「混沌堂主人雑記(旧題)」から転載。
(以下引用)
(以下引用)
倫理道徳の復興なくして、社会の復興無し。
2022 - 12/09 [Fri] - 17:43
つながっているこころ 2 より
上記文抜粋
・・・・・・・・・・・・・・・
プーチンはロシア国民の教育者になりたかった。プーチンの考え方
・・・・・・・・中略・・・・・
ロシアとウクライナに関する話で一番信用できる
伊藤貫さんのお話からプーチンの考え方についてまとめました。
まとめたと言ってもほとんど書き起こしなので時間がかかってしまいました。
25分以降からです。
【伊藤貫の真剣な雑談】第7回「文明の衝突とロシア国家哲学」
プーチンの考え方
プーチンはイデオロギーに動かされて国際政治をやる人間では無い。
現在CIA長官をやっているウィリアムバーンズは、
CIA長官の前に中露大使をやっていてプーチンと何十回も議論した。
プーチンはアメリカの政治家やアメリカのマスコミが言うようなタイプではなく、
情報を非常によく知っていて、用心深く、理性的な人間であると、
感情的な人間ではなく、常にリスクを考えて動く人物との評。
十分にリスクを考えて動くような人物であるプーチンが
今回の戦争はやらざるをえないと去年決定した。
なぜそこまでプーチンが追い込まれたか。
現在でもロシア国民の8割以上が今回の戦争に賛成しているのに、
日本、ヨーロッパ、アメリカのマスコミはそのことを全く伝えない。
14パーセントほどのロシアの反戦の声を大量に伝える。
これらの報道を見ている限り、
プーチンがなぜ今回のこの戦争はやむなしと、
考えるようになったかを彼らは全く理解できない。
裸で馬に乗ったり、クマ退治したり、オートバイに乗ったりと、
マッチョなイメージで悪役を演じてみせているが、
ところがプーチンの履歴を調べると、
ものすごく辛抱強くて努力家である。
プーチンの実家は貧しい家庭で、
お父さんは中学校卒でお母さんは小学校の学歴しかないけれど、
プーチンは地元の公立高校へ通い、トップの成績だから、
色んな大学が無料で大学に入れてくれると言ってくれたけれど、
プーチンはペテルスブルク大学(当時のレニングラード大学)で
ないと嫌だと、競争率40倍のペテルスブルグに入学した。
毎日柔道の練習をやる以外、一日中勉強ばかりしていた。
非常に無口で静かな学生で柔道をするか勉強をするかで、
悪役のマッチョのイメージとはかけ離れていた。
大学でも成績がよく、そしてKGBにリクルートされた。
ドイツに派遣され、そこで情報分析官をやっていた。
89年にベルリンの壁が崩れ、東西冷戦が消え、
KGBもガタガタになってしまった。
そこでプーチンはこれ以上KGBで情報分析官を
やっていてもしかたないと考えるようになった。
ペテルスブルグ大学に戻って法学部の教授になろうとした。
成績が良かったので大学側も戻ってくればいいと、
その前に一時的に大学に所属して博士論文を書きなさいと、
書き終わったら法学部の教授にしましょうということになった。
(その後、何もなかったら今頃、プーチンはペテルスブルク大学の
法学部の教授をしていた。本来は学者タイプの人間だったから)
論文を書いている最中に、
サプチェクという有名な教授が
ペテルスブルクの選挙に出たら
市長に当選してしまった。
法学部の教授ではあるけれど政治は素人。
だから信頼できる部下が欲しかった。
彼はプーチンに目をつけ、
「君は以前、KGBに勤めていたので色んなことを知っているはずだから
論文を中断して、僕の下で働いてくれ」と頼み込み、
その結果、プーチンは副市長になる。
副市長として働きだすと、プーチンには行政手腕があり、
事務処理能力が非常に優れていた。
”ペテルスブルクにプーチンあり”と言われるほどすごかったそうです。
ペテルスブルクで問題が起きると、プーチンのところにいけば解決してくれると。
プーチンとしては、
最初、KGBの情報分析官が向いていると思っていたけれど、
KGBがダメになり、法学部の教授になろうとしたけれど、
次に副市長になってみたら、自分は行政を裁く行政官僚としての
能力が非常に高いと思った。副市長の仕事のほうが楽しいと思った。
副市長として3年くらい働いていたら、
”ペテルスブルクで一番できの良いのがプーチンだ”
という声がモスクワに届き、人材不足のエリツィン政権が
プーチンを引き抜き、モスクワに連れて行った。
その1年後か2年後にはKGB(FSB)の長官になり、
その翌年には大統領代行になり、
その半年後には大統領になった。
(プーチンらしい仕草と目つき)
プーチンは元々学者肌で、朝早くオフィスに来て
昼ごはんを食べないで仕事ばかりしていた。
仕事している時はほとんど誰とも口をきかないで、
静かに黙々と仕事をしている。
何か争いがあっても決して大きな声を出さない。
非常に冷静で落ち着いた声で議論をして決して感情を表に出さない。
欧米のメディアのいうイメージと、
プーチンの周囲で働いてる人のイメージが全然違う。
なんでこういうことを言うかというと、
ものを考えるには3つのレベルで考えなきゃいけない。
それはどういう意味かというと、
一つは価値判断、世界観のレベル、フィロソフィカルなレベル。
フィロソフィカルなレベルそれからパラダイムレベル、
それからポリシーレベル、
この3つの段階を分けて考える能力が必要だと伊藤さんは言う。
プーチンという人間はこの3つのレベルでものを考え、
発言できる能力の持ち主だと。
プーチンは、
1990年代のロシアが混乱しているだけではなく、
ロシア民族自体が混乱していると言う。
共産党体制をやって大失敗をして、
経済規模は半分になってしまって、
80年代のロシアの男性の平均寿命は67歳だったが、
1990年代には57歳になってしまった。
たった10年で平均寿命が10年も落ちてしまった、大混乱な状況と。
何百万人ものロシア人が栄養失調で餓死している。
そういう国で、しかもどういう政治思想、どういう道徳思想、
どういう道徳思想が正しいか、
どういう文化を持つべきか、
どういう歴史解釈を持つべきか、
どのような政治思想を持つべきか、
哲学や宗教でどういう立場を取るべきか、
ということが全て混乱してしまったと。
プーチンはこの3つのレベルで
ロシアを立て直す必要があるというふうに考えた。
そういうふうに認識できるだけで、
プーチンは優秀だと思うと伊藤さん。
なぜならば日本の政治家にしても
アメリカの政治家にしてもヨーロッパの政治家にしても、
この3つをきちんと分けて考えないと安定した結論は出ないと
言うことさえほとんどの政治家は認識していない。
プーチンはそれを認識していて、
政治思想、政治思想史、哲学史に関しても知識がある。
憲法哲学、国際法にも知識があって、
だからペテルスブルク大学の法学部の教授に呼ばれた。
政治思想史、憲法、国際法、行政法を
きちんとマスターした知的な人間として、
ロシアを立て直すにはどうしたら良いかと
いうふうに考えるようになったと。
なぜこのような説明をしているかと言うと、
アメリカとの対立が直接関係するからです。
アメリカが一方的に押しつけてくる外交政策、経済政策、歴史認識、
これらに関してどう反応したらいいかと言うのは、
きちんとものを考えられる人間じゃなきゃ反論できないわけです。
では日本の政治家には絶対無理なことです。
日本の政治家は3つのレベルで考えることすら全くできない。
絶対できない。それをプーチンはやっている。
有能で優秀な政治家や指導者に必要な3段階レベル、
①フィロソフィーレベル
②パラダイムレベル
③ポリシーレベル
プーチンはこの三つのレベルでロシアを立て直す必要があると
これを認識してできるだけでもかなり優秀。
プーチンが何をやりだしたかと言うと、
ロシアをもう一度まともな国にするには、
どういう哲学的な視点を持つべきか、
価値判断というのは哲学からくるんですね。
どういう生き方が望ましいのか、正義とは何か、
国家の任務というは何か、文明の違いとは何かというのは
これは哲学的な議論になっちゃうわけですね、
プーチンはこういうレベルで何らかの結論を見つけようとした。
何をやりだしたかというと、きちんと勉強をして
ロシア人にとって望ましい歴史観とは何か、
望ましい価値判断とは何か、
現代の国際社会がどういう方向に向かっているか・・・。
プーチンはアイデンティティ・ポリティクスも嫌いだけど、
グローバリズムで多国籍企業とウォールストリートの金融業者が
短期間に金儲けできればいいと言うやり方もよくないと。
そのようなやり方を受け入れるとロシアがバラバラになってしまう、
ロシア国民がバラバラになってしまうとプーチンは考えた。
*注:「アイデンティティ・ポリティクス」とは、社会的不公正の犠牲になっているジェンダー、人種、民族、性的指向、障害などの特定のアイデンティティに基づく集団の利益を代弁して行う政治活動のこと。
しかもロシア国民はそういうものを受け入れる体制ができてない、
人間の生き方として受け入れるのは好ましくないと考えた。
(世界中の国でキリスト教道徳に対する反発が強まってますけれど、最近はアメリカでも教会に行く人がどんどん減っている。ヨーロッパでは30〜40年前からキリスト教離れをしているけれど、アメリカでもキリスト教離れが進んでいる。)
プーチンは人々は宗教を失って道徳観や価値判断をどこに求めるのか、
それをきちんと考えた上でキリスト教を捨てているのかと考える。
プーチンは自分の欲望、経済的な欲望、それ以外の欲望を満ただけに
人間は存在しているという考え方に反対。
彼は義務感に強い人間で、人間は金儲けのために自分の欲望を
満たすために生きればいいという事では無いだろうと。
彼は何をやったかと言うと、
単にロシアの政治権力をだけでなくて、
他の政治家を相手に1種のナショナルティーチング、
要するにロシア人はどういう文明を目指すべきか、
どういう政治思想を目指すべきか、
ロシア人がもし哲学を持つとしたら、
ロシア人の哲学というのはどういう流れの哲学を基盤として
哲学的な見解を持つのが望ましいのかと、
そういうクソ真面目なことを言い出した。
プーチンがロシア人に勧めてきた哲学者・思想家。
ウラジーミル・セルゲイェヴィチ・ソロヴィヨフ
(プラトンとカントの考えに一番賛成している
プラトン派とカント派とキリスト教の道徳をミックスした考えを提唱)
プーチンはソロヴィヨフの著作を読みスピーチで何十回も引用し、
ロシアの国会議員と各州の知事にソロヴィヨフの著作を読めと命令を出す。
その次にプーチンが勧めたのは、
ニコライ・ベルジャーエフ
(ヨーロッパの哲学とロシア正教の神学、特にドストエフスキーの影響を受けた人)
次に
イワン・イリイン
(若い頃はヘーゲル哲学の専門家で、、政治的な保守主義とロシアのナショナリズムとヘーゲル哲学をミックス)
プーチンは非常に知的なこの3人の哲学者の著書を
ロシアの国会議員と知事に読むことを義務とした。
読んで読書会をやろうと、議論をしようとプーチン、
独裁者から読めと言われるとみんな読まなくてはいけないんです。
ロシア国民の再教育。
プーチンは今でもロシア国民の教育家として行動している。
プーチンの尊敬する政治家はド・ゴール。
ド・ゴールもプーチンも国民の教育者を目指していた。
ボリシェヴィキに共産党革命をされ、
ゴルバチョフとエリツィンはアメリカに100%もてあそばれ、
おもちゃにされ、徹底的に利用されて、
エリツィン時代にロシアはボロボロになってしまった。
悲惨な状態のロシアを立て直すためには
ロシア人の哲学レベル、宗教レベル、文明感、
ロシア人は一体どういう文明を築こうとしているのか、
ロシア人の価値判断力、道徳判断力を持てるとしたら、
その基盤は一体何なのだと。
そこまで考えてプーチンはロシアの政治をやっている。
プーチンはソルジェニーツィンと仲が良くて、
イワン・イリインの著書を勧めたのはソルジェニーツィンと言われている。
プーチンが最も引用するのはイワン・イリインの言葉。
アレクサンドル・ソルジェニーツィン
プーチン大統領とソルジェニーツィン
当時すでに亡くなっていた
ソロヴィヨフとベルジャーエフとイリイン、
そして存命中だったソルジェニーツィンの4人を非常に頼りにして
ロシア人の価値判断から国家を立て直そうとした。
4人は全員アメリカ文明に対して非常に批判的だった。
4人は単純なスラブ主義者(民族主義者)とも対立している。
プーチンが尊敬している思想家・学者は
単純な民族主義者ではない。
ソルジェニーツィンの父親はコサックで、
母親はウクライナ人(東部)だったので、
ロシアとウクライナが別の国になることは大反対だった。
ベラルーシとウクライナはロシアから離れてはならないと言っていた。
それが以外のソビエト連邦に所属していた共和国は全部独立していいと。
バルト諸国にしてもカザフスタンにしてもタクメニスタンにしても
キリギスタンにしてもグルジアに対してもどんどん独立しなさい、
勝手にしなさいと。
ウクライナとベラルーシと白ロシアはロシアと切り離すことは
不可能だけれど、それ以外の12の共和国は勝手にしなさいと。
だからソルジェニーツィンは大ロシア主義者では無い。
15の共和国を独立させるなと叫んでいた大ロシア主義者と
ソルジェニーツィンは鋭く対立していた。
プーチンもその意見を受け入れていた。
プーチンはロシアの保守派の中でかなりの穏健派。
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慎重で理性的なプーチンを追い詰めたのは米国だと伊藤さん。
アメリカは2014年にクーデターをやらせた後、
ウクライナを属国にして、ウクライナ軍とウクライナの右翼組織を
アメリカに所属する戦闘部隊に変えて行った。
アメリカの最新鋭の武器を毎年譲渡し、
ウクライナの兵士を米国で軍事訓練させ、
数百人の米軍の将校をウクライナに常駐させ、
アメリカ式の戦争を叩き込んで、
アメリカの兵器と指揮系統システムを全て使いこなせるようにして、
ウクライナ軍をロシアと戦えるような
最新鋭の軍事力を持つ組織に変えていった。
これを3年、4年続けられていったら、
ロシア軍はいつかウクライナ軍によって
強大なダメージを被る立場に置かれる。
そうなる前に今のウクライナ軍を潰さなくてはいけない。
こう言う議論を進めていく中で、
ロシアのエリート階級、知識人階層が、
ロシア文明とは何かと、
ロシア国民が信用すべき価値判断とは何かと、
ロシア人にとって望ましい経済システムは何かと、
言うことを真剣に議論するようになった。
彼らの議論というのは、
日本の知識人、政治家、官僚の議論よりも
哲学的に深い議論をしている。
例えば19世紀のリベラリズムと進歩主義に対して、
ロシアはどの部分を受け入れて、どの部分を拒否すべきかとか、
今頃になってもまだフランス革命のどこが正しくて間違ってるのかと
ルソーの思想のどこがおかしいとか、
リドロ、ダランベールのここがいいとか、悪いとか、
J・Sミル、イギリスのベンサムとか
J・Sミルの自由主義的な功利主義を
ロシア人は受け入れるべきか否かのような
議論を大真面目でやっていて、どちらかというと、
受け入れるべきではないという方向に進んでいる。
こういった議論が世界の他の国で起きていることは
非常に健康的・健全だと思うと伊藤さん。
なぜかというと、
日本の知識人や大学教授は過去200年、250年間のヨーロッパ、
アメリカの政治思想、経済学を全部鵜呑みにする。
哲学的な見地からヨーロッパ人とかアメリカ人の、
100年前から言ってきた哲学的、宗教的、文化的、
歴史的な点から本当に望ましいのかと、
深く掘り下げて議論する日本の学者はほとんど居ない。
日本のマスコミで自分はインテリだとか、知識人だとか、
外国語が堪能で外国の事情に通じているとか、
自慢している人たちは全員、外国のトレンドを人よりも先に
取り入れて、猿真似をしてみせて、自分が普通の日本人より進んだ
立場にあるように思っている。
しかし、さすがロシアはドストエフスキーとかツルゲーネフとか、
トルストイか、チェーホフとか、ソルジェニーツィンを
生み出した国だから、徹底的に自分の問題として引き受けて、
ヨーロッパ諸国なり、アメリカの言っていることが、
どこまで正しいのかということを、
徹底的に深く深く考えて議論する。
そういう知的な作業をロシア人がついに始めてくれたと
いうのが興味深いと伊藤さん。
ロシアで今一番有名な言論人は多分
アレキサンダー・ドゥーギンだと思うけど、
4人に比べるとドゥーギンはマズイなと。
欧米のマスコミではプーチンの知恵袋とか、
プーチンに一番影響を与えているのは
アレキサンダー・ドゥーギンだと言うけれど、
それはプーチンをファナティックなファシストという風に
批判するためにはあいつはラスプーチンに操られているプーチンと言いたがる。
(アレキサンダー・ドゥーギンは現代のラスプーチンと呼ばれている)
ドゥーギンは4人に比べるとレベルが落ちる、
プーチンがドゥーギンの言葉をどこまで本気にしているかは怪しい。
ドゥーギンは優秀だけど、彼の発言は5割か6割は正しい。
今回の軍事作戦でも言うことがちょっと極端。
慎重なプーチンがどこまで賛成するか疑問だと、
困ったことに今回の軍事委作戦でドゥーギンの人気が
ますます高くなったらしいが、良い傾向ではないと伊藤さん。
世界は多文明、多極構造になるべきが、
伊藤さんの30年前からの主張。
プーチンもプーチンの周囲の知識人も同じ。
これは日本人がお手本にすべき態度だと、
・・・・・・・・・・・
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抜粋終わり
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