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徽宗皇帝のブログ

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北朝鮮が私のものならば
田中宇の北朝鮮レポートの一部である。
私は自分で何か現実的作業をやるのは大嫌いだが、分析したり考察したり計画したりするのだけは大好きなので、(つまり、国王か二代目社長が天職だろうという人間なので)北朝鮮という国家がもし自分に与えられたなら、それをどう発展させていくか、というのは面白いテーマである。
金一家三代目の後、自分が国家指導者にでもなったつもりで北朝鮮国家改造案を考えるのも思考実験としては面白いのではないか。
私なら、煙草を北朝鮮の一大産業にする。煙草が一箱100円程度なら、世界中で飛ぶように売れるのではないか。美味い煙草を作るなど、たいした技術もいらないだろうし、原価など一箱10円程度でできるだろう。利幅はすごいものだ。煙草が健康に害があろうが、それを吸いたい奴は無数にいるのだから、いい商売になる。資本主義国が煙草追放キャンペーンを張っているのが煙草製造国家にとっては追い風になるわけである。
体に害になると言えば、何でも度を越せば害になるというだけの話だ。自国民の健康が気になるなら、自国内では煙草禁止にしてもいい。で、煙草は輸出のみにすれば、資本主義国家の国民に健康被害を与えつつ、金も手に入る。まあ、ミサイルを飛ばすとか、他国の偽札を作るとかいう話よりは健全かつ合法的な闘争手段である。
酒造りもいい。他国の酒造りのノウハウを盗んで、北朝鮮で作ればいい。そのほか、大麻など、習慣性のあるものはだいたい金になる。何もCIA(米政府)にだけ大麻栽培を独占させることはあるまい。それに大麻は麻薬として以外に用途の多いすぐれた植物だという。資本主義国で大麻の栽培が禁止されているなら、北朝鮮がその状況を利用すればいい。つまり、北朝鮮は、やろうと思えば何でもできるのである。そして、そこから思いがけない発展が始まるかもしれない。
世界的に、第一次産業や第二次産業のノウハウは拡散しているのだから、今の世ではわずかな初期投資で、先進国には無い低廉な価格での商品が作れるはずである。つまり、資本主義国の法的規制やら洗脳による自己規制やらと無縁なところで、資本主義国で廃れた宝(知識や商品)を再発掘するということである。北朝鮮のように「今は売り物が何も無い」というのは、実は無限の発展の可能性があるということだ。
まあ、国家というものは大企業と同じことで、上にいる人間は実は自分の保身しか考えていないから、どんどん傾いていくのである。上の人間が少しでも下の人間を思いやれば、どこの国だろうが不幸な国民などいなくなるのだ。


(以下引用)

丘陵地では、斜面に沿って丘の上まで畑が作られているのを見た。傾斜地を削って平らにせず、そのまま畑を作ると、大雨の時に地表の土壌が流失し、耕作できなくなる。北朝鮮では洪水の後に飢饉が起きる。土地がやせてしまうトウモロコシの連作も、20年前の訪朝時に見た時と同様、今も行われていると聞いた。私は農業の専門家でないので確たることが言えないが、北朝鮮の農業技術は改善が必要だろう。「わが国は、わが国のやり方で発展する」と北朝鮮の学者は力説するが、突っ張って勝手流でやった挙げ句、うまく行っていないようだ。
 北朝鮮の市民生活は向上している。政府も、財政がやや立て直り、外国からビールの醸造装置を輸入して「大同江ビール工場」を建て、国内の麦芽やホップを使ってビールを造り、1リットル70ウォン(実勢レートで約1円)という安価で、全国170カ所の直営ビール店などを通じ、市民に楽しみを与えている。この価格なら、月給5千ウォンの範囲内で何とか飲みに行ける。北朝鮮政府は同様のやり方で、外国からタバコ製造機やフィルターを輸入し、国内産のタバコの葉を使って、新たなタバコを作って安く売ったりしている。
 北朝鮮の学者は「基礎的な19種類の食糧や日用品の配給を、政府が人民に完全に保障できるようにするのが今後の最初の目標で、その次の目標は、完全に配給できる品目を200種類に増やすことだ」と言っていた。北朝鮮国内だけの努力によって、目標達成に近づいていると言うのだが、勝手流でどこまでやれるのか疑問だ。中国など新興諸国の生産増加によって、世界的な製品や機械の価格低下が起きたため、北朝鮮の政府や国営企業もその恩恵を受け、生産力の増大ができている部分があると私には思える。
 背景がどうあれ、北朝鮮はこの10年ほどで、極貧から脱し、少しずつ経済状況を改善している。しかし、このままずっと豊かになっていけるかどうかは疑問だ。計画経済体制を放棄し、勝手流もやめて、中国政府が期待するように、市場経済政策や外国資本を本格的に導入したら、中国のように高度成長できるかもしれない。だが、中国式に市民の個人的な市場経済活動を許してしまうと、社会の政治的なたがが外れ、政権の正統性が崩れて政治的に崩壊し、むしろ混乱して人々が貧しい状態に戻ってしまう可能性がある。
 北朝鮮政府は、それを恐れているので、政治を自由化せず経済だけ自由化した中国から、いくら「同じようにやりなさい」と言われてもやらず、政治も経済も自由化しないのだとも思える。北朝鮮の国家崩壊は、日本人の多くにとって「ざまあみろ」的な喜びと安堵かもしれないが、北朝鮮市民にとってはひどい悲劇になるだろう。独裁者がいなくなって市民が喜ぶはずだと思うのが浅薄なイメージでしかないのは、米軍侵攻後のイラクを見れば理解できる。

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