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徽宗皇帝のブログ

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経済学者の詐術
「東海アマ」ブログ所載の加谷珪一とやらいう経済評論家の記事である。
いい記事だと思って読んでいたら、最後の結論部分、つまり「問題の解決策」の部分を読んでがっかりしてしまった。まさに財界のお妾評論家、新自由主義者の言い分ではないか。
「企業の生産性を高め」とは、IT化による人件費削減、過剰人員(本当は過剰でなくても)の削減になる(つまり全体としては国民貧困化になる)のがこれまでの通例ではないか。企業の内部留保を問題にしている東海アマ氏自身がこの詐術に気づかないのだろうか。
「政府の財政出動がインフレを悪化させる」というのが本当に経済学のどの教科書にも書いてあるのかどうかは知らないが、ここで問題なのは国民の「消費能力の低さ」つまり、「可処分所得の低さ」ではないか。財政出動というのが国内に回るカネの量を増やすからインフレになる、という、子供でも分かるレベルの話をトクトクとしている場合か。(政府のカネは税金であり、もともと国内に出回っていたカネであり、そのカネが国民に戻ってインフレになるとしても、それは、カネが消費に使われたからであり、好景気に向かう原動力であり、健全なのである。体中の血液を脳だけに集め、他の部分が全部死滅したら、それは人体を救うことにはならない。)
要するに、「どこに向けて財政出動をするか」が問題なのであり、国民がゆとりある生活をできるだけの「可処分所得」を与えることが、経済学者の言うべきことだろう。つまり、防衛費(戦争予定費)に使うカネを低所得者に回せば、国民の消費が増え、好景気に向かい、国民は結婚も子ども作りも可能になるだけのことだ。つまり、「民のかまどが煙を上げていない」時には大減税と国民支援をするしかないのである。
現在は単なるインフレではなくスタグフレーションであり、それは国民の消費能力の低下のためなのだから、解決策は「国民にカネを与える」しかないのであり、下の引用記事の末尾はスタグフレーションの問題を意図的にインフレ面だけに限定して話を捻じ曲げているのである。

(以下引用)

 さて、ここで今朝目についた加谷珪一の論評を紹介する。

2024.05.22 円安で国内消費は「壊滅状態」に…日本経済をぶっ壊す「スタグフレーション」のヤバい現状
 https://gendai.media/articles/-/130306

 足元で日本の景気が深刻な状況に陥っている。消費の低迷が著しく、ここまで状況がひどいのはリーマンショック以来といってよいだろう。物価上昇に賃金が追い付かず、日本経済は完全にスタグフレーションの様相を呈してきた。

 円安による消費の低迷が深刻化
 内閣府が発表した2024年1~3月期のGDP(国内総生産)成長率は、物価の影響を考慮した実質で0.5%のマイナスとなった。
 年率換算では2.0%のマイナス成長である。政治の裏金問題が世間を賑わしているせいか、あまり大きな話題にはなっていないようだが、日本経済の現状はかなり深刻だ。

 数字が悪かったのは1~3月期だけではない。2023年7~9月期はマイナス0.9%、10~12月期も何とか0%を維持したものの、速報値ではマイナスだった。つまり日本経済は3四半期連続で事実上のマイナス成長に近い状況であり、一般的に2四半期連続でマイナスになるとリセッション(景気後退)と判断されることを考えると、国内の景気は相当、悪い。

 景気が落ち込んでいる最大の理由は消費の低迷である。
 今の日本経済は、物価上昇に賃金が追い付いておらず、労働者が受け取った名目賃金から物価上昇率分を差し引いた実質賃金は何と24か月連続でマイナスとなっている。賃金が上がらなければ国民は消費したくてもできないので、数字は低迷せざるを得ない。
 物価が上昇しているのは言うまでもなく円安の影響であり、食品を中心に商品の値上げが続いている。

 住宅投資が足を引っ張る
 日本人の食卓は多くが輸入品で占められており、為替の影響を受けやすくなっている。日本人はコメを主食にしていると漠然とイメージしている人も多いかもしれないが、現実はまったく異なる。
 自身の食生活を振り返ってみれば良く分かると思うが、朝にコーヒーと食パン、昼食にはパスタ、夕飯にハンバーグというメニューは特段珍しいものではないはずだ。だが、これらの品目はほとんどが輸入品もしくは輸入品を原料にしており、円安の影響をモロに受けてしまう。

 食品など生活に直結する支出は大幅には減らせないので、食費が値上がりした分、衣類や家電など他の消費を減らすことになり、全体の消費は低迷する。
 それだけではない。今の日本は家電やスマホ、パソコンなど、生活に必要となる電化製品の多くも輸入に頼るようになった。食費の高騰で家計に余裕がなくなり、電化製品についても値上がりが続いているため、これらの購入頻度はさらに低下してしまう。

 今後、景気の足をさらに引っ張る可能性が出てきているのが住宅投資である。民間住宅投資は2023年7~9月期がマイナス0.9%、10~12月期がマイナス1.4%、2024年1~3月期はマイナス2.5%と、状況は悪くなる一方である。

 都市部を中心にマンション価格は値上がりが続いており、首都圏における2023年の新築マンション平均販売価格は8101万円と前年比で28.8%もの上昇となった。ここまで価格が高くなると、もはや庶民では手が出せない水準であり、当然の結果としてマンションの販売戸数は減少し、GDPにおける住宅投資もマイナスとなる。

 これらの原因はすべてインフレ(物価上昇)であり、完全にインフレが経済の足を引っ張っている状況だ。

 カネ余りが原因に
 日本でも物価上昇が顕著なってきた当初、多くの専門家が原油価格の高騰など、一次産品の値上がりが原因であり、その影響は一時的なものにとどまる主張していた。教科書でいうところのコストプッシュ・インフレであり、大規模緩和策で想定していたインフレとは異なるという理屈である。

 しかし、歴史を丹念に追い、経済の本質を追求している人間からすると、一次産品が値上がりしただけで、持続的、かつ広範囲に物価が上昇するということはあり得ない。歴史を辿れば一目瞭然だが、継続的にインフレが発生する時には貨幣要因や財政要因がほぼ必ずといってよいほど絡んでいる。

コストプッシュ・インフレ、ディマンドプル・インフレという言葉は、学生などが分かりやすいように教科書で用いられている分類に過ぎず、インフレというのは基本的に複合要因と考えるべきだ(実際、インフレへの対処法はインフレの種類を問わず同じというのが経済学の常識である)。

 一次産品の価格が上昇していることだけがインフレの原因であるならば、マンションの価格が一気に28%も上がるということはあり得ない。背景に大規模緩和策によるカネ余りがあり、余剰のマネーが不動産投資に向かっていることは明らかである。
 株価についても同じようなことがいえる。日経平均株価は過去2年で約2割上昇したが、これは円安による企業価値の棄損分を調整しているに過ぎない。

 日本円は過去2年間で1ドル=100円台から150円台と3分の2に減価した。日本円の価値が下がったからといって、グローバルにビジネスを展開しているトヨタなどの企業価値が下がったわけでない。日本円ベースの株価は、日本円そのものの価値が下落した分だけ上昇しなければ辻褄が合わない。

 この理屈で考えれば、日経平均は1.5倍になって当然ということになり、今の株価上昇は特段驚くべきものではないとの解釈になる。

大規模緩和策によってマネーが余剰になったところに円安が加わり、不動産価格上昇に伴う資産効果もあって、株式市場に資金が回っている。コストプッシュ・インフレだけの要因であるならば、企業にとっては基本的にマイナス要因ばかりであり、株価はあまり上昇しない。

 物価上昇がなかなか収まらないどころか、さらに悪化する可能性が高くなっていることや、不動産価格や株価が上昇しているのは、今の日本で発生しているインフレが複合的要因であることを如実に示している。

 では、日本はどうすればよいのか。
 インフレが進行している最中に財政出動するとインフレをさらに悪化させるというのは、経済学における基本中の基本であり、景気が悪いからといって単純に財政支出を拡大することは本質的な解決にならない(これはどの経済学の教科書にも書いてある基本である)。

 不景気下におけるインフレ(つまりスタグフレーション)は非常にやっかいな現象であり、これに対処するには、企業の生産性を高め、付加価値を増大させることで賃金を上げるしかないのが現実だ。過去の歴史を見ても分かるように、スタグフレーションの克服には王道を追求するしか選択肢はない。
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 引用以上

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