In Deepさんのサイトより
https://indeep.jp/victims-are-left-behind-2024/
<転載開始>

洪水で町ごと完全に消滅したノースカロライナ州の山間の町チムニーロック。AP

ノースカロライナ州の惨状

ノースカロライナ州など複数の州に、記録に残る中では最大規模の被害を出したハリケーン・ヘレンの直撃から、そろそろ 10日ほど経ちますが、ほとんど復旧は進んでいないようです。


米エポックタイムズが、10月6日、「これは私たちのハリケーン・カトリーナだ」というタイトルの非常に長い取材記事を掲載していましたが、現地はまったく惨状を呈したままのようで、そもそも、「犠牲者が何人なのか」も、わからないままのようです。


報道などでは、死者 200人以上として報じられることが多いですが、エポックタイムズの取材では、ホームレスのキャンプなどが完全に破壊されたことにより、膨大な死者が出ている可能性について、以下のように記されていました。もっとも、これは現地の人の証言ですので、正しい描写や推定ではないでしょうが。



エポックタイムズの記事より


増加する死者数


…特にアッシュビルのホームレス人口は最も被害が大きく、死者のかなりの割合を占めている。洪水によりアッシュビルのフレンチ・ブロード川沿いの大規模なホームレスキャンプが完全に破壊され、多数の遺体が発見された。


「木々の間にたくさんの遺体がありました。先日、8体の遺体が引き上げられました」とブラウン医師は語った。「線路沿いや川沿いには多くのホームレスの人たちが住んでいて、ほとんどの人は行くところがありませんでした」と彼女は語った。


「町には移動式遺体安置所が多数あり、遺体でいっぱいですが、その数はまだ報告できていません。その数は死者数には含まれておらず、死者数は数千人増えるでしょう」とブラウン医師は語った。


「まだ川から遺体が引き上げられています」と、教会の救援活動員ジャン・ブリンクリーさんは語った。


Epoch Times 2024/10/06


現地の診療所の医師の発言として、「死者は数千人増えるでしょう」という見方が出ているのですが、その他にも数多くの被災者がいて、あるいは避難している多くの人たちがいるのですが、最大の被害を受けた地域には現在、


・水がない(飲料水もないし、トイレも使えない)


・食糧がない


・燃料がない


などの悪条件が重なっているようですが、現状では、被災地に水や食糧を提供しているのは、「政府ではなく民間のボランティア団体」、あるいは赤十字などとなっています。


 


FEMAの資金の枯渇


こういう非常に大きな自然災害に対応するアメリカの政府機関は、FEMA (連邦緊急事態管理庁)という組織ですが、先日、国土安全保障の長官は、


「 FEMA の資金が枯渇したので、今後のハリケーンの救済はできない」


と発表しています。


以下は、ニューヨーク・ポストの報道の一部です。


連邦政府は、ハリケーンに対応する資金は残っていないと述べた


アレハンドロ・マヨルカス国土安全保障長官は 10月2日、連邦緊急事態管理庁(FEMA)が移民危機に対処するために 2022年秋以来 14億ドル(約 2000億円)以上を費やしてきたにもかかわらず、記者団に対し、大西洋の残りのハリケーンシーズンでアメリカ人を支えるための「資金がない」と述べ、人々に激しい怒りを巻き起こした。


「今後も、さらにハリケーンが来るとは予想していますが…しかし、資金がありません。FEMA にはハリケーンシーズンを乗り切る資金がないのです。これから何が起きるのか…」


BDW


この記事の翻訳全文は、こちらにあります。


現在、ノースカロライナ州の被災者に配られているのは、食料品の費用としての約 11万円だけとあります(車も動かせず、周囲に食料店がないにも関わらず)。


しかも、洪水の被災者にとっての今後の非常に厳しい現実として、


「被災者の 98%が今回の洪水による保険を受けられない」


ことがわかっています。


 


ほとんどの人たちが災害保険を受けとれない


これは、どうもアメリカの保険制度の問題などもあるようなんですが、そもそもノースカロライナ州が「大洪水に襲われる」ということは想定されていなかったので、洪水保険に入っている人は「ほぼいなかった」ようです。


以下は、サイエンティフィック・アメリカンの記事からの抜粋です。


ハリケーン・ヘレンの生存者で洪水保険に加入している人はごくわずか


ハリケーン・ヘレンによる洪水被害を受けたジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州の一部の世帯のうち、保険金を受け取れる人たちはわずか 2%であることがわかった。


南東部各地の何十万人もの人々がハリケーン・ヘレンの後に家の再建に苦労することになる。その理由はただ一つで、この地域では洪水保険に加入している人がほとんどいないからだ。


ハリケーン・ヘレンによる洪水被害を受けたジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州の数十の郡では、国内の洪水保険のほぼすべてを販売している連邦政府のプログラムを通じて洪水保険に加入している世帯は 1%未満だった。


洪水保険は住宅所有者保険とは別に販売されており、住宅所有者保険では通常洪水被害はカバーされない。


しかし、海岸沿いに住んでいない人々の圧倒的多数は、洪水保険に加入する義務がなかったり、加入する余裕がなかったり、洪水のリスクがあると思わなかったりして、保険に加入していない。


その結果、保険に加入する人が危険なほど少なくなり、何百万人もの人々が洪水とその拡大する被害から経済的な保護を受けられずにいる。



Scientific American 2024/10/03


もっといえば、被害の大きかったサウスカロライナ州では、洪水保険に加入していた世帯は、災害発生郡の 77万世帯のうち、わずか 0.5%だそうです。


99.5%は、今回の洪水被害に対しての保険金支払いを受けられないことになります。


こうなると、街が元通りに復旧するのは大変に困難になるはずです。


 


能登でもガザでも


日本でも、能登の地震が起きてから、 10カ月が経ちますが、ほとんど何の復旧もできていないまま、先日は豪雨の被害に遭い、そちらも、やはり何の進展も見られていないようです。


このような、


「被災者が放置される」


という図式が、世界のいたるところで見られるようになっています。


ここに戦争を加えれば、ガザの一部の被害者たちも完全に「放置」されています。


ガザでどれだけの人が死亡したのかさえ、いまだに不明です。


ミドル・イースト・モニター紙より


イスラエルは 2023年10月7日以来続いているガザ戦争で 4万1800人以上のパレスチナ人を殺害し、9万6800人以上を負傷させており、1万人が依然として行方不明で、瓦礫の下敷きになって死亡したとみられている。


専門家たちは、実際の死者数は保健省が発表した数字の 4倍に上る可能性があると考えている。


MEM 2024/10/07


今後も、このような「やられた者は放置される」という構図が世界的に広がっていくのかどうかはわからないですが、現段階では確実に進行しているように思います。


アメリカにいたっては、「予算がないから何もできない」という有様となっていますが、そのような状況の中で、今度はフロリダ州に、現在カテゴリー5(最大の勢力)のハリケーン・ミルトンが迫っています。


バイデン大統領はフロリダ州の「非常事態宣言」を承認していますが、FEMA の予算が枯渇したままなら、ノースカロライナ州とあまり違わない結果になってしまう可能性もあります。


そして、能登を見ましてもわかりますように、日本を含めて、どこでも同じように「見捨てられる」可能性がある時代です。