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徽宗皇帝のブログ

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EU離脱がイギリスに有利である理由
「ダイヤモンドオンライン」記事から、記事後半を抜粋転載。
私が述べていた「英連邦」の有利さがEU脱退後に生きてくる、という考えが、専門家の言葉でより詳しく明確に説明されている。
英連邦が国の数にして54か国もあるとは知らなかった。その中にインド、マレーシア、シンガポールまで含まれるとは。単に英語圏の「仲のいい国」か「事実上の属国」くらいにしか思っていなかった。アメリカに対する日本よりは独立性はあるだろう、と思っていたのである。
さらに、金融面ですら有利になる、ということは私は考えてもいなかったことで、目から鱗である。まあ、その根拠が「タックスヘイブン」だと言われると索然とした気持ちになるが、現実は現実だから仕方がない。
ともあれ、読むに値する文章であり、この筆者は今後注目したい。


(以下引用)前半略。なお、これは6月21日時点の記事である。




● EU離脱で中長期的には むしろ英国に資金が集まるようになる

 金融については、前述の通り、短期的にはポンドが暴落するような事態が想定される。それはその通りだろう。しかし、中長期的にみれば、EUから離脱することによって、むしろロシアや中東、そして、EU圏内の富裕層からの資金は、これまで以上にシティに集中し、結局ポンド高になるのではないだろうか。

 なぜなら、シティは規制が少ない上に、英国は世界中にタックスヘイブンを持っているからだ。筆者が英国にいた頃から、中東・ロシア、そしてEU圏から規制が多いユーロを避けて、ロンドンに資金が集まっているという実感があった。

 実際、この連載ではウクライナ問題での西側諸国のロシアへの経済制裁に関連して、プーチン大統領や政府高官には、ロンドンに巨額の不正蓄財の巨額の蓄えがあるとの「噂」があることを取り上げた(第77回)。

 また、中国共産党幹部が、香港にペーパーカンパニーを設立し、巨額の貯蓄をしているという「噂」や、英領ヴァージン諸島に資金を移して、マネーロンダリングをしているという「噂」も取り上げた(第91回・P.7)。これは、「パナマ文書」が公開されたことで、単なる「噂」ではないことが明らかになったといえる。

 「パナマ文書」によって、タックスヘイブンに対する規制が厳しくなるというかもしれないが、文書が明らかにしたのは、世界中のタックスヘイブンのごく一部でしかない。世界中に点在する英国領のタックスヘイブンはいまだブラックボックスのままで、規制しようとしてもできるものではない。従来から、金融規制が緩い英国領には、世界から資金が集中する傾向があったといえるが、EUの金融規制から解放されることによって、増々資金が集まりやすくなる可能性があるのではないだろうか。

● 「英連邦」が凄まじく巨大な 経済圏として出現する

 そして、英国が持っている「英連邦」という巨大な「緩やかな国家連合体」の存在を軽視してはならないだろう。英連邦には54ヵ国が加盟している。国連に次ぐ規模を持つ国家連合だ。世界のほとんどの宗教、人種、政治的思想をカバーしている。


 英連邦は、大英帝国の残骸を残しているに過ぎないというのが日本での一般的なイメージだが、実態は全く違っている。特筆すべきは、今でも加盟国が増加していることだ。2009年にはルワンダが加盟した。先日、国連に加盟申請したパレスチナ自治区も加盟を希望している。旧英国植民地ではなかった南スーダンまでもが加盟に前向きである。

 英連邦の利点は、独裁政権を倒して民主化を果たした小国(主にアフリカ諸国)や、新しく誕生した国家でも加盟しやすいことだ。そして国連よりも、国際社会で発言する機会を得やすいので、加盟を希望する国が多いのだという。もちろん、英系グローバル企業とのネットワークによる、経済成長を期待する国もある(第20回・P.5)。

 そして、英連邦は小国だけではなく、資源大国であるカナダ、オーストラリア、南アフリカ、世界で2番目に人口が多く、ハイテク国家としても知られるインドや、マレーシア、シンガポールなど東南アジアの多くの国も含まれる。そして、今後、「世界の工場」となることが期待されるアフリカ諸国の多くも英連邦だ。EU離脱となれば、当然英国は、英連邦との関係を固めることになるだろう。英国は、単体では人口6000万人の小さな島でしかないかもしれないが、英連邦を1つの経済圏と考えれば、その規模は凄まじく巨大なものとなるのではないだろうか。

● 英国のEU離脱を嫌がるのは 単独で「生存圏」を確立できない国・地域

 このように考えると、英国のEU離脱は、おそらく中長期的にみれば、英国にとって不利益ではない。むしろ、英国に抜けられるEUの不利益となるのではないだろうか。換言すれば、ギリシャなど財政悪化に苦しみ、経済の弱い国を抱えるEUこそ、英国にとって「お荷物」な存在なのだと考えることもできる。

 英国はEU離脱で、確かに短期的に損失があるかもしれないが、「木を見て、森を見ない」話ではないだろうか。ジョンソン氏は大衆政治家であると同時に、国王ジョージ2世の末裔でもある。歴史的に積み上げてきた英国の底力を現実的に見抜いていないわけがないだろう。

 ジョンソン氏とトランプ氏は似ているのかもしれない。トランプ氏が主張する「米国の孤立主義」も、突き詰めると困るのは米国ではなく、米国に依存し切ってきた国々だと思われるからだ。

 国際関係論的にいえば、これまで世界は国家間の「相互依存」の深化に努めてきた。だが、これからは、それぞれの国が「生存圏」をどう確立するかを考える時代に変わっていくのかもしれない。英国のEU離脱問題は、米国の孤立主義とともに、ジョンソン氏やトランプ氏というポピュリストが騒いでいるだけと考えるべきではなく、大きな時代の転換点を象徴しているのだと考えるべきなのかもしれない。

上久保誠人





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