写真・図版 4月27日、黒田東彦日銀総裁は、金融政策決定会合後に記者会見し、さらに積極的な国債の買い入れを行うと決定したことについて、これまでの上限である80兆円を超えても購入できるとの見方を示した。写真は日銀本店で1月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung Hoon)


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 [東京 27日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は27日、金融政策決定会合後に記者会見し、さらに積極的な国債の買い入れを行うと決定したことについて、これまでの上限である80兆円を超えても購入できるとの見方を示した。ただ、金融政策上の必要性に基づくものであるとし、財政ファイナンスを否定した。


 黒田総裁は国債買い入れを増やす理由について「債券市場の流動性低下は明らかであり、政府の緊急経済対策によって国債増発も見込まれている」と指摘。「こうした状況を踏まえ、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させるため、上限を設けず(国債を)買い入れる」と語った。


 黒田総裁はこれまで、超長期金利の過度の低下は年金運用などで副作用が大きいとしてけん制してきた。しかし27日の会見では、現在の局面ではイールドカーブが寝てしまうことの弊害を議論するよりも「イールドカーブ全体を低位に安定させることが最も重要だ」と述べた。


 現在のような危機的状況では、政府と中央銀行の協調した行動が重要だと指摘。黒田総裁は、財政政策との相乗効果も当然期待しているとした。しかし同時に「(国債の購入増は)金融政策上の目的で行っているもので、財政ファイナンスではない」と強調した。


 日銀は27日、新型コロナ対応の金融支援特別オペの拡充を決めた。さらに、政府の緊急経済対策を踏まえた新たな資金供給オペについて、早急に検討するよう黒田総裁は執行部に指示した。黒田総裁は、新型コロナの感染拡大で経済活動がストップした状態が続き「企業は資金繰り倒産にならないように資金繰りを急いでいる。この意味では、リーマン・ショックより厳しい面もある」と述べた。


 日銀は決定会合の声明文で、政策金利のフォワードガイダンス(FG)を修正。従来の「物価モメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間」との文言を削除した。


 黒田総裁は、当面、景気は厳しい状況が続き、物価も弱含むとみられる中、「物価のモメンタムはいったん損なわれた状態にある」と言明。「物価モメンタムが損なわれる恐れに紐づけたフォワードガイダンスでは、政策金利を維持ないし引き下げる期間が不明瞭になる」と説明した。


 この日発表した展望リポートで、22年度の物価見通しが政策目標である2%に届かなかったことについては「(2%の達成は、展望リポートの)見通し期間を超えて、相応に時間がかかる」との見通しを示した。その上で「日銀が2%の物価安定目標の実現を目指していることに変わりない」とした。


 *内容を追加しました。


 


 (和田崇彦)