忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

TPP問題と選挙公約と民主主義
水島朝穂早大教授は、学者には珍しく、権力サイドではなく民衆サイドに足を置いた貴重な存在だと私は思っているが、その水島教授がTPP問題について下記のように発言している。新しい内容ではないが、TPPがアメリカから日本へのの「命令」だというのが、この分析からもわかる。

菅総理が所信表明演説で、「増税」と「TPP参加」を明言したようであるが、我々国民は民主党を選んだときに、そんなことを聞いただろうか?そういう「マニフェスト」だったとしたら、はたして民主党に投票しただろうか?
選挙公約を守るか無視するかは、民主主義の根幹に関わる問題なのである。代議士が(あるいは政党が)公約を守らないことは、選挙民への裏切りであり、選挙そのものを無意味にしてしまうもの、つまり民主主義を壊滅させるものなのである。国民主権という日本国憲法が空文化されてしまうということなのである。



(以下、「阿修羅」投稿記事より一部転載)



TPPとは何か。昨年10月1日の所信表明演説で、この言葉が唐突に使われた。それまでは、知名度はきわめて低かった。シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国で、2006年5月に発効した関税全廃、例外品目のない自由化を原則とする自由貿易協定のことをいい、FTA(自由貿易協定)や EPA(経済連携協定)よりも徹底した自由化の合意である。これら4カ国は中小国であり、関税を全廃しても大きな問題はない。日本はニュージーランドと FTAを結んでおり、いまなぜ、日本があわててTPPに参加しなくてはならないのか。

 端的に言えば、TPPが問題なのではない。2009年11月、オバマ米大統領がTPPへの関与を表明した瞬間、4カ国の連携協定だったTPPの意味が変わったのである。それは「米国主導の一大経済連合」となり、「小国の軒先を借りて帝国の世界戦略を追求する」枠組に転化したと表現されている(田代洋一『世界』2011年1月号参照)。

 「黒船」とか「第三の開国」(菅首相)とか、「扉は閉まりかけている」(前原誠司外相)とか、うわずった言葉が政治家の口から飛び出す。この状況には既視感がある。小泉「構造改革」の際、「官から民へ」のワンフレーズ政治が跋扈したことは記憶に新しい。反対する人々を一緒くたに「抵抗勢力」にしてしまうパワーこそまだ欠けるものの、メディアにはすでにそうした兆候があらわれている。

 元旦の『読売新聞』社説は「大胆な開国で農業改革を急ごう」と、年頭には珍しく農業問題をもってきた。「日本が交渉に乗り遅れれば、自由貿易市場の枠組みから締め出されてしまう。後追いでは、先行諸国に比べて不利な条件をのまざるを得なくなる」。相変わらず「バスに乗り遅れるな」と煽る非理性的論調は変わらない。「農産物の自給を確保することは重要だが、農業が開国を妨げ、日本経済の足を引っ張るようでは本末転倒になる」。どちらが本末転倒だろうか。農産物の自給率低下を前提とした、おかしな「開国」論こそ本末転倒ではないか。

 この種の論法は、学者のなかにも見られる。ある人は、「(TPPが)日本の輸出企業にとって大きなビジネスチャンスとなる」というメリットを強調しつつ、他方で「農産物の輸入が増加して国内生産が減り、経営が厳しくなる可能性もあるが、やむを得ない。それよりも、輸入品に対抗するために生産性を上げ、新商品を開発し、輸出も視野に入れた強い農業が育つことが期待される」と主張する(浦田秀次郎『産経新聞』2010年12月24日付オピニオン面)。「やむを得ない」と、いとも簡単に言うが、日本農業への打撃はきわめて深刻である。「強い農業」という言葉も怪しい。輸出しても売れる一部のブランド農産物もあるが、もともと農業は生活者の「食」を支えるもので、「商品」という市場の論理だけでは割り切れない。食料自給率の問題しかり、口に入れるものが、輸出入で遠距離を行き来しても、腐らず、見栄え良い「商品」となるために施される「加工」(薬剤等)の安全面なども、憂慮されるだろう。

 農林水産省の試算では、農産物の生産減少額は4兆1000億円。食料自給率は40%から14%に低下し、農業の多面的機能の喪失額は3兆7000億円にのぼる。「商品」としての売り上げにとどまらない「なりわい」としての農業は、地域社会や環境など多方面にわたる影響を及ぼしているから、この喪失は国のあり方にもかかわる。国内総生産(GDP)の減少額は7兆9000億円に達し、就業機会の減少数、つまり離農や失業は340万人になる可能性も指摘されている。

 農産物の減少はいうまでもなく、水産物への影響も深刻である 。ヒジキの生産量の減少率は100%、ワカメは90%で壊滅状態である。こんぶ70%、のり68%、ウナギ64%、サケ・マス63%…。水産物の生産減少額の合計は4200億円に達する 。

 民主党代表や国交相の時代から「破壊的軽口」が問題となっている前原外相は、「日本の国内総生産(GDP)の割合で1.5%の第1次産業を守るため98.5%が犠牲になっている」と言い切った(『日本経済新聞』2010年10月20日付9面)。どこの国でも、第1産業の割合はそう高くはない。米国でさえ1.1%。ドイツや英国は0.8%である。第1次産業のGDP1.5%を「些細な数字」として、経済を単純な多数決的発想で考えたとすれば、きわめて不適切な比較である。

 菅首相はやたら「開国」という言葉を使うが、これもまったくわかっていない。日本の農産物の平均関税率は11.7%で決して高くはない。米国の5.5%は異常に低いにしても、EUは19.5%で日本よりずっと高い(田代前掲参照)。端的に言えば、TPPは、米国との関係で関税障壁を完全撤去する、米国を相手としたFTAというのが本音だろう。

拍手

PR

コメント

コメントを書く