忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

メモ日記「生活」5
 #85  納戸の骸骨

 英語のことわざの中には面白いものがいくつかあるが、私の好きなのは、「どの家庭の納戸にも必ず骸骨が一つはある」という奴だ。納戸ではなく、押入れとでも訳すべきかもしれないが。要するに、どの家庭にも、家庭内暴力とか、娘の売春とか、幼児虐待とかいった、世間には言えない秘密が一つ二つはあるということだ。最近では、本物の骸骨を隠した家庭も日本では多いようだが。
 家庭というものは、社会の最小単位である。ということは、そこはすでに社会なのだ。そこで対人関係の軋轢があるのは当然で、犯罪のかなりの割合は、家族に対する犯罪なのである。しかも、その犯罪は外部の目には触れにくいだけに、いっそう不気味なものになる。フロイトは、「不気味なもの」という論文の中で、ドイツ語のハイムリッヒ(慣れ親しんだ)が、しばしばその対義語のアンハイムリッヒ(不気味な、なじめない)と同じ意味に用いられることに着目しているが、家庭というものは、その中に居る人間にとっては確かに慣れ親しんだ場所である。だが、その家庭の外部にいる人間からは、しばしば不気味な、なじめないものになるものだ。誰しも、新しい知人の家に初めて行った時の居心地の悪さは経験があるだろう。そこは、自分の知らないルールや習慣で物事が動いている異世界なのである。だから、そんな場所でうっかり納戸や物置の戸を開けてはならない。そこには骸骨があったりするのである。


拍手

PR

コメント

コメントを書く