ロシアの最終兵器

12月17日、ロシア国防省は最新の核兵器システム「アバンガルド」を南西部のオレンブルク州に配備したと発表した。形状はハングライダーのようで、従来のICBM(大陸間弾道ミサイル)とはまったく異なる。


プーチンが「隕石のように目標を破壊する。迎撃も不可能だ」と自信満々に語るロシアの最終兵器の性能はいかほどか。

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「従来のICBMは高度1000kmから放物線を描き、目標へ飛んでいきます。一方のアバンガルドは、高度100kmという低い軌道から、一直線に滑空して飛来してくる。その速度はマッハ27に達し、探知できても迎撃が間に合いません。しかも、左右ジグザグに滑空するので、撃ち落とすのは非常に困難です」(軍事評論家の高部正樹氏)


アバンガルドの飛行距離は6000km以上で、ウクライナ全土が射程圏内に入る。

従来の防空システムでは対応できない

そんな中、米国政府は21日、迫りくる核の脅威に対抗し、ミサイル迎撃システム「パトリオット」をウクライナへ供与することを発表した。


しかし、それもアバンガルドの飛来速度には対応しきれない。


「これまでは、仮にウクライナへ核ミサイルが撃たれても、従来の防空システムで迎撃できたかもしれません。しかし、アバンガルドが配備されたとなると、話は変わってきます。ウクライナは喉元にナイフを突きつけられたような状態で、緊張はより高まっていくでしょう」(高部氏)

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ウクライナ東部のドンバス地方で劣勢が続いていたロシア軍だが、12月に入り、隣国ベラルーシ南部に兵力を移送。ウクライナ軍の総司令官は「'23年1月にも、侵攻当初の目的だった首都・キーウに再び進軍し、制圧しようとしている」と警戒感を示している。


2度目の首都制圧作戦に失敗は許されない。少しでも戦局が膠着すれば、プーチンは迷いなく最終兵器の発射ボタンを押すことだろう。


「週刊現代」2022年12月31日・2023年1月7日合併号より