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徽宗皇帝のブログ

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社会主義経済(産業統制経済)の根本的弱点と資本主義の欠陥
「壺斎閑話」から転載。この文中に引用されている猪木武徳の分析は私も昔読んで納得したものである。昔の自分の記事にも引用している。猪木は、下の記事の冒頭部分を「生産への誘因の欠如」としている。つまり、その生産(仕事)が直接的に自分の利益にならないため、労働意欲が無くなるということだ。
とすれば、現在の日本の低賃金社会で労働意欲を持つのもまた困難だ、となる。しかも、既に階級的分断があり、下層階級からの上昇は不可能だと多くの人は感じているはずだ。それが日本社会の経済的下降(ひいては出生率低下)の真因ではないか。つまり、社会主義同様に資本主義もまた隘路に入っているわけだ。
その解決策は「資本主義と社会主義の結婚」にある、というのが私が昔から主張していることだ。明快に言えば「所得と私有財産に上限を決め、それを超える所得や資産を下層階級への援助に使う」ということである。つまり、ロスチャイルドやロックフェラーのような存在を否定することだ。国家予算を超える資産を個人や一族が所有することが可能であることがおかしいのである。
この場合、個人の所得向上は可能だから社会主義的停滞はなく、また資本主義的な過度な生存競争もないので、「全員が幸福になれる」はずだが、まあ、「社会保障が完備すると努力する者はいなくなる」と極論を言う者もいるだろう。
では、大金持ちは、あれほどの財産を持っていながら、なぜさらに「努力して」その財産を増やし、他から収奪することに努めるのか? 努力するかしないかは社会のせいではなく、個人の人生哲学の問題だろう。月給20万円より月給50万円のほうが女にもてるなら努力して地位向上に努める男は多いわけで、それで社会全体のインセンティブ(誘因)としては十分であるわけだ。

なお、小谷野敦などは「戦争肯定論者」のようで、戦争は「人口調節に必要だ」と思っているらしく、「第二次大戦後の先進諸国での平和状態は、むしろ人口爆発を招いている」(「日本人のための世界史入門」)などと書いているが、誰でも分かるように、現在の先進諸国は中国も含めすべて人口減少に向かっており、「平和状態が人口爆発を招く」が愚論であることは明白だ。要するに、家族を増やす余裕がなくなれば子供を作らなくなるのであり、「経済発展時(社会全体の所得増加時)には人口が増える」のが実相だろう。このあたりの小谷野の論理のいい加減さが文系的である。

(以下引用)

ソ連の農業が不振だったわけは、ソフホーズやコルホーズといった集団農業のあり方にあった。農民は自分のものではない農地を喜びをもって耕すことができなかったのだ。

フルシチョフの改革によって、農地の一部が農民に与えられたが、その結果起きたことと云えば、わずか3パーセントに過ぎない私有地農業が、ソ連全体のミルクの20パーセント、肉の30パーセント、果実や野菜の殆どを生産するといった事態だった。多くの農民は自分の労働の成果が直接現れる私有地の工作に全力を注ぎ、共有地には労力を省いたのである。

重化学工業の分野でも、ソ連の実力は十分とは言えなかった。ポーランドや東ドイツと云った社会主義経済圏の諸国との間で、ソ連は石油や小麦などの一次産品を輸出し、かわって工業製品を輸入するといったサイクルに取り込まれていた。社会主義経済の盟主とはいっても、東欧の進んだ経済の後塵を拝するような位置にいたのである。

ソ連の経済はフルシチョフ以降も思うように改善せず、状況はますますひどくなっていった。1980年代に入ると食料などの日常生活製品は極度に不足し、どのスーパーマーケットにも長蛇の列が生まれた。

工業製品の方も、十分と云うわけではなかった。必要性が低いものばかりが生産され、人々の生活の改善につながるようなものが生産されない、こういう事態が慢性化したのだ。

ソ連が最終的に打倒されたのは、民主化を求める政治的な動きということになっているが、それと並んで、あるいはそれ以上に、経済システムのマヒが市民の生活の悪化をもたらし、それが市民の不満を増大させたという側面もある。

猪木武徳氏は、その原因を、ソ連型の社会主義経済が市場を無視して成り立っていたことに求めている。

猪木氏はいう。「紙一重の差によって勝敗が決まる経済競争にとって重要なのは、現場の人間が有する具体的・個別的な知識なのである。社会主義計画経済では、この種の知識を収集・管理することができない・・・価格は各経済主体が知る必要のない個々の事象を捨象して、意思決定にとって必要かつ十分な情報を圧縮したかたちで提供する。社会主義計画経済はこの価格の担う重要な役割への理解が欠如していたことに、致命的欠陥があったといえよう」

社会主義計画経済では、資源の配分や価格や賃金の決定は市場ではなく、計画担当者が決める。その結果「経済問題が即、政治問題となり、誰の利益が重要であり、誰がその問題の解決に強い力を持っているのかが最大の関心事となる」

一般に社会主義経済は「進んだ先行経済へのキャッチアップの段階ではある程度の成功を収め得るが、それ以外は停滞に苦しむことが多い」

これが社会主義計画経済に関しての、氏の包括的な見解である。

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