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徽宗皇帝のブログ

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先進国の「構造的」問題
「阿修羅」に引用された野口悠紀夫の文章を転載。
日銀が金融緩和に踏み切ったようだから、ある意味タイムリーな話題だろう。(もっとも日銀の出す金は市中銀行に廻るだけで、今の銀行は国債買い込みしかしないから、庶民とはほとんど無関係である。これは米国のQE3も同じ)
野口悠紀夫は「超」何とか法で悪乗りして幾つも本を出した軽薄な学者というイメージしか無く、その本も私はあまり読んでいないが、読んだ限りでは常識人であり、その発言もまともなことが多いようだ。ただ、常識人だから、どこかで聞いたような言葉ばかりである。面白くはないが、健全だ。
下記記事も当たり前の事しか言っていないが、しかし、この程度の言葉でも大学の先生の発言としてはマシな方である。慶応や東大あたりの経済学の教授になると、完全な御用学者しかいない、と言うか、存在さえ世間には知られていない。(野口は早稲田の先生のようだ)経済学は面白い学問だが、経済学の教授で、世間の役に立つ発言をする人間は稀である。特に、金融工学とやらで高等数学を使って金融商品の内容を意味不明のものにし、金融詐欺を世間に広めたアメリカの経済学者は有害ですらある。
さて、下記記事の内容だが、FRBによるQE3はアメリカの経済状態を改善しない、という趣旨の文章の一部だ。なぜなら、米国の経済問題の本質は「構造的な問題」、すなわち、企業利益が伸びても賃金所得は向上しないという問題だからだ、と主張している。
まったくその通りである、だから最初に「当たり前の事しか言っていない」と書いたのだ。
そして、この構造はグローバル化した世界の先進国では恒常的に現れる現象なのである。

「貿易を通じて、新興国の低賃金の影響が先進国に及び、その結果、先進国の賃金が伸び悩む(あるいは下落する)」というのが、「要素価格均等化定理」が予測するところである。このような変化は、90年代以降の世界において、徐々に、しかし確実に生じつつある。こうした構造的変化に対して、金融政策で対処するのは誤りである。

というのがその構造だ。「要素価格」の中に労賃があるわけだ。そして、後進国の労賃は上がり、先進国の労賃は下がる。先進国の労働者の低所得化、後進国の労働者の高所得化が進み、やがて平衡状態に近づいていく。「均等化」するわけだ。これを後押しするのが自由貿易である。自由貿易ならば、企業はどこで企業活動をしても同じだから、労賃の安いところ安いところと移動する。その結果、先進国の産業空洞化が起こり、労働者の雇用は悪化し、低賃金化がどんどん進んでいく。これがグローバリズムの結果である。
ついでに言えば、「要素均等化」は文化面でも起こる。どこの文化も似たものになっていくのである。まあ、これは悪いことばかりではないが。
さて、こうした「労働者の雇用悪化、低賃金化」は政治が干渉しない限り、どこまでも進んでいく。政治による「所得再分配」がほとんど行われない新自由主義的政治の結果は「富める1%対極貧化した99%」になるしかないのである。それが先進国の現実だ。ヨーロッパの現状、アメリカの現状、日本の現状、すべてそれなのである。にも関わらず、新自由主義の政党である維新の会や自民党をマスコミがバックアップして盛り立てている、というのが今の日本である。また、極貧化に追い込まれている労働者自身がこうした政党を支持するという愚劣そのものの状況があるのが今の日本である。前にも書いたが、共産党が議会の2割くらいを占めることでしか、この事態の改善は無いのではないだろうか。


(以下引用)

 このように、経済危機後のアメリカでは、賃金所得の伸びが、企業所得の伸びに対して大幅に立ち遅れているのである。
 雇用で見ると、事態はさらに深刻だ。アメリカの雇用は経済危機で約880万人減少したが、その後410万人しか回復していない。失業率も8%台に高止まりしたままだ。
 つまり、アメリカが抱えているのは、「企業利益が伸びて、賃金所得が伸び悩む(あるいは低下する)」という、分配の問題である。これは構造的な問題である。
 これが構造的な問題であることは、アップルの場合に象徴的に現われている。
 アップルの製品は、台湾のEMS(Electronics Manufacturing Service 電子機器の受託生産)企業ホンハイの子会社フォックスコンなど、世界中の企業で水平分業によって生産されている。新興国の安い労働力を使って安い原価で製造し、高く売って利益を得るのだ。しかし、こうした活動のほとんどがアメリカ国外で行なわれるため、アメリカ国内の雇用は増えない。
 アメリカ国内で伸びるのは、金融に代表されるように、高度の専門家のサービスだ。だから、少数の人が高い所得を得るようになる。そして、所得格差が発生する。
政策手段割り当ての誤り
 以上の現象をマクロ経済的に見れば、つぎのようなことだ。
 1990年代以降の世界において、新興国の工業化により、先進国の製造業が縮小し、それによって賃金の伸びも低くなった。アメリカもその問題に直面しているわけだ。
「貿易を通じて、新興国の低賃金の影響が先進国に及び、その結果、先進国の賃金が伸び悩む(あるいは下落する)」というのが、「要素価格均等化定理」が予測するところである。このような変化は、90年代以降の世界において、徐々に、しかし確実に生じつつある。こうした構造的変化に対して、金融政策で対処するのは誤りである。
 これに対処する方法は、社会保障制度を拡充することだ。アメリカの場合は、医療保険が不十分なので、この整備は不可欠の課題だろう。また、失業保険も重要だ。さらに、税を通じる再分配の促進も必要だ。現在のアメリカで必要とされる政策とは、このようなものなのである。
 金融緩和でこうした構造的分配問題に対処しようとするのは、経済政策手段の「割り当て」の誤りだ。したがって、問題を解決することができない。
 他方で、金融緩和の影響は、国際的資金移動を通じて全世界に伝播する。影響は、いままでのところ、為替レートに現われている。さらには、日本に資金が流れ込むことによる国債バブルだ。しかし、これですべてではない。将来どのような問題が起こるか、予測しがたい面もある。
 日本が抱えている問題は、アメリカの問題とまったく同じではない。とくに、企業利益が成長していない点で、かなり異なる。しかし、賃金が伸びない点では同じだ。そして、これが構造的な問題である点でも同じだ。さらに、構造的問題を金融緩和で解決しようとしている点でも、同じ誤りを犯している。

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