忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

現代は欧米そのものが「隠れたローマ帝国」である。
「世に倦む日々」の記事の一部が、例のフランスの新聞社襲撃事件に別角度から光を当てていて面白いので、その部分だけ抜粋転載する。この部分の前にイタリアの南北格差についての歴史的薀蓄が語られているが、かえって下記部分の印象が弱まるかと思うので、その部分についての言及は見え消しにした。また、私が特に注目した部分(それは私自身の前々からの考えと当然一致しているということだ。)は色文字にした。
かつて「西洋文明の常識」という本(もとはネット上のホームページ)で真の歴史が西洋による世界侵略の歴史であり、現代世界はなおもその侵略のさ中にあるという事実に目を開かされたのだが、西洋による侵略の一番の被害者が中東とアフリカ、特に北アフリカである。ここに目を向けないかぎり、現実世界のことが基本的に分かっていないということになるだろう。もちろん、その侵略はジェントルな形では西洋文化(特にマスコミ文化)や西洋科学の普及として世界全体(特に日本)に及んでいるのである。
例の新聞社襲撃事件はいわゆる「偽旗作戦」であり、イスラムではなく白人支配層の指令による犯行だと思うが、中東と北アフリカがこれまで置かれた悲惨な状況の被害者としてヨーロッパに移住した難民や移民たちが、やがてすべての元凶たる「白人支配」への怒りに目覚めたとき、ヨーロッパで何が起こるか、私はむしろ期待すらしている。



(以下引用)





今、ヨーロッパは、裏庭として、自己の影の領域として、南の北アフリカ・中東をインボルブしている。地中海の南側の広大なイスラム圏を、事実上包摂した形で、経済社会が循環している。その姿は、イタリアの南北問題がエクスパンションして、ハドリアヌス帝のローマ帝国の版図の空間に拡大した格差構造のように見える。地中海の南側は、EU経済の底辺を支える低賃金労働力の供給元だ。と同時に、社会保障のコストの懊悩の要因であり、市民社会の一体性を危うくする不穏分子の発生源である。その地中海を、今日も、大量の難民たちが漂流船で決死の航海をして、イタリアの島に接岸している。生命の保障のない密航船に乗り込んで、シリアとエジプトとパレスチナから、絶望の民たちが欧州大陸へ毎日漂着している。嘗て新大陸をめざして大西洋の荒波を超えたヨーロッパ人のように、迫害と戦火に追われたイスラムの人々が命がけで地中海を渡って新天地に向かっている。彼らは、EUの国々で、嘗てのUSAでWASPに差別されたイタリア系やアイルランド系のように、冷遇されながらもコミュニティを作り、そのコミュニティが新しい漂流移民の希望の基盤となり、生を繋ぐセーフティネットとなるのだ。ヨーロッパは矛盾している。

地中海を漂流する憐れなイスラム不法移民が急に増えたのは、シリアの内戦とエジプトのクーデターが重大な契機になっている。そのことは、NHKが詳しく報道していた。「アラブの春」を巧妙に利用し、自分の都合のよいように引き回したのは欧米とイスラエルだ。シリアとエジプトとパレスチナから、祖国を捨て、故郷を捨て、ブローカーに高いカネを払い、途中で沈まされるかもしれない密航船に乗り込まなくてはならないのは、その原因は欧米が作っている。まさに資本論の第1巻24章でマルクスが描くように、暴力的に、元々の地で平穏に暮らしていた人々が追い出され、流浪する難民となり、EU経済を底辺で支える無一物の移民労働者として欧州の諸都市に狩り集められている。が、矛盾と不幸の循環はそこで終わらず、連鎖はなお続き、今度は、ヨーロッパで差別され、新自由主義の格差社会で絶望した若者たちが - 多くはイスラム系らしいが - 逆に海を跨いで中東に向かい、「イスラム国」に潜入して、現地の住民を残虐に殺戮してストレスを発散するということをやっている。その結果、またシリアからの難民が増え、シリアの人々が着の身着のままで家族ともども脱出し、密航船でヨーロッパに逃げなくてはならないのだ。矛盾が循環し、暴力と悲劇と貧苦が拡大再生産されている。いちばん苦しい思いをさせられているのは、パレスチナのガザの地獄の人々と、滅茶苦茶な内戦で廃墟と化したシリアの人々である。本来、今回のテロ事件を考えるときは、そこに目が向かなくてはいけない。

シリアやパレスチナの無辜の人々の声は、マスコミ報道の表面には出ない。彼らが今度のパリの事件に接して、どれだけ暗澹とした気分に沈んでいるか、それを報道する西側のマスコミはない。NYでの911テロ事件の後、パレスチナと中東でどれだけ恐ろしい出来事が起きたか。それ以前と状況が変わってしまったか、中東イスラムの人々の人権レベルが国際的に不当に切り下げられ、イスラムが無条件に敵視されるようになったか、彼らはそれを思い出して戦慄していることだろう。ヨーロッパの一般市民も恐怖に怯えているが、それ以上に過酷な運命に至る可能性が高いのは中東の人々で、この事件を発端に始まる暴力の悪夢に苛まされるのは、パレスチナやシリアやイラクで暮らす、貧しく善良なイスラムの民衆だ。シリアは嘗てフランスの植民地だった。2年前、アサド政権を打倒するべく米国を空爆に誘い、シリアでの戦争に最も積極的だったのはフランスだった。自由と平等と博愛の国のフランスは、旧植民地での軍事行動には全く躊躇しない性向があり、一昨年もマリと中央アフリカで当然のように軍事介入している。小国のフランスに、そこまで軍を動かす財政的余裕があるのか、イラクやアフガンで米国が陥った泥沼のリスクを計算しないのか、私には不思議だが、どうやら、テリトリーである西アフリカの利権でフランス資本が得ている収益は、今なお莫大な規模なのだろうか想像する。フランスが、イスラム国とアサド政権の両方を殲滅する戦争計画を立案し、オバマに提案して実現する最悪の進行を懸念する。








(徽宗追記)「阿修羅」に転載された「darkness」記事を批判する次のコメントが、上記「世に倦む日々」記事をより簡潔にまとめた好文章になっているので、これを追加転載しておく。この「母系社会」氏は今後注目だ。なお、「darkness」は以前に少し引用したこともあるが、妙な知識に詳しいところはあるが、分析や判断は不明瞭不的確、(ひたすら「これから世界はもっと悪くなる」、としか言わないところも気に入らない。それ以前に、白人支配のこの世界を認容する姿勢が最悪である。悪化する世界で、自分たち少数の「目覚めた者」、つまり自分のサイトの読者だけがうまく立ち回れ、と言うかのようだ。地獄やハルマゲドンをネタに信者を勧誘する新興宗教教祖にも似ている。)人間性にも少々疑問があるので、有料サイトになって以降はまったく読んでいない。



03. 母系社会 2015年1月09日 02:07:01 : Xfgr7Fh//h.LU : iDkDJNRIdA

>人種も、宗教も、文化も、気質も、まったく違う人間が1つの国に
>集められた結果、互いに激しい憎悪を抱き、殺し合うことになっている。

アホの見本である。


中国の唐の時代のように、人種も、宗教も、文化も、気質も、まったく違う
人間が1つの国に集められても、平和共存してきた国や地域はたくさんある。


フランスも、中東やアフリカ、アジアに広大な植民地を持っていた帝国主義国
だった。


アルジェリアの独立戦争では大量のイスラム教徒を殺したし、イスラエル建国
も推進し、リビアも爆撃して、今も旧植民地マリではイスラム教徒を殺している。


今度の事件は、アルカイダやイスラム国が関連していたとしても、背景には
近世以降のフランスも含めた欧米によるイスラム世界への侵略の歴史があり、
その反作用で根が深い問題だし、同時に、イスラム教徒を低賃金労働者として
食い物にしてきた現在のフランスの政治経済体制の問題でもある。


しばらくの間、欧州は、自分たちがしてきたことのツケを払うことになるの
だろう。


「表現の自由」の問題と考えているフランス人は、アホとしか言いようがない。







拍手

PR

コメント

コメントを書く