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英年金基金の損失、最大25兆円に 米証券が試算



【ロンドン=大西康平】英トラス政権の大規模減税策などをきっかけとした金利上昇による英年金基金の損失は、最大1500億ポンド(約25兆円)になったとみられることが明らかとなった。米JPモルガンが13日のリポートで試算した。年金基金は損失に伴う支払いのために、債券や海外株式を売却したという。
金利上昇による打撃を受けたのは「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI=債務主導投資)」という運用戦略をとる年金基金だ。デリバティブ(金融派生商品)による損失が、8月上旬からの累計で1250億ポンドから1500億ポンドに上るとした。
年金基金がファンドを通してLDIの運用戦略をとる場合、2~4倍のレバレッジ(てこ)をかけるのが一般的とされる。損失がかさんで取引相手方の金融機関からマージンコール(追加担保の差し入れ要求)を突きつけられた。支払いのための現金を捻出するために、保有資産の多くを占める物価連動国債を含めた国債、社債や海外株式の売りに動いたとしている。
英投資協会によると英国でのLDIの運用規模は2020年時点で約1・5兆ポンド(約250兆円)と、11年の0・4兆ポンドと比べて4倍近くまで膨らんだ。英国の機関投資家全体の運用資産の4割を占めるまでに広がった。
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- 今後の展望
トラス政権の政策への懸念が発端となったことは間違いないのだが、直接の引き金としては英国年金基金の損失がマージンコールに由来し、その支払いのために、売れそうな商品から売ることにより、市場の混乱に拍車をかけた。こうした傾向は、ファンドの資産凍結とその解約が進む時にも見られるもので、リスク顕在化の一つだ。この問題に、今後どう対応したらよいか。年金基金ゆえ、リスクは取らないほうがよい、という話になるのか、ポートフォリオの見直しで終わるか、あるいは、相当問題だが損失の認識をかえるために会計手法を変更するという伝家の宝刀を抜いてしまうのか。動向に注視したい。
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