志村建世のブログから転載。
途中にあるポイントだけを抜き出すと、次の部分だ。
「それが1000円カットの時代になり、私自身はそれなりに満足もしていたのですが、日本経済の現状を考えるようになって思い当りました。早くて安いと喜んでも、それで3倍の回数床屋へ行くことはありません。理髪に関する支出は3分の1に減ったのです。それは理髪業界に落ちる金が、それだけ減ったということです。輸出産業でもない理髪業のパイの大きさは一定なのですから。(中略)こういうことが国内の多くの業界で起こったに違いありません。理容業界だけでなく、どこでも経済規模の縮小が起こったのです。サービスや物の価格が下がったのを喜ぶ一方で、余裕のある収入で暮らせる働き手を減らしつづけたのですから、世の中全体が貧しく不景気になるのは避けられない成り行きでした。この連鎖を断ち切るのが政治の役目です。」
1000円でできる理髪を、わざわざ3000円出してやる人はほとんどいない。政治家と高級官僚と大企業幹部くらいのものだろう。つまり、理髪業界における経済規模は3分の1に縮小したのである。これがデフレの怖いところだ。
もちろん、派遣社員やパート労働者の増加によって労働者全体の給与水準が低下しているのだから、デフレによって家計は何とか命脈を保ってもいる。しかし、それは貧しい商品を購入することで保たれる、貧乏生活の維持にすぎない。洋服は「青山」あたりの1着数千円の背広、靴も1000円そこそこの安売り靴、食べ物は、外食という贅沢などしないで朝の残りものを詰めた手弁当なのだから、金を使う人はほとんどいない。それによってまた多くの店や企業は首が回らなくなるわけである。
要するに、民間に金が回らないのが一番の問題なのである。日銀がインフレターゲットなどと言いながら、わずか1%のインフレを目標にし、ほとんど通貨量を増やさないというのでは、今のこの貧困状態は脱せないだろう。
3%程度でもインフレになれば、金を金のままで持っていたら毎年3%程度の資産低下になるから、金のある人間は投資などして金を使うようになるし、もっと金を物に換えるようになる。つまり土地や建物や高級品がどんどん買われるようになり、日本全体が不況から脱することができる。これはバブルではなく、当然あるべき健全な経済の状態なのである。
問題解決方法は単純な話であり、現在の貨幣流通量をどかんと増やし、それを貧しい人間に優先的に与えればいいのである。子供手当のようなケチな話ではなく、年収300万円以下の家庭には、政府からの特別ボーナスとして100万円くらい上げればいい。それも、これから2年ほどそうするのだ。ついこの前も、親子3人が餓死したという事件があったが、生活保護を受けることはプライドが許さない、という人も、臨時収入としてなら受け取るだろう。そうすれば、それはすぐに物品購入に充てられ、景気は上昇していくことになる。つまり、貧しい人間を救うことはただの福祉政策ではなく、日本経済全体の救済策でもあるのだ。
ついでに言うと、大手輸出企業が儲けた金は内部留保と会社上層部や株主(外人株主が多い)の間で分配されるだけで、日本経済にはほとんど寄与していないのである。
だが、経済政策と言うと、常に輸出企業のことだけが話題になるのは、当然ながら、彼らの背後にいる存在がマスコミを支配しているからだ。
(以下引用)
わがブログの旧友「うたのすけ」さんによると、行きつけだった床屋さんがこのところ閉店つづきで、もう仕事は無理になったのかもしれない。そこでいま流行のカット専門1000円のチェーン店に行ってみようと腹を決めたとのことです。これとほぼ同じ状況を、私も数年前に経験しました。私が行きつけだったのは、近所で町会長もしていた床屋さんでした。すでに故人となり、跡地は人手に渡って警察病院前の薬局になっています。
以前は床屋へ行けば3000円かかるのが常識でした。私も調髪してもらいながら、戦前から中野にいる店主の思い出話などを聞き、近所の移り変わりや人脈の知識などを仕入れたものでした。うたのすけさんも、帰りには自宅まで車で送ってもらうサービスを受けることが多かったとのことです。私の子供時代を思い出しても、床屋さんは小さなコミュニティーセンターのような場所でした。
それが1000円カットの時代になり、私自身はそれなりに満足もしていたのですが、日本経済の現状を考えるようになって思い当りました。早くて安いと喜んでも、それで3倍の回数床屋へ行くことはありません。理髪に関する支出は3分の1に減ったのです。それは理髪業界に落ちる金が、それだけ減ったということです。輸出産業でもない理髪業のパイの大きさは一定なのですから。チェーン店には「新分野の開拓により業界の発展に寄与し」云々の経産大臣の表彰状が麗々しく掲げてありましたが、あれは逆ではなかったのか。
規制緩和で価格破壊が起こり、ある業界に失業と衰退があっても、成長期なら他の成長産業に人も資本も移動するから好都合です。しかし成熟社会ではそうは行きません。床屋の跡継ぎはいなくなり、理容学校の卒業生の就職先は、高収入の望めないチェーン店のみとなります。勝ち組は、大規模チェーンの経営者と、水を使わない規格品の理髪室を作るメーカーだけでしょう。
こういうことが国内の多くの業界で起こったに違いありません。理容業界だけでなく、どこでも経済規模の縮小が起こったのです。サービスや物の価格が下がったのを喜ぶ一方で、余裕のある収入で暮らせる働き手を減らしつづけたのですから、世の中全体が貧しく不景気になるのは避けられない成り行きでした。この連鎖を断ち切るのが政治の役目です。
幸いにして、スパイラルは、どこから始めても逆方向へ動かすことができます。たとえば雇用を増やせば労働所得の合計が増えます。労働所得の合計を先に増やしても消費が増えて雇用が増えます。残る問題は、どこにどれだけ予算を投入するか、その財源をどう調達するかということなのです。
途中にあるポイントだけを抜き出すと、次の部分だ。
「それが1000円カットの時代になり、私自身はそれなりに満足もしていたのですが、日本経済の現状を考えるようになって思い当りました。早くて安いと喜んでも、それで3倍の回数床屋へ行くことはありません。理髪に関する支出は3分の1に減ったのです。それは理髪業界に落ちる金が、それだけ減ったということです。輸出産業でもない理髪業のパイの大きさは一定なのですから。(中略)こういうことが国内の多くの業界で起こったに違いありません。理容業界だけでなく、どこでも経済規模の縮小が起こったのです。サービスや物の価格が下がったのを喜ぶ一方で、余裕のある収入で暮らせる働き手を減らしつづけたのですから、世の中全体が貧しく不景気になるのは避けられない成り行きでした。この連鎖を断ち切るのが政治の役目です。」
1000円でできる理髪を、わざわざ3000円出してやる人はほとんどいない。政治家と高級官僚と大企業幹部くらいのものだろう。つまり、理髪業界における経済規模は3分の1に縮小したのである。これがデフレの怖いところだ。
もちろん、派遣社員やパート労働者の増加によって労働者全体の給与水準が低下しているのだから、デフレによって家計は何とか命脈を保ってもいる。しかし、それは貧しい商品を購入することで保たれる、貧乏生活の維持にすぎない。洋服は「青山」あたりの1着数千円の背広、靴も1000円そこそこの安売り靴、食べ物は、外食という贅沢などしないで朝の残りものを詰めた手弁当なのだから、金を使う人はほとんどいない。それによってまた多くの店や企業は首が回らなくなるわけである。
要するに、民間に金が回らないのが一番の問題なのである。日銀がインフレターゲットなどと言いながら、わずか1%のインフレを目標にし、ほとんど通貨量を増やさないというのでは、今のこの貧困状態は脱せないだろう。
3%程度でもインフレになれば、金を金のままで持っていたら毎年3%程度の資産低下になるから、金のある人間は投資などして金を使うようになるし、もっと金を物に換えるようになる。つまり土地や建物や高級品がどんどん買われるようになり、日本全体が不況から脱することができる。これはバブルではなく、当然あるべき健全な経済の状態なのである。
問題解決方法は単純な話であり、現在の貨幣流通量をどかんと増やし、それを貧しい人間に優先的に与えればいいのである。子供手当のようなケチな話ではなく、年収300万円以下の家庭には、政府からの特別ボーナスとして100万円くらい上げればいい。それも、これから2年ほどそうするのだ。ついこの前も、親子3人が餓死したという事件があったが、生活保護を受けることはプライドが許さない、という人も、臨時収入としてなら受け取るだろう。そうすれば、それはすぐに物品購入に充てられ、景気は上昇していくことになる。つまり、貧しい人間を救うことはただの福祉政策ではなく、日本経済全体の救済策でもあるのだ。
ついでに言うと、大手輸出企業が儲けた金は内部留保と会社上層部や株主(外人株主が多い)の間で分配されるだけで、日本経済にはほとんど寄与していないのである。
だが、経済政策と言うと、常に輸出企業のことだけが話題になるのは、当然ながら、彼らの背後にいる存在がマスコミを支配しているからだ。
(以下引用)
わがブログの旧友「うたのすけ」さんによると、行きつけだった床屋さんがこのところ閉店つづきで、もう仕事は無理になったのかもしれない。そこでいま流行のカット専門1000円のチェーン店に行ってみようと腹を決めたとのことです。これとほぼ同じ状況を、私も数年前に経験しました。私が行きつけだったのは、近所で町会長もしていた床屋さんでした。すでに故人となり、跡地は人手に渡って警察病院前の薬局になっています。
以前は床屋へ行けば3000円かかるのが常識でした。私も調髪してもらいながら、戦前から中野にいる店主の思い出話などを聞き、近所の移り変わりや人脈の知識などを仕入れたものでした。うたのすけさんも、帰りには自宅まで車で送ってもらうサービスを受けることが多かったとのことです。私の子供時代を思い出しても、床屋さんは小さなコミュニティーセンターのような場所でした。
それが1000円カットの時代になり、私自身はそれなりに満足もしていたのですが、日本経済の現状を考えるようになって思い当りました。早くて安いと喜んでも、それで3倍の回数床屋へ行くことはありません。理髪に関する支出は3分の1に減ったのです。それは理髪業界に落ちる金が、それだけ減ったということです。輸出産業でもない理髪業のパイの大きさは一定なのですから。チェーン店には「新分野の開拓により業界の発展に寄与し」云々の経産大臣の表彰状が麗々しく掲げてありましたが、あれは逆ではなかったのか。
規制緩和で価格破壊が起こり、ある業界に失業と衰退があっても、成長期なら他の成長産業に人も資本も移動するから好都合です。しかし成熟社会ではそうは行きません。床屋の跡継ぎはいなくなり、理容学校の卒業生の就職先は、高収入の望めないチェーン店のみとなります。勝ち組は、大規模チェーンの経営者と、水を使わない規格品の理髪室を作るメーカーだけでしょう。
こういうことが国内の多くの業界で起こったに違いありません。理容業界だけでなく、どこでも経済規模の縮小が起こったのです。サービスや物の価格が下がったのを喜ぶ一方で、余裕のある収入で暮らせる働き手を減らしつづけたのですから、世の中全体が貧しく不景気になるのは避けられない成り行きでした。この連鎖を断ち切るのが政治の役目です。
幸いにして、スパイラルは、どこから始めても逆方向へ動かすことができます。たとえば雇用を増やせば労働所得の合計が増えます。労働所得の合計を先に増やしても消費が増えて雇用が増えます。残る問題は、どこにどれだけ予算を投入するか、その財源をどう調達するかということなのです。
PR
コメント
1. 無題
日銀が量的緩和をして起きるインフレはコストプッシュ型コモディテイーインフレ。
つまり床屋さんの料金は上がらないが、ガソリン、食料、物価の上がる、イヤーなインフレ。
需要超過型のインフレにしなければ成らないのだけど、それは量的緩和では出来ない。
量的緩和をすれば金融業界が儲かるだけだよ。