(以下引用)
ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ツイッターが新たに設けた規制について解説する。
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ツイッター社は2月21日、複数のアカウントからの同一の内容のメッセージの投稿や、リツイート、「いいね」、フォローを禁止する方針を明らかにした。
ツイッターの開発ポリシーを担当するヨエル・ロス氏によれば、この措置は「情報品質」を改善し、「ツイッター上の対話を狙った悪意ある活動に先手を打つ」ことを目的としているという。いささか回りくどい説明だが、要はツイッターが「ボット」と呼ばれる自動プログラムの排除に乗り出したことを意味する。
ツイッター上には自動で投稿を行うものや、ボットアカウント宛てのリプライ、第三者の発言に含まれる特定のキーワードに反応するものなど、さまざまなボットが開発され、運用されている。
2016年の米大統領選挙の期間中には、ロシアによる米世論の分断工作の一環として、5万を超えるボットが使用されていたことも各種報道や議会の調査で明らかにされた。ボットを用いて、過激なメッセージを拡散。フェイクアカウントを影響力のあるインフルエンサーに仕立て上げ、トレンドを操作する世論工作が行われていたのだ。こうした事実が明らかになるにつれ、強い批判にさらされていたツイッター社が、ようやく組織的なボット運用の取り締まりに着手したということだ。
それと時を同じくして、米国の一部ユーザーから、ツイッターアカウントが「ロック(一時的制限)」されたという報告や、フォロワーが突如として数千人減ったという報告が相次いだ。そのほとんどは、白人至上主義者のリチャード・スペンサーをはじめとする保守層や、オルタナ右翼と言われる人びとであった。
彼らは「#TwitterLockOut(ツイッターから締め出された)」というハッシュタグをつけて、ツイッター社が保守的政治志向を差別していると強く非難した。
ツイッター社は「政治的予断なくルールを施行している」と強調。「自動操作や複数アカウントの所有に関する規約違反、不正行為」が疑われるアカウントには「電話番号認証を通じて実在の人間が管理しているかを確認しているため、ロックされた人が出た可能性がある」と説明した。実際、認証が行われたアカウントはロックが解除され、減少したフォロワー数も次第に回復しているという。
しかし、右派のアカウントを中心にロックされたのはなぜかという疑問が残る。それについてオックスフォード大学で「コンピューターを利用したプロパガンダ工作」を研究するサマンサ・ブラッドショウ氏は、右派と左派が好む情報源が異なるためではないか、とBBCに語っている。
米国のデータを分析した調査では、右派がより多くのジャンクニュースを消費する傾向にあり、彼らが自分たちの価値観に合うニュースばかり読んでいたことから「情報消費の仕方の違いが反映されただけだろう」と推測している。
今回の対応でツイッター上の「世論」はどのように変わるのか、注意深く見守っていかなければならない。
※週刊朝日 2018年3月16日号
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