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徽宗皇帝のブログ

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戦略と戦術の覚え書き 5 尉繚子4
補遺1 賞罰の適用。賞は下っ端に。罰は大物に与えよ。処刑される人間は大物であるほど、表彰される人間は小物であるほど反響は大きい。このことで、賞罰が厳正に適用されていることを知らしめることになる。

補遺2 天の時は地の利にしかず、地の利は人の和にしかずとは真実である。将帥たるもの、天文気象に左右されず、地勢の不利にも動揺せず、他人の意見に盲従せず、縦横に独歩すべきである。それによって勝敗の帰趨を握ることができるのである。有能な者を抜擢して用い、法令を明確詳細に規定して実行し、人民を労わり用いれば、結果はおのずと吉となるのである。



総括

以上、マキァベリと尉繚子の中から、特に興味深い部分を書いてみた。馬と大砲についての「戦争の技術」の中の記述は、目からうろこが落ちるようである。我々は、騎馬は歩兵より有利で、大砲の破壊力は脅威であると盲目的に信じているが、そうではないことが、論理的に示されている。ちなみに、これらの言葉は、マキァベリの同時代のある軍人の言葉をマキァベリが記録したものである。単なる兵法家ではなく、現実の戦場の体験者ならではの発言と言えよう。
 尉繚子は孫子や呉子ほど有名ではないが、古代の戦争の要諦を的確かつ総合的にまとめてある点では、孫子呉子以上に優れていると私は思う。孫子は兵法の始祖的存在で、いわば歴史的価値があるにすぎず、本質的価値という点では尉繚子はもちろん、呉子にも劣ると私は見ている。しかし、もちろん、戦争の一般論としての価値の高さは言うまでも無い。孫子が乗り越えられたことは、前の時代の思索を元に、後の思索が加算された当然の結果ではあるが、孫子の中には魅力的なフレーズも沢山あり、人生の戦略にも通じる古典としての価値は今でもある。そこが、他の戦術書との違いだろう。もっとも、尉繚子にも日常の組織論として読んでも意味深い言葉は多々あるのだが。

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