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徽宗皇帝のブログ

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吉田証言は「国際社会」の慰安婦問題批判と無関係
「LITERA」から転載。
「エンジョウトオル」氏は、私が注目している新進の論客の一人である。もしかしたら新進ではなく私が知らなかっただけかもしれないが、彼が書く「リテラ」記事は、その鋭い分析力と見識で、群を抜いている。下記記事でも、朝日誤報問題と「国際社会の批判」とを強引に結びつける(偽)右翼知識人(というよりマスコミ人)たちの小ざかしい策謀を見事に一刀両断している。(いちいち「右翼」の前に「偽」を付ける必要があるのかどうか、私自身迷っているのだが、本当に日本を愛するがゆえの右翼というのも存在する、と仮定して、とりあえず安倍政権とその取り巻き知識人たちは「偽右翼」としておく。)
なお、私は「国際社会」など政治家やマスコミの都合で使われる口実でしかないというあいば達也氏の意見に同意する者であり、また国連などユダ金のために存在する「国際機関」の一つでしかないと思っているが、その影響力自体は無視できないので、エンジョウトオル氏がこうしてマスコミの詐術を解き明かしてくれた功績は大きいと思う。



(以下引用)

朝日誤報と国連の批判は無関係…安倍政権の慰安婦問題スリカエを暴く

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2014.09.17
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吉田証言に続きクマラスワミ報告まで?(イメージ画像は『朝日新聞』8月5日朝刊より)

 彼らはあの報告書をちゃんと読んでいるのか。最近の慰安婦問題をめぐるメディアの雄叫びを聞いていると、そんな疑問を抱かざるをえない。


 吉田証言の取り消し以降、勢いづいている産経、読売をはじめとする保守メディアは朝日の全面謝罪にも納得せず、今度は「朝日の誤報が国際社会の誤解を生んだ」「国連のクマラスワミ報告撤回を要求せよ」という大合唱を始めた。


「クマラスワミ報告」というのは1996年に国連人権委員会が採択したスリランカの女性法律家、クマラスワミ氏による慰安婦問題の調査報告書のこと。日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」と認定して日本に法的責任をとることを求めたことから、「河野談話」とともに右派陣営から目の敵にされてきた。そして、このクマラスワミ報告の「性奴隷」という認定に根拠を与えたのが、朝日新聞の「吉田証言」報道だった。つまり、朝日が「吉田証言」を取り消したのだから、クマラスワミ報告も無効だし、朝日はその責任を取れというのが、読売、産経をはじめとする保守メディアの主張なのだ。


 いや、メディアだけではない。菅義偉官房長官は9月5日の記者会見で「(クマラスワミ)報告書の一部が朝日新聞が取り消した(吉田証言に関する)記事の内容に影響を受けていることは間違いない」とわざわざ強調。「朝日新聞は記事を取り消したが、慰安婦問題に関して国際社会で誤解を生じている」とまで言っている。


 そして、この会見を受けた読売は〈世界の誤解、払拭多難…「性奴隷国家」吉田証言から〉などと大々的に報じた。


 安倍晋三首相もすかさず「夕刊フジ」のインタビューで「(朝日の報道で)多くの人が悲しみ、苦しみ、国際社会において日本の名誉が傷つけられている」と、まるで朝日の報道がなければ国連の報告書そのものが存在しなかったように語っている。


 だが、これらの主張はどう考えてもおかしい。それは、実際にクマラスワミ報告を読めば明らかだ。ちなみに「クマラスワミ報告書」の全文日本語訳はアジア女性基金のホームページにアップされているので誰でも読める。


 たしかにクマラスワミ報告に「吉田証言」が引用されているのは事実だが、それはA4判50ページ近い報告書のうち数行にすぎない。しかもそれは、本題に入る前の「歴史的背景」という項目で先行調査のひとつとして紹介されているだけで、報告書の根幹ではない(吉田証言と同様に信用性が問題視されているジョージ・ヒックスの著作もこの「歴史的背景」の項目で引用されている)。


 クマラスワミ報告書が立脚しているのは、報告書の正式タイトルにある「朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査」からもわかるように、元慰安婦や元兵士らからの聞き取りである。吉田証言が虚偽であっても、クマラスワミ報告書の有効性とは何の関係もないのだ。



 それだけではない。読売や産経はあえて書いていないが、クマラスワミ報告には「吉田証言」に対する異論もきちんと示されている(11ページ)。


《慰安所が設置された状況や軍の性奴隷とするために女性をどのように集めたかについて、歴史学者から情報を得た》として、《千葉大学の歴史学者秦郁彦博士》の説を紹介している。秦氏が、“慰安婦狩り”が行われたとする済州島で調査したが証拠はなかったということや、「慰安婦犯罪の加害者は、朝鮮人の首長、売春宿の所有者、少女たちの両親であった」「慰安婦は平均的な兵隊の給料の110倍受け取っていた」という秦氏の見解も紹介され、いわゆる「強制連行」の有無については両論併記の形をとっているのだ。


 そして、《第二次大戦までの期間と大戦中に行われた軍性奴隷のリクルートについて書こうとすると、実際にどのような女性を徴用したかについての資料が残されていなかったり、公の文書が公開されていないという最大の問題にぶつかる。「慰安婦」のリクルートに関する証拠はほとんどすべて、被害者自身の証言に基づく》とも明記されている。


 つまり、この報告書はもともと狭義の強制連行の有無を特定できていないことを認めていたのである。


 クマラスワミ氏が日本の慰安婦制度を「性奴隷」と認定したのは、主に慰安所への軍の関与と慰安婦たちの被害実態によるものだった。報告書は元慰安婦への聞き取りによって明らかになった慰安所の実態を詳述している。


《(工場での仕事だと言われたが)工場はどこにもないことがわかりました。女の子たちはそれぞれ小さな部屋をあてがわれました。中には藁布団が敷いてあって、ドアには番号がついていました。(中略)二日待たされた後、軍服を着て帯剣した兵隊が部屋に入ってきました。『言うとおりにするか、どうだ』と言うや私の髪を引っ張り、床に押し倒して脚を広げろと命じました。私をレイプしたのです。その兵隊が行ってしまうと、外に20人か30人の男たちが待っているのが見えました。その日全員にレイプされました。それ以来、私は毎夜、15から20人に暴行されたのです》


《最初の一年間は、他の朝鮮人の少女たちと同様に、高級将校の相手をさせられましたが、時が経つにつれ、私たちが次第に『中古品』になってくると、相手は下級将校になりました。病気に罹った女性はたいてい消されました。妊娠を避けるため、あるいは妊娠しても必ず流産するよう、『606号注射』もうたれました》


《中国の吉林省に着いた最初の日に、日本兵から五つの命令に従わなければ死ぬぞと言われた。天皇の命令、日本政府の命令、彼女が属している陸軍中隊の命令、中隊の中の分隊の命令、そして彼女が働くテントの保有者であるその兵隊の命令である》


 繰り返すが、報告書は吉田証言を根拠にして、従軍慰安婦を「性奴隷」としたわけではなく、こうした聞き取りに立脚しているのだ。

 また、「性奴隷」という用語についても、クマラスワミ報告書は強制連行をしていたからこの言葉を用いたわけでないことをはっきりと書いている。報告書は、東京訪問中に日本政府から慰安婦に「性奴隷」を用いるのは不正確であると指摘されたことを明かした上で、


《戦時中、軍隊によって、また軍隊のために性的サービスを強要された女性たちの事例は軍性奴隷制の実施であったと、本特別報告者はみなしている》


《「慰安婦」の実態は、関連国際人権機関および制度が採用しているアプローチに従えば、明確に性奴隷制でありかつ奴隷に似たやり方であるという意見に立つものである》


 と反論している。報告書が問題にしているのは、慰安所に対する軍の関与と軍の統制、つまり慰安婦たちの自由と自主性が著しく奪われていたことであり、強制連行の有無とは関係なく、国連の定義に従って性奴隷と認定した、ときちんと説明しているのである。


 いったいなぜ、これが「吉田証言を根拠に性奴隷と認定された」ことになるのだろうか。


 読売や産経の記者、そして菅官房長官や安倍首相はこの報告書をきちんと読んでいないのか。いや、そんなはずはない。彼らはおそらく、このクマラスワミ報告書に吉田証言を否定する意見が書かれていることや、性奴隷という認定の根拠が吉田証言ではないことを知っていたはずだ。知っていて、それを意図的に無視し、「吉田証言がクマラスワミ報告書に影響を与えた」(菅官房長官)という捏造を行ったのである。


 なぜか。答えは明らかだ。クマラスワミ報告書の根幹をなす直接の聞き取り証言は今のところ完全にくつがえす材料を見つけるのが難しいため(推測によるでっちあげ批判は行っているが)、朝日が誤報を認めた吉田証言だけを抜き出し、その吉田証言とともに慰安婦という「日本の恥」を葬り去ろうとしているのだ。そして、仇敵の朝日をさらに追いつめる。全体の文脈を無視して、ほんの数行の吉田証言だけをクローズアップするこのやり方は福島原発事故の吉田調書報道で朝日が批判を受けた「事実の切り貼り」そのものではないか。朝日に対して、読売や産経は〈批判回避へ論点すり替え〉〈また問題のすり替えとごまかしか 朝日〉と批判しているが、読売と産経、そして安倍政権こそが論点をすりかえて、従軍慰安婦そのものを封じ込めようとしている。


 実はこれまでも、歴史修正主義者や保守メディアはこうした手口で慰安婦問題を巧妙に誘導してきた。「銃剣を突きつけての狭義の強制連行のみが問題」と自分たちに都合のいい定義を勝手にデフォルトにして、それを否定してみせることで、慰安婦制度そのものの存在を隠蔽してきた。

 そして今回、日本の最高権力者と最大の発行部数をもつ新聞が手を組んだ大キャンペーンによって、この情報操作はこれまでにない大きな効果を発揮している。大衆の間には「従軍慰安婦自体が朝日の捏造だった」という認識が広がり、「すべての慰安婦が自由意志で志願した娼婦」という定義が“真実”として流通している。


 海外では絶対に通用しない論理だが、しかし、国内ではそれが常識になってしまったのだ。そして、少しでも異論をはさもうものなら、有無を言わさず「非国民」「反日」と攻撃される言論状況ができあがりつつある。


 しかも、勢いづいた右派陣営の主張はさらにエスカレートしている。9月15日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と作家でNHK経営委員の百田尚樹氏、そして「WiLL」花田紀凱編集長がパネラーをつとめる「朝日慰安婦報道が崩した日本の誇りを取り戻そう!」というトークショーが開かれたが、3人はこぞって朝日とクマラスワミ報告を徹底批判。花田編集長の「これからの主戦場は国連だ。国連を脱退するくらいの覚悟でやれ」という発言も飛び出し、大いに盛り上がったという。


 とうとう国連脱退まで……もはや言葉もない。

(エンジョウトオル)



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