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徽宗皇帝のブログ

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格差固定社会における若者の未来
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」より。現在の社会にみなぎる陰鬱さの源流について。もちろん、小泉一派による格差礼賛、すなわち格差や競争こそが社会を発展させるという思想が日本社会をこのように陰鬱なものにしたのだが、それは基本的に資本主義自体がそういう思想なのであり、「新自由主義」とは「羽目をはずした資本主義」なのである。そして、その思想が作り上げたのが現在の日本なのである。若者に未来への希望が見えない社会は、はたして新自由主義者たちの言っていたような活力ある社会なのだろうか。


(以下引用)

 格差を容認する思想の背景には、職を失うことへの恐怖心こそが勤労意欲の源なのだということを信じる勝ち組経済人の鉄血式経営哲学がある。
 叩き上げの勝利者や、成り上がりの成功者は、往々にして、生まれつきのお坊ちゃまよりも残酷になる。というのも、彼を上昇せしめたのは、自らのスパルタンな精神性と努力であって、決して運やめぐりあわせではないと、少なくとも本人はそう信じ込んでいるからだ。とすれば、彼の目から見て、他人の貧困はモロな自己責任であり、他社の不運や不幸は努力不足以外のナニモノでもないということになる。

 彼らの主張は、煎じ詰めれば「オレを見習え」ということに尽きている。実際、その種の経済人の著書を読むとはじめから最後まで、「オレを見ろ」という以外のことは何も書かれていない。

 メディアも恐怖を煽る流れに加担している。
 今でもYoutube上で流通している有名な動画がある。
 さる民放のテレビが番組内で紹介したもので、内容は、とある外食チェーンの研修風景だ。
 「餃子 新人研修」でググれば出てくる。興味のある人はぜひチェックしてみてほしい。
 内容については、あえて論評しない。
 とにかく、こういう動画を全国ネットのテレビ電波に乗せて、それが会社の宣伝になると判断した経営者がいるということだけでもすごいことだ。
 社長は、怖がられるほど尊敬を集めると、そういうふうに考えたのだろうか。驚きだ。
 驚いてばかりもいられない。
「地獄 研修」でググると、もっとすごい動画が、ゴロゴロ出てくる。
 恐怖心。
 うん。全く他人事であるということがわかっていても、それでも十分に嫌な気持ちになれる。
 こういう動画を見ずに済んだ時代に若者であった私は、たぶん幸運だったのであろう。

 私たち昭和の人間は、この種の恐怖に対して無自覚でありすぎたのかもしれない。
 とにかく、恐怖はミレニアム以降、にわかに現実化した感じがある。でなくても、私の知る限り、若い連中がこんなにも転落の恐怖に駆られて生きている時代はかつてなかった。
 現在、彼らの心理的な共通部分は、恐怖心で満たされている。

「新卒で就職に失敗したらそれっきりどこまでも派遣地獄だぞ」
「正社員になれなかった人間は一生涯底辺の暮らしが決定だよな」
「失職期間が半年を超えると、そこから先はホームレスだぞ」
「アルバイトの時給って、十代でも四〇代でも一生同じなわけだし」
「っていうか、プログラマとかって、デジタル労務者なわけだろ?」
「転職と離婚って数を重ねるごとに俗悪化するよね」
「自己都合で休むとかあり得ないでしょ。職にとどまりたいんなら」
「子供? 冗談じゃないよ。育ててほしいのはオレの方だぜ」

 若い連中を恐怖に陥れて、これ以上チマチマさせることで、いったい誰が利益を得るのだろう。
 威張りたがりの居酒屋チェーン経営者みたいな人間にとっては、あるいは怯えた若者の方が扱いやすいといった事情があるのかもしれない。
 でも、怯えた消費者が形成する市場に未来はないと思うぞ。

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