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徽宗皇帝のブログ

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法務省審議会で暴露された権力の「身内擁護」の実態
昨日の「日本社会の二重規範」についての記事の、証拠そのものとも言える記事が「阿修羅」にあったので、転載し、資料として保存しておく。日本は最初から「法治国家」などではないのである。法は、上の人間(権力サイドの人間)が下の人間(一般国民)を支配するための道具としか、上の人間は考えていないのだろう。


(以下引用)



身内擁護に御用学者…法務省の審議会に参加した映画監督・周防正行がトンデモ実態暴露!(リテラ)
http://www.asyura2.com/15/senkyo186/msg/811.html
投稿者 赤かぶ 日時 2015 年 6 月 16 日 21:30:05: igsppGRN/E9PQ
   
 

                 『それでもボクは会議で闘う ドキュメント刑事司法改革』(岩波書店)


身内擁護に御用学者…法務省の審議会に参加した映画監督・周防正行がトンデモ実態暴露!
http://lite-ra.com/2015/06/post-1194.html
2015.06.16. リテラ


 周防正行といえば、映画『Shall we ダンス?』や『シコふんじゃった』で日本アカデミー賞を受賞した日本を代表する映画監督。バレリーナ・草刈民代の夫としても知られている。


 その周防が警察や検察の取り調べを改革するための法案作りの審議会に参加していた――。そんな事実を知ったら、少し意外な感じがするかもしれない。しかし、それは、われわれ国民にとっては大正解の人選だった。


 周防はこのほど、『それでもボクは会議で闘う ドキュメント刑事司法改革』(岩波書店)という本を出版。その会議で自分が体験したできごとをつぶさに公開し、お役所の審議会の唖然とするような実態を暴露したのだ。


 周防が法務省所管の法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」委員に選出されたのは2011年6月。当時は調書改ざんなど検察の不祥事が大きな社会問題となり、足利事件が冤罪だったことも発覚するなど、司法・警察の不祥事が続発していた。そこで制度改革の必要性が指摘され、設置されたのが、この部会だった。


 周防は07年に痴漢冤罪事件をテーマにした映画『それでもボクはやっていない』を製作して以降も、現状の司法制度全般に問題意識を持っていた。日弁連からの推挙を受けた周防は当初、受諾することを悩んだが「映画監督として取材するつもりで」との言葉に説得され、これを引き受ける。


 しかし、周防の目の前に立ちはだかったのは、不条理ともいえるお役所の厚い壁だった。


 会議のテーマは多岐に及んだが、本書では「取り調べの可視化」「裁判における証拠の全面開示」、そして人質司法と言われる「身柄拘束の実態」についての議論がメインとなっている。


 まずは特別部会の最大の使命だという「取り調べの可視化」についてだが、これは最初の人選からしてひどいものだったらしい。


「(委員には)取調べの録音・録画を研究している学者は選ばれていなかったようだし。取調べにおける被疑者の心理状態について考えるなら、心理学社、あるいは心理学的知見から取調べを研究している学者が選ばれても当然だと思うのだが、そういった人選はまったくされていなかった」


 親しい法曹関係者からも「絶望的メンバーですね」とスタート早々言われてしまったという。


 しかも、その予想は見事に当たってしまった。約1年話し合った末、「部会長試案」として出された指針は、とんでもないシロモノだった。


「可視化」は足利事件だけでなく志布志事件、氷見事件など密室の取り調べでの自白強要、その延長上で警察によって作られた冤罪が多数存在することで、導入が検討されることになったものだ。


 ところが、「部会長試案」にはその取り調べのやり方に対するこんな総括が書かれてあった。


「取調べによる徹底的な事案の解明と綿密な証拠収集及び立証を追求する姿勢は、事案の真相究明と真犯人の適正な処罰を求める国民に支持され、その信頼を得るとともに、我が国の良好な治安を保つことに大きく貢献してきたと言い得る」
「職務熱心のあまり取調官が無理な取り調べをし、それにより得られた虚偽の自白調書が誤判の原因となったと指摘される事態が見られる」


 長いだけでわかりづらいお役所文書だが、ようは、これまでの自分たちのやり方を全肯定し、称賛しているのだ。反省や改革の姿勢などまったくないことがよくわかるだろう。周防もこれには、愕然としたようだ。


「ため息しか出ない。いつ国民は密室での取調べを支持し、信頼したのだろう? そしてすべては『指摘されている』だけで、実際にそうなっていると書かない。これでは、今までの取り調べがいかに優れたものであったかを強調し、その弊害については『取調官の職務熱心』という個人的な資質の問題に帰しているだけではないか。」


 さらに、部会長試案では、可視化についての対象も提案されていたのだが、それは「裁判員制度事件の身柄事件だけを対象とする」(甲案)と「録画・録音は取調官の一定の裁量に委ねる」(乙案)の2つ。どっちにしても、ほとんどの事件の取り調べで可視化を避けることのできる、改革でもなんでもないシロモノだった。


 当時、周防は親しい弁護士から、「試案が提示された会議で、どうして席を立たなかったのか」批判され、周防自身もこんな絶望感を抱いたという。


「法務省の警察に対する配慮、検察を気遣った(というか法務省自身がほとんど検察なのだから身内への配慮、すなわち自分たちの擁護というわけだが)、反省のない、消極的姿勢で会議を続けたら、真の改革など達成できるはずがない」


 その後の長い議論でも「被害者のプライバシー」「被疑者家族の生命への危害」など様々な理屈をこねて、可視化の範囲をなるべく狭めようとする警察、検察、法務関係の委員たち。これに対し周防は反発する。


「取調べの録音・録画は、捜査機関に今までのような取調べをさせないための制度だ。それを今までの取調べができないから反対です、というのだから現状認識からして誤っている」


「証拠の全面開示」にしても同様だった。多くの国民はもしウソの自白を強要されても裁判が正しい判断をすると信じきっている。しかし捜査段階で得られた調書、物証などの証拠は検察が握り、全ての証拠が裁判所に提出されるわけではない。検察にとって都合の悪い証拠は裁判所に提出されないのだ。例えば袴田事件や東電OL事件なども、被告の無罪を証明する数々の物証を検察は持っていながらそれを握り潰していた。


 つまり、冤罪を防ぐにはこの「証拠の全面開示」は必須なのだが、しかし、当局側の委員はもちろん、客観的な立場であるはずの刑法学者までが、この改革に一貫して抵抗したという。たとえば、京都大学教授で刑事訴訟法学者の酒巻匡は全面一括開示が制度として適当でない、と頑強に反対した。


「(酒巻の話は)前もって被告人がすべての証拠に目を通してしまえば、すべての証拠に矛盾しない嘘の弁解を容易することができるからダメだということらしい」


 しかし、これに対する周防の反論はこうだ。


「すべての証拠に矛盾しない弁解ができたら、被告人は犯人ではないということではないのか。酒巻さんの意見は、被告人は真犯人だから嘘をついて言い逃れをするものだという前提に立っているのではないかと思う」


 実は、酒巻は現行の証拠開示制度の設計に関わった人物でもあるという。そんな人物を委員に入れているのだから、何をかいわんやである。


「人質司法=身柄拘束」もしかりだ。例えば、痴漢で逮捕された場合、認めれば即釈放だが、否認すれば3〜4カ月も拘留されてしまう。その理由の多くは逃亡の恐れや証拠隠滅といったものだが、しかしそのほとんどは、検察のいいなりに裁判所が安易に判断しているもので、身柄拘束の必要がないものが多い。そして、この制度が冤罪の温床にもなっている。


 ところが、これについても、当局関係者は議論にすることも忌々しいとの態度で「厳格に適用されている」と主張。もう一人の専門家である中央大学教授の椎橋隆幸は、「そもそも人質司法といえる実態があるのか」といった呆れた疑問まで口にしたという。こうした会議に選ばれる専門家は御用学者が大半といわれていたが、ここまでひどいとは……。


「端的に言えば、警察・検察関係者が、今までの捜査のやり方を、自ら客観的に、批判的に見ようとはしていないからだ」


 周防はこう分析するが、こうした現実の前に、彼の主張はまったく通用しなかったという。


 そして3年。できうる限りの主張をした周防だが、議論は噛み合わず、ある程度の妥協の末に「とりまとめ案」を承認した。現在でも周防の主張した全面可視化は実施されてはいないが、今後の運用を見守ることが大事だと指摘することで、自分を納得させるしかなかったようだ。


 周防はこの3年間をこう総括している。


「もともとは検察の不祥事が原因で開かれた会議であったはずなのに、その不祥事に対する批判も反省も忘れている人たちを相手に、改革の必要性を訴える日々は、虚しさに満ちたものだった。言葉を重ねても、手応えはなく素通りしていったり、強く跳ね返されるばかりで、およそ意見を闘わせたという実感はない。それでも最後まで言葉を尽くした。そうするよりほかなかった」


 本書を読むだけでも周防の疲弊が伝わり、当局関係者や役人の態度や言葉にうんざりする。それを3年間続け、こうして記録に残した周防には敬意を称したい。全面可視化には至らなかったが、官庁の審議会、諮問会議などの実態がこうして世に出たことだけでも、大きな意味があるはずだ。


(伊勢崎馨)


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