「ちきゅう座」に掲載された、色平哲郎というお医者さんの書いた記事である。長野県のお医者さんで、国民医療研究所というところの幹事らしい。元の文章はかなり長いので、その一部だけを転載する。
今の日本は東日本大震災や福島原発事故の後遺症(というよりは、原発事故は実は現在進行中なのだが、国民の大半はそれをわざと意識しないようにしている)などでてんやわんやの有様だから、TPPなど、もはや忘れている。しかし、世界経済支配層にとっては、「これこそが本題」なのである。日本がてんやわんやの状況だからこそ、そのどさくさに紛れてTPPを強引に実行させるということが予測できる。こういう「火事場泥棒的政策決定」を「ショックドクトリン」などとも言うが、これが政治議題に上がってきたら、全国民的な反対運動を起こす必要があるだろう。
大震災は物理的に日本を変えたにすぎないが、これは日本の経済の骨格を変えてしまうのである。つまり国民生活そのものががらりと変わるということであり、具体的には外資にほしいままに収奪されるということだ。今以上の貧困が日本という国を待ちうけているだろう。
しかし、無数の人間の不幸を平然と見られる、一部の人間の強欲、貪欲というものの底知れなさには、まったくあきれかえってしまう。金の神をマモンと言うが、まったく金は魔物である。「彼ら」もまた金という魔物に支配された哀れな連中にすぎない。
(以下引用)
突然出されたTPP ― メディアは絶賛
TPPは、私には聞き慣れない言葉でした。しかし、TPPは過去に何度も別な名前で登場していたのです。1997年にMAI(多国間投資協定)という名で、TPPに相当するものが審議されました。MAIはOECD(経済協力開発機構)を中心にヨーロッパで議論され、それに対して1,000団体にも上る世界中のNGOが抗議活動を行いました。日本で唯一抗議の声をあげたのは、私の所属していたNGO「市民フォーラム2001」(2001.3.31解散)だけでした。その危険性に気づいたヨーロッパでは、ただちにOECDに対する反対運動が展開されましたので、MAIは取り下げられる結果となりました。
今回のTPPは、昨年秋の臨時国会冒頭の菅首相による所信表明演説で突然出されたものです。おそらく誰も、何のことかわからなかったのではないでしょうか。その後政府は全く情報を出しませんでしたが、2011年元旦の主要5紙はすべて、「日本は貿易立国だから、関税をゼロにすれば日本は再生する」とTPPを礼賛していました。
私は友人の議員に、国会でTPPの質問をしてくれるよう頼みました(1月28日参議院本会議)。私は当日バンコクの会議に出席していましたため直接聞いてはいませんが、TPP参加により日本の経済を発展させるという首相に対して、「医療の市場化で病院の株式会社経営や患者と医者との間に民間の保険会社が入るようになること、混合診療の全面解禁など」についてどう考えているのかと質したところ、菅首相は「TPP協定についてすべてが明らかになっているわけではない」「国内医療の分野にどのような影響が出るかということを、あらかじめ申し上げることは困難」であると答弁したそうです。菅首相は厚生大臣経験者です。しかしこれは、医療の実態だけでなくMAI(現在で言うTPP)にどのような懸念があったためにヨーロッパで大反対が起こったのかをも全く知らない答弁です。
2月の初めから、外務省は24分野にわたるTPP交渉の内実について示し始めました。それを見る限りでは、私の懸念は当たっていました。TPPにはMAIと同様、日本の国民皆保険制度を根底から覆す「仕掛け」が入っていたのです。
「構造破壊」をもたらすTPP
私は3月5日付『医事新報』(「私はこう考える」)で、「TPPは国内法を上回る協定で、外資にフリーハンドを与えるものである。外資に『不利益』『不公正』『不自由』とみなされる『規制』はことごとく撤廃されることだろう」「食の安全基準や建築基準の後退、『国民皆保険』の崩壊、医薬品・医療機器、郵政などの貯蓄、そして教育分野のルールが大変貌し(※その後、労働分野も大変貌することがわかりました)、地域格差はさらに拡大する」「山村の水源が外資に買われるなどほんの序の口で、広い分野にわたって『構造改革』というより『構造破壊』がもたらされる」「多文化共生社会を目指すグローバル市民の動きと逆行する『構造的暴力』なのだ」と指摘しました。TPPが最終的に一般の国民の暮らしに重大な影響をもたらすことが、ほぼ確実です。農業の問題というよりも、とりわけ都市近郊に暮らす私たち一般の日本人の「老後の問題」ですから、首相はきちんと説明する必要があります。
今の日本は東日本大震災や福島原発事故の後遺症(というよりは、原発事故は実は現在進行中なのだが、国民の大半はそれをわざと意識しないようにしている)などでてんやわんやの有様だから、TPPなど、もはや忘れている。しかし、世界経済支配層にとっては、「これこそが本題」なのである。日本がてんやわんやの状況だからこそ、そのどさくさに紛れてTPPを強引に実行させるということが予測できる。こういう「火事場泥棒的政策決定」を「ショックドクトリン」などとも言うが、これが政治議題に上がってきたら、全国民的な反対運動を起こす必要があるだろう。
大震災は物理的に日本を変えたにすぎないが、これは日本の経済の骨格を変えてしまうのである。つまり国民生活そのものががらりと変わるということであり、具体的には外資にほしいままに収奪されるということだ。今以上の貧困が日本という国を待ちうけているだろう。
しかし、無数の人間の不幸を平然と見られる、一部の人間の強欲、貪欲というものの底知れなさには、まったくあきれかえってしまう。金の神をマモンと言うが、まったく金は魔物である。「彼ら」もまた金という魔物に支配された哀れな連中にすぎない。
(以下引用)
突然出されたTPP ― メディアは絶賛
TPPは、私には聞き慣れない言葉でした。しかし、TPPは過去に何度も別な名前で登場していたのです。1997年にMAI(多国間投資協定)という名で、TPPに相当するものが審議されました。MAIはOECD(経済協力開発機構)を中心にヨーロッパで議論され、それに対して1,000団体にも上る世界中のNGOが抗議活動を行いました。日本で唯一抗議の声をあげたのは、私の所属していたNGO「市民フォーラム2001」(2001.3.31解散)だけでした。その危険性に気づいたヨーロッパでは、ただちにOECDに対する反対運動が展開されましたので、MAIは取り下げられる結果となりました。
今回のTPPは、昨年秋の臨時国会冒頭の菅首相による所信表明演説で突然出されたものです。おそらく誰も、何のことかわからなかったのではないでしょうか。その後政府は全く情報を出しませんでしたが、2011年元旦の主要5紙はすべて、「日本は貿易立国だから、関税をゼロにすれば日本は再生する」とTPPを礼賛していました。
私は友人の議員に、国会でTPPの質問をしてくれるよう頼みました(1月28日参議院本会議)。私は当日バンコクの会議に出席していましたため直接聞いてはいませんが、TPP参加により日本の経済を発展させるという首相に対して、「医療の市場化で病院の株式会社経営や患者と医者との間に民間の保険会社が入るようになること、混合診療の全面解禁など」についてどう考えているのかと質したところ、菅首相は「TPP協定についてすべてが明らかになっているわけではない」「国内医療の分野にどのような影響が出るかということを、あらかじめ申し上げることは困難」であると答弁したそうです。菅首相は厚生大臣経験者です。しかしこれは、医療の実態だけでなくMAI(現在で言うTPP)にどのような懸念があったためにヨーロッパで大反対が起こったのかをも全く知らない答弁です。
2月の初めから、外務省は24分野にわたるTPP交渉の内実について示し始めました。それを見る限りでは、私の懸念は当たっていました。TPPにはMAIと同様、日本の国民皆保険制度を根底から覆す「仕掛け」が入っていたのです。
「構造破壊」をもたらすTPP
私は3月5日付『医事新報』(「私はこう考える」)で、「TPPは国内法を上回る協定で、外資にフリーハンドを与えるものである。外資に『不利益』『不公正』『不自由』とみなされる『規制』はことごとく撤廃されることだろう」「食の安全基準や建築基準の後退、『国民皆保険』の崩壊、医薬品・医療機器、郵政などの貯蓄、そして教育分野のルールが大変貌し(※その後、労働分野も大変貌することがわかりました)、地域格差はさらに拡大する」「山村の水源が外資に買われるなどほんの序の口で、広い分野にわたって『構造改革』というより『構造破壊』がもたらされる」「多文化共生社会を目指すグローバル市民の動きと逆行する『構造的暴力』なのだ」と指摘しました。TPPが最終的に一般の国民の暮らしに重大な影響をもたらすことが、ほぼ確実です。農業の問題というよりも、とりわけ都市近郊に暮らす私たち一般の日本人の「老後の問題」ですから、首相はきちんと説明する必要があります。
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