(追記)今、「谷間の百合」を見ると、百合さん(と言っておく)も、この韓国の騒動の背後に米国がいるのでは、と推理していて驚いた。その記事を読むのは二度目だったが、一度目は気にも留めなかったのである。たぶん、「世に倦む日々」と違って、推理の根拠があまり明確に書かれていなかったので、見過ごしたというか、失礼ながら山勘にすぎないと軽視したのだろう。おそらく、私はトランプが米大統領に決まったことで、「現在はまだバイデン大統領なのだ」という事実が頭から抜け落ちていたようだ。トランプなら悪辣なことはしないというより、トランプは基本的に好戦的ではない、と思うからである。さらに言えば、DSの指令は大統領の頭越しにDSの直接の手下に伝えられるということもあるだろう。何しろ、米国は大統領が簡単に暗殺される国でもあるのだから。しかも、それはおそらくCIAやFBIが協力している、いや実働部隊である。
(以下引用)長文なので画像は省略。
どれほど隠密に準備しても、クーデターは一人ではできず、協力者たる軍の最高幹部と実働部隊を必要とするから、狭いソウルで自ずと気配が察知される次第となったに違いない。このクーデターで注目を要するのは、関わった軍人の面々である。現在のところ、国防部長官の金容賢が計画を進言し、金容賢の陸士後輩である陸軍参謀総長の朴安洙を戒厳司令官に据え、さらに、朴安洙の部下である陸軍特殊戦司令官と首都防衛司令官の二人を作戦部隊の指揮官に配している。
制服トップである合同参謀本部議長の金承謙は、海士閥のため、この中核集団の外にいたという説明だが、軍は機械的上下構造のピラミッド組織であり、陸軍参謀総長が国防長官の指示で戒厳軍司令官に就任した事実を、制服トップの合同参謀本部議長が知らないはずがない。側聞していただろう。韓国軍が深く関わって動いている。また、実際にそうでなければ、国会を含めた一切の政治活動の禁止とか、言論と出版の戒厳司令部による統制とかの措置の実効性が担保されない。もし、特殊部隊による国会制圧が成功し、野党議員の集会と決議を阻止していれば、4日中にもソウル市街に陸軍の戦車部隊が展開して、新聞社や放送局やネットプロバイダを戒厳軍が統制していただろう。野党幹部は逮捕監禁され、まさに民主化以前の40年前の韓国に戻った世界が出現していたと思われる。危機一髪だったわけだが、韓国軍は酔狂のような尹錫悦の暴挙に同調していた。
この点が重要である。なぜ、こんな杜撰な、どっちに転んでも韓国史の汚点となる、間違えば大量の市民を虐殺して全土を流血の海とした、無謀なクーデター計画に韓国軍の最高幹部は同意し同調したのか。尹錫悦に打診されても、理性のある、韓国の国家国民の安全に責任を持つ軍人なら、「大統領、それはできません」と断って諫めるはずだし、尹錫悦に協力などしなかっただろう。軍が協力しなければ、クーデター計画は実行に移せない。然るに、今回の謎は、なぜ尹錫悦が戒厳クーデターに出たのかではなくて、なぜ軍がクーデターに協力したのかである。そこに焦点を当てれば問題の解は得やすい。答えは、あくまで仮説だが、尹錫悦が国防相と陸軍参謀総長にこう言ったからである。「アメリカ(米軍CIA)が了承し支持している」。こう言って"根拠”を示せば、国防相も陸軍参謀総長も「それなら」と納得し、最高司令官たる大統領の命令に応じる態度になっただろう。
これが私の直観と推理だが、逆に言えば、この想定以外に韓国軍トップがクーデターに同意する理由と条件がない。12/14、米国務省のキャンベルは、「判断を大きく誤った」と言って尹錫悦を批判している。だが、これは表面上の形式辞令であり、アメリカは戒厳令には無関係とするアリバイ工作である。敢えて意地悪く言えば、「アメリカ政府(国務省)には打診はなかったが、CIAは裏で相談を受けた」という種明かしだろうか。再度、尹錫悦の無謀と暴走の検討に戻るが、尹錫悦の精神状態が異常で錯乱していたということはない。尹錫悦には自信があったのだ。だから決行に及んだのだ。その根拠は米軍CIAのエンドースであり、戒厳令と軍事独裁をホワイトハウスが追認するという思惑に他ならない。戒厳令が直後に国会で覆される進行を避け、2日3日、一週間と戒厳令施行の既成事実を作れば、アメリカは必ずこれを黙認するという目算があり、言質を取っていたのだろう。
尹錫悦は、支持率20%を切った事実上レイムダックの大統領である。誰もが酷評するとおり、この男には政治の能力がない。政治の知識と経験がなく、政治家としてのセンスが欠如している。韓国の世論は尹錫悦を見限っている。その尹錫悦が大統領の地位を続けられるのは、アメリカから評判がよいからであり、日本からも好感厚遇されているという外交上の立場を標榜できているからである。韓国にとって「アメリカからの期待と評価」は何より重要で決定的な、政治家の武器となる要素らしい(日本もそうだが)。尹錫悦が自らのアドバンテージとして確信し宣伝しているのが、「アメリカとの関係」であり、「韓米日の堅固な信頼関係」であり、それを実現している立役者という自己認識だ。なので、軍にせよ何にせよ、韓国の関係者は尹錫悦の向こうにアメリカの意向を見るし、尹錫悦を米韓同盟のシンボルとして見る。
その尹錫悦に「アメリカも戒厳令を了承している」と示唆されれば、国防相も陸軍参謀総長も首を縦に振って謀略に追従するだろう。以上が大統領と韓国軍の謀計の内幕であるとして、それでは、本当にアメリカ(CIA)は戒厳令を事前に知っていたのだろうか。そう断言できるのか。この設問についても、政治の常識の角度からアプローチすれば答えは簡単だ。もし、尹錫悦が事前にアメリカに何も告知せず戒厳令発動に及んだ場合、それが失敗しても成功しても、アメリカを激怒させ失望させていたことは間違いなく、その時点でアメリカは尹錫悦を縁切り処分にしただろう。尹錫悦の政治生命は終わっていた。クーデターが成功しても失敗しても、尹錫悦が頼みにするところは唯一アメリカであり、アメリカが引き立て続けてくれればそれでいい。アメリカが尹錫悦の政治基盤なのだ。それが国内で四面楚歌の尹錫悦の真実であり、そこから考えれば、戒厳令を事前に連絡していないという解釈はあり得ない。
それでは、もしアメリカ(CIA)が尹錫悦から「戒厳令やります」と相談を受けていたとして、なぜそこで「やめとけ」と中止を勧告しなかったのだろう。事前にアメリカに連絡が入っていたと仮定して、アメリカが承諾せず尹錫悦に中止を命じていれば、尹錫悦は諦めて撤回していただろう。仮定に仮定が重複して、実に「陰謀論」的な試論を築いて恐縮だけれど、アメリカが中止させず決行させたのには理由があると私は深読みする。尹錫悦が戒厳令を打てば、それが成功しても失敗しても韓国の政情は大混乱となる。親米右派と左派が衝突し、安定した政治体制に容易に着地することはない。アメリカは、どこかで韓国軍と一緒に介入することを考え、左派の一掃排除に出ようと戦略を立てているのだろう。戒厳令クーデターが成功すれば、すぐにその局面となり出番となる。失敗すれば、韓国を左右激突の騒乱状態にさせ、どこかで軍事介入を狙い、結局、クーデターが成功した場合と同じ地平にする。
大胆で飛躍した想像であり、「陰謀論」の典型で極致の論だと嘲笑されそうだが、構わず言えば、アメリカがこう意図して韓国を動かす理由は、2年後に台湾有事を控えているからだ。台湾有事が始まれば、韓国軍には中国軍と交戦してもらわなくてはいけない。韓国も戦場となる。そのとき、足を引っ張るであろう韓国の左派は邪魔なのだ。東アジアの中でアメリカ(CIA)にとって邪魔なのは、韓国の左派と台湾の国民党である。日本には障害となる政治勢力はない。台湾有事に向けたCIAの政治プログラムの中で、韓国左派と台湾国民党を潰すことは、きわめて重要な目標課題となる。どのみち対中戦争を開戦すれば、韓国も日本も戦場となり、どちらも軍事独裁国家 ー 日本は大政翼賛会型だが ー となる。日本国憲法の人権規定は効力停止となる。尹錫悦が読み上げた戒厳令布告は、米CIAの正直な本音だと考えてよい。布告の「北朝鮮」を「中国」に、「韓国」を「東アジア」に置き換えて読めば、意味は容易に腑に落ちるだろう。
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