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徽宗皇帝のブログ

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TPPを見守る中国とロシアの姿勢


SANKEI EXPRESSから転載。
TPPについてはあらゆるブログやニュースで論じられ報じられているから、少し違った角度から問題を見てみる。それはTPPに対する中国とロシアの考えはどうかということだ。
下の佐藤優の文章は、TPP反対派は親中国派である、というずいぶん単純な見方をしているが、べつに反TPPだから親中国派ということにはならない。中国をシナ呼ばわりするのが好きな右翼ブログでもほとんどがTPPには反対している。つまり、TPPとは「経済的元寇」なのである。国難なのだ。それこそ、国が滅亡するかしないかくらいの問題なのだ。とはいえ、もはや進路は決定的であり、野田総理が誕生した時点で「アメリカの意思」が実現されることは既定路線であったわけだが。
だから、TPPについては、もはや論じても空しいのだが、世の中で絶対に確実なのは、世の中に絶対は無い、ということだけだから、事態の推移を見守ることにしよう。
それはともかく、佐藤優がなんとなくTPP肯定派のようなニュアンスに見えるのは、私の錯覚だろうか。とすれば、彼の愛国思想もずいぶん怪しいものだと思われる。


(以下引用)


 一部の新聞が、USTR(米通商代表部)高官による、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加を認めるためには米国の政府と議会の非公式な事前協議が必要なので、ルール策定作業への日本の参加は時間的に難しいという趣旨の発言を記録した政府の秘密指定文書があると報じた。日本に有利な条件を得るために11月12~13日にハワイで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会合で、野田佳彦首相がTPPへの参加表明を行うというTPP推進派の主張が根拠を失ったという論評も見られる。また、政府が米政府と議会の事前協議という重要情報を秘匿していたのではないかという批判も出ている。

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 これらの論評や批判は、言いがかりの類だ。USTRは米国の業界の利益を露骨に代弁する。TPPをめぐって、USTRはいわば中東のバザールにおける絨毯(じゅうたん)商人のような交渉を行っているにすぎない。仮に米国の国内事情で、TPP交渉への日本の参加が遅れ、ルールの策定に加わることができないような状況になるならば、日本はTPP交渉から離脱すればよいだけのことである。交渉過程において、米国側が「掛け値」をしていることを日本政府が逐一マスメディアに流し、日本の立場を弱める必要はないと筆者は考える。

 日本政府内部で、TPPに反対する勢力には2つのグループがある。第1は、農業団体や医師会などの業界団体である。このグループが自らの利益を擁護するために動くのは、当然のことだ。

 第2のグループについて、マスメディアはあまり扱わない。TPPに参加すると中国との提携が難しくなると考える東アジア共同体を支持するグループだ。こういう考えを持つ政治家や官僚が少なからずいる。中国は水面下で、「TPPに日本が参加しないならば、レアアース(希土類)を安定的に供給する」「日本の米を買う用意があるので、TPPには参加しないでほしい」という働きかけを強めている。TPPに日本が参加し、日米を基軸とした新秩序がアジア太平洋地域に構築されると中国の帝国主義政策が推進しづらくなると中国指導部は認識している。

 ■日米同盟の深化

 ロシアもTPPの本質が中国に対する牽制(けんせい)であることを理解している。11月2日、国営ラジオ「ロシアの声」(VOR)が放送したTPPに関する論評で、以下の内容が興味深い。

 《VOR記者はロシア戦略調査研究所のウラジーミル・テレホフ研究員に話を聞いた-

 「(前略)国内の農業生産者の抵抗はあるだろうが、日本はやはり、この連合体に入ると思う。そのことを、アジア太平洋地域の日本の鍵を握るパートナーであるアメリカも強く主張しているからだ。(中略)加盟のプラス面については、これはまだ疑問だ。日本政府は、競争力を引き上げる必要のある領域の『尻を叩(たた)く』ことになると言っているが、それがどんなプラスをもたらすのか確信はない。しかしおそらく、日本には選択肢はない。TPPは単なる経済同盟ではなく、より深遠な考えを持った統合体なのだ。何といっても日本は、動揺なしにはすまないだろうが、TPP参加の道に踏み出すだろう。(以下略)」

 ロシアのイーゴリ・シュヴァロフ副首相も、極東ウラジオストクでの太平洋経済会議で「わが国がTPPに加盟する可能性は排除できない」と発言した。(中略)今のところ中国は、TPPに対する自分たちの態度を全く示していないが、これは奇妙でかつ興味深い。なぜなら、アジア太平洋地域をどう統合していくかは、米中の利益の相関性と、その両立の可能性に関わる非常に重要な問題だからだ》(VOR日本語版HP)

 ロシアは、TPPを日米同盟の深化であると認識している。その上で、対中牽制のためにTPPを利用する可能性をロシアは探っている。

 (作家、元外務省主任分析官 佐藤優/SANKEI EXPRESS)

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