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徽宗皇帝のブログ

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大学運営への住民参加
藤永茂氏の「私の闇の奥」より転載。
国家繁栄の源は教育にある、というのは常識のようでそうではない。為政者の多くは教育への政府支出を平気で削減するものだし、(それによって国家がどんどん活力を失っていったのがイギリス、アメリカ、それに日本である。)また教育がある種の権力の意思で汚染されることも多い。下に書かれた大学の「民主的運営」もうまくいくという保証はまったく無いが、その理想への意思は貴重なものである。

(以下引用)

2010/12/29
ベネズエラの大学法
 2010年12月24日、Venezuelanalysis.com に掲載された記事を読んで、ちょっとシュール・リアルな不思議な気持ちになりました。おとぎの国からのニュースのようですが、しかし、これは現実の出来事です。ベネズエラの国会は大学の意思決定に、教授、学生、雇用者、地域住民代表が平等に含まれるという画期的な法案を可決しました。この法律は、ベネズエラ国家憲法の第103条に明記された原則、つまり、政府は小学校から大学学部教育にいたる無償で質の高い一般教育を供給する義務があるという原則に基づいています。
 この法律によれば、大学生は大学管理者の選挙の投票権を持ち、教授の評価に加わり、意見発表の自由が約束され、大学の運営記録にアクセスすることが出来、住居、通学費、食費、医療施設、学費についてのサービスを受ける権利が保障されることになります。
 この法案の成立について、現政府に反対する野党、富裕層の学生団体は、これは社会主義的政策の強行だとして、チャベス大統領を非難するデモを盛んに行なっているようですが、一般大衆は新しい大学法を歓迎しているといいます。
 若者達が大学進学を希望する場合、それを全面的にかなえることは、国が特別豊かでなくても可能であることを目の前で実証されると、私などは不思議な思いに駆られますが、立ち止まって考えてみると何の不思議でもありません。先進の諸大国で必要不可欠と考えられているあれこれの出費にくらべて、勉強意欲のある若者達にほぼフリーな教育の機会を与える社会環境を整えるのに必要な出費は小さいものです。かつて極貧の小国ハイチで解放神学の神父であったアリスティドが大統領になった時にも、直ちに着手した政策の一つは教育費の無償化でした。
 近視眼的な為政者、支配階級にとっては、大衆が愚民であること、どんな政策をとっても学生達が何も騒ぎを起こさない大学ばかりの方が好都合でしょう。しかし長い目で国家の将来を考えた時、国民の教育程度の高さこそが本当の財産になる筈です。この考え方は余り古すぎて陳腐で、私は頭の奥にしまい込んで忘れかけていましたが、今度のベネズエラからのニュースをきっかけに突然再浮上してきました。
 人は高い教育を享けた方がいいのか、わるいのか? これはとても難しい設問です。
田舎で医者をしている立派な友人に言わせると、田舎の無教養の老人たちの方が、学のあるインテリ老人たちより、概して、従容とした立派な死に方をするそうです。ここに重い真理があるのはたしかですが、これは、むしろ、人間の本当の知とは何かという問題でしょう。
 長年ピサ大学のスタッフだったイタリア人の友人から聞いた話ですが、1343年創立のピサの大学はイタリア最古の大学の一つで、特にメディチ家がフィレンツェを支配した時代のピサ大学の歴史は大変興味深いものです。フィレンツェ大学は1321年に創立されましたが、1473年、メディチ家のロレンゾによってピサに移され,ピサ大学に合体され、ピサ大学の規模と権威は増大します。友人の説明によれば、フィレンツェの支配層は、学問が栄えるのは重要視したけれども、学生や教授たちが支配権力に楯突いて騒ぎをフィレンツェで起すのはご免蒙りたいという発想からピサ大学の方をもり立てたというのです。騒ぐならピサで騒げ、というわけです。その時々の支配権力に唯々諾々として従う大学などは存在しない方が世の中のためになります。ピサ大学の卒業生やスタッフのリストには凄い名前が並んでいますが、古くは、法王の権威の前でも自説を曲げなかったガリレオ・ガリレイの名もあります。
 ベネズエラの若者と一般大衆の大部分は、教育に関する国家憲法の条文と新しく成立した大学法を歓迎しているようですが、それは遠い所で、メディチ家の学問尊重に通じているのかも知れません。

藤永 茂 (2010年12月29日)


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