の重要性が落ちている。だから韓国側は、米国の思惑を無視し、米国側からの批判に耳を貸さず、竹島問題で反日感情を煽っている。(◆李明博の竹島訪問と南北関係)(Time for U.S. to help Japan, South Korea to get along)
李明博は来年初めに大統領任期が終わって下野するので、今後万が一、韓国が再び日本と協調せねばならなくなったら、その時の韓国は次期政権だろうから、日本との喧嘩を李明博の竹島訪問のせいにして、再び日本と協調できる。人気が落ちている李明博は、次期政権を狙う同僚の朴槿恵に頼まれ、竹島訪問、反日扇動の戦略に乗ったのかもしれない。
この時期、米国の裁判所は、韓国側の感情を逆撫でするかのように、米国企業であるアップルと、韓国企業であるサムソンの、スマートフォンの技術特許をめぐる裁判で、アップル一方的勝訴の判決を出した。これは、米国企業を勝たせたい陪審員の政治判断の結果なので、韓国側は怒っている。韓国には、米韓FTAに対する不満も残っている。韓国は、経済面でも米国との同盟関係から離脱していくかもしれない。
(日本政府は4年ぶりに北朝鮮との直接交渉を再開する。これも、北朝鮮をめぐる状況の変化を受けた動きだろう。交渉を北京でやるところがポイントだ。尖閣問題でいくら中国と対峙していても、力関係からいって、日本は北朝鮮との交渉を北京でやらざるを得ない)(North Korea, Japan to hold first direct talks in four years)
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