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徽宗皇帝のブログ

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自由貿易と民主主義の相克
「株式日記と経済展望」経由で「日々平安録」とかいうブログから転載。ただし、当人の感想部分は省略する。E.トッドの考えの要約が欲しいだけなので。(筆者には失礼な行為だが、まあ、インターネット記事の宿命だと考えてもらいたい。)


(以下引用)


 今日の朝日朝刊にE・トッドへのインターヴュー記事がでていた。それについて少し考えてみる。

 まず、トッドの見解。

 1)日本でおきていることは世界の主たる民主主義国でおきていることと同じ。フランスではサルコジ大統領は大したことができず、オバマ大統領も無力である。各国の民主主義が機能不全におちいっているのには共通の原因がある。それは自由貿易こそが問題の解決策であるとするイデオロギーである。この支配的思想が変わらないから、日本での政権交代でもなにもかわらず、フランスでも英米でも政権はなにもできない。

 2)途上国に安価な労働力があると賃金の高い先進諸国の人々は無用の存在であるとされてしまう。世界的に需要が不足していて景気刺激策が必要であるということについては世界の指導者たちの見解は一致している。だが刺激策の結果、企業の利益は伸びたが雇用と賃金は伸びなかった。各国の政策は中国やインドのような新興国の景気を刺激しただけだった。われわれが買っているものにはみな madein China とかいてある。

 3)自由貿易の問題の根底にあるのは、ハイパー個人主義あるいは自己愛の台頭とでも呼ぶべき深い精神面での変化である。共同体で何かについて一緒に行動するということがなくなった。社会や共同体が否定されるようになってきている。個人の確立は近代的な民主主義の基礎であり、それは個人主義的な色彩の強い国である英米やフランスで発明された。ドイツや日本はもっと権威主義的な国でリベラルな民主主義にはなじみにくい。そのためにかえって不平等の広がりがゆっくりだった。ヨーロッパ内でもドイツよりもフランスのほうが病んでいる。ドイツではまだ労組が機能している。フランスほどのエリートと大衆の断絶もない。

 4)民主主義の普及は初等教育の普及による識字率の向上が関係する。だれでも読み書きができるようになると文化的な一体感が醸成される。しかし、高等教育が普及すると文化的な不平等が出現してきた。教育格差が民主主義を弱体化させた。

 5)日本はまだ超個人主義的にはなっていない。それはアメリカが生んだ思想で、英仏には広がっているが。日本は外来思想に苦しんでいる。

 6)自由貿易第一という思想は、エリート達がもっと勉強して考えを変えれば変わる可能性がある。その兆しはわずかながらある。民主主義は人々のための統治であり、エリート不要論はポピュリズムである。

 7)一方、超個人主義や共同体の弱体化は、信仰の危機のようなもので、その流れを変えるのはきわめて難しい。

 ヨーロッパではキリスト教という普遍性の高い宗教が基盤になって、そこから政治思想が生まれた。しかし、今では国という共同体への一体感さえ失われようとしている。宗教さえ力を失ってきている今、これからの数十年のうちにみんなが信じられる何かが復活するということはありえないだろう。

 8)しかし、共同体としての信仰の喪失は人々を戦争に大動員できなくなっているというプラスの面もあり、大戦争がおきないのであれば、何かを形成するための時間的余裕はあるかもしれない。

 9)政治の規模と経済の規模が一致することがのぞましい。アジアは家族構造という面からみればかなりの共通性がある。それを基盤にEUとは異なるなんらかの連携は不可能ではないかもしれない。


(以下省略)

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