忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

「ダイヤモンドだね~♪」
わりと著名な人のツィッターでリツィートされることの多い「早川タダノリ」氏の、ツィッターではなく個人サイト記事だが、なかなか興味深い。
昔から「ダイヤモンド」誌はこういう性質の雑誌だったわけだが、資本家や経営者向けの雑誌が、その対象読者層に迎合する記事を書いているうちに、さほど「強欲資本家」でもなかった人たちまでその思想に染まっていくのではないか。相互浸透洗脳効果。
洗脳は当人に意識されずに効果を発揮するから怖いのである。
「ダイヤモンド」のアナグラムで「イヤダモン」までは考えたが、「ド」が余ってしまったwww

(以下引用)記事末尾(赤字にした部分)が興味深い。記者氏の間抜けさ(まあ、偶然の結果そうなっただけだが)が際立つが、「須らく」をきちんと「~べき(べし)」とセットで使っている国語力の高さは現代の記者諸君よりは上のようだ。

空爆下の出勤向上

『ダイヤモンド』昭和20年3月11日号 ダイヤモンド社。当時の経済誌はかなり入手困難で、『エコノミスト』などは図書館でしかお 目にかかっていない。ご提供していただける方募集中!
空襲が烈しくなるにつれて、そのたびに労働者が職場に出てこなくなる――よく考えればアタリマエの話だが、当時の経済界では由々しき一大問題であった……そんなことは歴史の教科書には載っていなかったぞ。
この「出勤率の低下」、その傾向と対策のために、経済雑誌「ダイヤモンド」昭和20年3月11号は「空爆下の出勤向上」という特集を組んでいる。もちろん、「特集」といっても当時の「ダイヤモンド」は、全16頁・B2判のザラ紙を四つ折りにしただけのチラシとも新聞ともつかぬシロモノ。活字だけの3本の短い記事だが、人びとの生活感覚の一旦が垣間見える。
記事冒頭は相も変わらぬ精神主義ぶりで、「今や生産即戦場――職場は決戦場となった。空に敵機の爆音を聞き乍ら勤労者はその持場の仕事と取組ねばならぬ」とある。かなりイヤな職場である。そんなところからは一刻も早く逃げ出したいのが人情だろう。

「朝出勤時刻に空襲警報がかかると工員事務員の出足は一斉に鈍って来る。途中で交通の停るのを懸念するか、或は自己の工場事業場及び勤務先が空爆に曝されることにより生命の危険を予想して、『欠勤』と、観念するからである」
――これを筆者は「勤労意欲の欠如」と特徴づけるのであるが、「アブナイからやめとこう」ってのは、人間だったらアタリマエだろという道理も通らないらしい。「空襲が午後に来り、四時頃に解除になると、多くの人々は防空待避の姿勢を勤務態勢にかへさず、その足で退勤帰宅を急ぐ」。だーかーらー、それの何が悪いの?

「このため生産能率を低下せしめるのみならず、交通混雑に拍車をかけ、自らは貴重な時を空費するのである。人々はかかる事を反省し、須く(すべからく)勤労意欲で以て朝の交通難を突破し夕の交通混雑を緩和するよう心掛くべきである」「焦燥にかられて電車を待つより、腹を決めて社屋にて仕事しつつ、すいた電車を待つ方が有意義ではないか。これからは日脚も長くなるので殊にこの感を深くするのである」
――あれれ、結論は「ラッシュを避けてすいた電車でかえりましょう」って、なんだか問題がすりかわっているんじゃないか? しかも「これから日脚も長くなるので……」と、事態の切迫性のわりにはいささかノンビリ気味である。そもそもの問題は交通難・交通混雑の解消じゃなくて、「空襲下でも働け」だったのに、結局これでは「空襲下における時差通勤のすすめ」ではないか。この“ねじれ”に、こんなテーマで書けるか!とヤケクソになった記者君の姿が透けて見えるようだ。
この「ダイヤモンド」誌が発行されたのは3月11日。奇しくもその前日3月10日に東京は大空襲を受け、一面の焼け野原と化した。もはや出勤する人も、出勤すべき会社すらもなくなってしまったのだ。「空爆下の出勤向上」の文字は、焦土にむなしく吸い込まれたに違いない。嗚呼、合掌。

拍手

PR

コメント

コメントを書く