西側はこれほど膨大な支援を行ってきたものの、ウクライナのゼレンスキー氏は約束の支援額に達していないと連日のように国際社会を非難している。実際、批判は的を射ている。国際社会はこれまで4160億ドル(65兆3120億円)の支援を約束しており、行った支援は約束より43%も少ない。
特に遅れているのは財政支援で、2400億ドルを約束していたが、実際の支援は半分以下に留まっている。一方、軍事支援は順調で、約束の75%を完了した。
財政支援に限ってみていくと、2022年は311億ドル、2023年は425億ドル、2024年は年末までに374億ドル(前年比で12%減)に達するとウクライナ中央銀行は見込んでいる。
この通り、ウクライナの財政支援はピークの2023年を最後に規模が縮小している。2022年は毎月の支援額が平均で31.1億ドル、17ヵ国(+EU)が協力した。2023年は支援国の数が13ヵ国(+EU)に減少したものの、支援額は平均35.5億ドルに増加。2024年の上半期は25.9億ドルに減少、支援国は日本、カナダ、英国、ノルウェー、スペイン(+EU)のみとなった。日本は財政支援額でEU、米国についで3番目に多い。
西側は支援疲れに陥っている。さらには対露制裁に伴うエネルギー価格の上昇、及び物価高騰を受け、各国で財政状況が悪化、西側はロシアの凍結資産をウクライナ支援に利用するという歴史的暴挙に出た。
ロシアの凍結資産を利用した支援は総額500億ドルで、融資は世界銀行経由で2024年12月から2027年12月にかけて行われる。2024年12月にウクライナはこの枠組みで20億ドルを受け取っている。そのうち10億ドルは米国による寄付で、残りの10億ドルは日本と英国が保証する貸付となる。日本は今後、この枠組みでさらに20億ドルを投じることとなる。
ただし、ロシアの凍結資産に手を付けたところで、以前のような支援を続けることは難しい。凍結資産を利用した3年間の財政支援は500億ドルで、1年間に換算すると166億ドル、ピーク時(2023年)のわずか39%に過ぎない。
さらにロシアは対抗措置として西側の資産を押収するため、日本等の非友好国はいずれも大きなダメージを受けることとなる。
バイデン政権はあまりに露骨なウクライナ・ファーストの政策を進めてしまった。その民主党は大統領選と議会選で大敗し、これに追従した岸田政権も同じく選挙で大敗、自民党は30年ぶりに少数与党となった。
当然ながら、石破首相はより賢い政権運営が求められている。米国第一主義と対中政策を最大の課題と捉えるトランプ氏が大統領選で勝利するや否や、長島昭久議員(自民党)のように、ウクライナへの連帯を取り下げる人物も現れている。
石破首相は所信表明演説でお決まりのウクライナ支援を約束し、実際に財政支援を継続している。しかし、トランプ政権の発足を前に今や自民党も岐路に立たされており、それを石破首相も痛切していることだろう。首相は就任から3ヵ月が経ってもウクライナをいまだに訪問していない。そして訪問に向けた意欲すら示していない。
もはやウクライナ支援で国民の支持が集まる時代ではない。日本はウクライナ支援に何兆円も投じてきたが、能登半島地震や奥能登豪雨の復旧復興予算がわずか3704億円だったことを日本国民はどう感じるだろうか。ウクライナ支援の3割から5割は汚職で消えるとウクライナ・メディアが報じていることを日本国民はどう感じるだろうか。任期が切れたゼレンスキー氏の支持率が10%台で推移していることを日本国民はどう感じるだろうか。
衰退途上国ニッポンを率いる石破首相は英断を迫られている。
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