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60%法治国家

「現代ビジネス」から転載。
数分前に、この記事についての論評を書いて仕上げをしようとした瞬間にパソコンに異常が起こって、文章が消えてしまった。偶然にそういうことが起こるものなのかどうか、私は知らない。
引用記事自体はすでに流布しているものなのだから、それ自体は「ネット検閲」をパスしていると思うのだが、その引用に妨害工作があるのかどうか、実験のために、もう一度同記事を使ってブログ記事をネット上に上げてみる。
ということで、私の前説は無しである。
引用記事自体で十分に興味深く、有益な内容だと思うから、広く拡散する価値はあるだろう。


(以下引用)赤字部分は私、徽宗による強調。(笑)と入れたくなるような正直な発言で、まさに、語るに落ちるとはこのことだ。




これじゃ待機児童ゼロなんて実現するわけがない!規制改革会議で見えた国民より社会福祉法人が大事な厚労官僚のホンネ

2013年05月24日(金) 長谷川 幸洋


長谷川幸洋「ニュースの深層」





横浜市が5月20日、待機児童ゼロ(2013年4月1日現在)を達成した、と発表した。これを受けた形で、21日には安倍晋三首相が横浜市内の保育所を視察し「横浜方式を全国に広げて5年間で待機児童ゼロを達成したい」と語っている。

待機児童問題は子どもを持ちながら働く母親だけでなく、父親にも切実な話である。子どもがいても夫婦で働く環境が整えば、少子化問題の解決につながる。働き手が増えるのだから、日本経済の活性化にも役立つ。

「横浜は保育所が整っているらしい」という話が広まって、通勤時間が長くなっても、わざわざ東京都内から横浜に引っ越す例もあるそうだ。「自分の税金はそういう街に払いたい」と人々が住む街を選択する。まさに「足による投票」である。

待機児童は2012年4月現在で2.5万人といわれる。だが、この数字は低すぎる。潜在的には「85万人」という推計がある。問題の裏側には何があるのか。

待機児童ゼロを実現した「株式会社参入」

私が委員を務める政府の規制改革会議でも、この問題に取り組んでいる。そこでの議論を通じて、私が理解したのは「ここにもやはり既得権益集団がいた」という事実である。そこで今回は待機児童問題のカラクリを紹介したい。

まず、横浜はなぜ待機児童ゼロを達成できたのか。勝利の鍵を握ったのは、保育所事業に対する株式会社の参入促進である。

横浜は10年には全国で最多の1552人に上る待機児童を抱えていた。そこから09年8月に就任したばかりの林文子市長の大号令で待機児童問題に取り組み、わずか3年でゼロ目標を達成した。

横浜市の認可保育所は03年時点で全267施設中、株式会社が設立したのは、わずか2つしかなかった。だが、13年には579のうち142が株式会社の運営になっている(http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130321/item4.pdf)。全体の数も増えているが、株式会社の伸びが著しい。

林市長はもともと外車販売のビー・エム・ダブリュー東京や東京日産自動車販売の社長を経験した企業経営者だ。保育所事業への株式会社参入には根強い反対論があるが、経営者出身の林市長にそんな偏見がなかったであろうことは容易に想像できる。

反対論は主に保育所を運営する社会福祉法人の関係者やその代弁者から出ている。たとえば「株式会社は利益優先」とか「失敗すれば、すぐ撤退する」といったものだ。ところが実態を見ると、むしろ社会福祉法人という存在のほうに問題が山積していた。

問題を放置してきた厚生労働省

そして本来、社会福祉法人を監督すべき立場である厚生労働省も問題解決に務めてきたどころか、むしろ放置し傍観していた。規制改革会議では「これでは法律無視の共犯関係ではないか」と疑われるような官僚の発言まで飛び出している。

まず社会福祉法人とは何か。

特別養護老人ホームや保育所運営など社会福祉事業を行うことを目的に、社会福祉法に基づいて設立された法人である。「社会福祉事業をする」という大義名分の下、所得税や法人税(収益事業分を除く)、不動産取得税、固定資産税などの非課税優遇措置を受けている。逆に、施設整備費用については国や都道府県から補助金を受けている。

税金を払っていないどころか補助金(原資は税金)をもらっているのだから、当然「財務は公開され、利益は社会に還元されている」はずだ。ところが、実態は闇の中だ。なぜなら肝心の財務諸表が公開されていないからだ。

民主党政権時代の規制・制度改革委員会に提出された資料(http://www.cao.go.jp/sasshin/kisei-seido/meeting/2012/togi/life/121128/item0.pdf)によれば「社会福祉法人1施設(特別養護老人ホーム)当たり3億円の内部留保がある」という調査結果がある。これがなぜ問題かといえば、事実上、同族経営のような法人が相当数あって、利益の一部が不透明な形で個人の所得などに消えているのではないか、という疑惑が消えないからだ。

キャノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹が実施した約1200法人対象の調査(上記資料にある)によれば「設立の主目的が相続税対策と補助金獲得にある」「背後に営利目的事業体があり、社福からの資金流出が疑われる」法人が多数ある、という。

つまり、もともと彼ら自身が利益優先なのだ。

そうだとすると、社会福祉法人の関係者が株式会社の参入に抵抗する真の理由が分かる。株式会社が保育事業に参入して、待機児童が減ってしまっては、自分たちの利益が損なわれる。待機児童とは、社福にとっては大事な「お客さん」なのだ。いつまでも順番を待ってもらっていたほうが都合がいいのである。


その利益の源泉はといえば、かなりの部分が非課税措置と補助金という税金投入から来ている。なんのことはない。「株式会社は利益優先だからだめだ」と言いながら、実は自分たちこそが優遇措置の特権であぐらをかいているのである。

しかも、問題は厚労省が実態解明にまったく後ろ向きなことだ。

規制改革会議で飛び出した役所のホンネ

規制改革会議では、保育所への株式会社参入が進まない背景に社会福祉法人の抵抗があるとみて、多くの委員が「実態解明のために、まず社福の財務諸表を公開せよ」と迫った。ところが、厚労省の担当者は「関係者にまず周知しないと。関係者とよく相談して早めに公表させていただくという形で」などと逃げ回った。

委員「関係者とは何のことか」

厚労省「これは団体とか、そのへんにもお話をして」

委員「なぜ団体に話をしなければならないのか。財務諸表は行政庁にある。彼らのものではない。財務諸表は隠すためにあるのではなく、世の中に見せるためにあるのを知っているか。だから了解をとる必要はまったくない」

厚労省「不特定多数の投資家から投資を得て運営していく企業、これは当然(財務諸表を)出していくことだと思うが、社会福祉法人というのは不特定多数の投資家を相手にするというよりは公的なお金を入れているので、その限度できちんと透明化を図っていくという問題であったわけです」

委員「だから、我々納税者がお金を払っているのだから、全国に見せるのは当然だ」(2013年5月2日の会議、関係資料はhttp://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130502/agenda.html)

これで分かると思うが、驚くべきことに、厚労省は「公金が入った社福の財務公開は民間企業並みでなくてもいい」と言わんばかりの認識なのである。話はまったく逆ではないか。委員の再三にわたる追及の末、厚労省は13年度分から財務諸表を公表する姿勢に転じた。だが、それでもこんなやりとりがあった。

委員「『公表を行うこととし』というのは、必ずしも義務付けを意味していない。出してこないところが出る可能性を残すということか」

厚労省「仮に法律で義務付けしたから、全部出るとは限らないと思うし、どういった形で実効的な担保ができるか、その辺を十分考えて検討したい」

別の委員「いまの発言、法的に義務付けても実際に行われるか分からないというのは、私は聞き間違いかと思った。担当者がそういう認識でいるとは」

ここで、出席していた弁護士出身の稲田朋美規制改革担当相がたまらず割って入った。

稲田大臣「法的な義務付けをしてもやるかどうか分からないというのは、まさしくやらせなければならない行政が、その権限行使をしないと聞こえたが、もう一度、整理してお答えいただきたい」

厚労省「誤解を招いたかと思う。労働安全衛生法でも監督署が回ってみても、60%くらいの実施率という例もある。必ずしも、きちんと法律があるからといって守られるわけではありません。事業者の理解をいただきながら、やっていく必要がある」(2013年5月15日の会議、関係資料はhttp://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130515/agenda.html

厚労省はこういう姿勢なのだ。これでは事実上、あらかじめ法律違反すら容認して、社福の利益擁護に回っているとみられても仕方がない。

規制改革会議は冒頭の写真撮影を除いて、会議は非公開になっている。後で議事概要が公表されるが、残念ながら、ここで紹介した部分はまだ公表されていない。私は1月25日付コラム「アベノミクス成功のカギを握る『規制改革会議』で私がネット公開を要望した理由」で随時、議論の模様を伝えると約束した。

会議がどんな仕事をしているか、国民に伝えるのも私の役割の一部だと思う。今回は第1弾としたい。



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