「世に倦む日々」氏の2年前(2020年8月15日か)の記事の一部で、幾つかの予測をしているが、当たったものも間違ったものもある。間違いの根本は、米国の社会や政治への無知のためだろう。共和党は好戦的、民主党は平和的という誤解をしている。これは「世に倦む日々」氏自身が左翼・リベラルに親近感を持つ人間だからだろう。一般的にもなぜかリベラルは左翼に近いと思われていて、平和主義だと誤解されているのである。(左翼とは「急進的改革」を望む政治姿勢であり、リベラルは単なる「自由主義」である。両者は類似の行動を取ることが多いが、同一ではない。まして、「平和主義」は左翼か右翼かとは関係がないし、自由主義か保守主義かとも無関係だ。)
もちろん、日本の中では左翼・リベラルが「憲法九条を守れ」と発言することが多いのだが、それは米国の民主党やリベラル勢力とは無関係であり、類縁性もない。
「平和主義」は、憲法九条的なものが最初から存在せず、「敵が現れたら戦え」というマチズモ(筋肉主義・強い男でないと存在価値が無いとする主義、と定義しておく)に骨絡みで精神が支配されているアメリカの男や、外見は女性だが中身は男という女性政治家たちには通用しない話だ。米国人という国民の中では、平和主義者は「軟弱者(あるいは卑怯者)」として排斥され軽蔑されるのである。アメリカという国が近現代世界の戦争の8割くらいの原因になっているのはある意味当然かもしれない。
で、問題は、「世に倦む」氏が「初期トランプ」の平和主義的外交を目の当たりにし、高く評価をしていたのに、任期末期のトランプを、その対中国強硬姿勢から、好戦的人間と決めつけているところだ。ここにも「どうせ共和党だから」「どうせ成り上がり実業家上がりの大統領で教養の無い野卑な人間だから」という気持ちが心の底にあったと思う。
「敵対的な存在でも、まず交渉してみろ」というトランプの実業家精神の方が、「敵味方思想に精神を毒されたインテリ」(狂信的人間)より平和主義に近いのである。(対中国強硬姿勢は「交渉」の布石にすぎない。ポーカーで言う、「ブラフ」だろう。トランプのブラフ、という洒落になるが。)
話が飛ぶが、「ネットゲリラ」の野次馬氏がトランプを嫌うのも、元エロ本作家のゲリラ氏が本質的にインテリだからではないか。
一応「マチズモ」の説明を引いておくが、これはラテンアメリカだけではなく、アメリカ合衆国の男(あるいは女も含む)の基本精神である。いわゆる「開拓者精神」から来たものだろう。つまり、インディアンを皆殺しにして北米大陸を強奪した精神だ。そして、殺人や強盗という最悪の不道徳行為が(祖先の行為によって)許容される(されねばならない)以上、あらゆる不正義は彼らの精神の中で正当化され、虚偽も隠蔽も偽善も無意識的に正当化されるのである。これが米国の対外国の政治がほとんど常に卑怯卑劣である理由だ。親の因果が子に報い、である。アメリカの原罪、と言ってもいい。
先に、「世に倦む日々」氏自身の反省の弁を氏のツィッターから転載しておく。
(以下引用)
もちろん、日本の中では左翼・リベラルが「憲法九条を守れ」と発言することが多いのだが、それは米国の民主党やリベラル勢力とは無関係であり、類縁性もない。
「平和主義」は、憲法九条的なものが最初から存在せず、「敵が現れたら戦え」というマチズモ(筋肉主義・強い男でないと存在価値が無いとする主義、と定義しておく)に骨絡みで精神が支配されているアメリカの男や、外見は女性だが中身は男という女性政治家たちには通用しない話だ。米国人という国民の中では、平和主義者は「軟弱者(あるいは卑怯者)」として排斥され軽蔑されるのである。アメリカという国が近現代世界の戦争の8割くらいの原因になっているのはある意味当然かもしれない。
で、問題は、「世に倦む」氏が「初期トランプ」の平和主義的外交を目の当たりにし、高く評価をしていたのに、任期末期のトランプを、その対中国強硬姿勢から、好戦的人間と決めつけているところだ。ここにも「どうせ共和党だから」「どうせ成り上がり実業家上がりの大統領で教養の無い野卑な人間だから」という気持ちが心の底にあったと思う。
「敵対的な存在でも、まず交渉してみろ」というトランプの実業家精神の方が、「敵味方思想に精神を毒されたインテリ」(狂信的人間)より平和主義に近いのである。(対中国強硬姿勢は「交渉」の布石にすぎない。ポーカーで言う、「ブラフ」だろう。トランプのブラフ、という洒落になるが。)
話が飛ぶが、「ネットゲリラ」の野次馬氏がトランプを嫌うのも、元エロ本作家のゲリラ氏が本質的にインテリだからではないか。
一応「マチズモ」の説明を引いておくが、これはラテンアメリカだけではなく、アメリカ合衆国の男(あるいは女も含む)の基本精神である。いわゆる「開拓者精神」から来たものだろう。つまり、インディアンを皆殺しにして北米大陸を強奪した精神だ。そして、殺人や強盗という最悪の不道徳行為が(祖先の行為によって)許容される(されねばならない)以上、あらゆる不正義は彼らの精神の中で正当化され、虚偽も隠蔽も偽善も無意識的に正当化されるのである。これが米国の対外国の政治がほとんど常に卑怯卑劣である理由だ。親の因果が子に報い、である。アメリカの原罪、と言ってもいい。
マチスモ(machismo)
《「マチズモ」とも。 ラテンアメリカで賛美される「男らしい男」を意味するスペイン語のmachoから》男っぽさ。 誇示された力。 男性優位主義。先に、「世に倦む日々」氏自身の反省の弁を氏のツィッターから転載しておく。
2年前に終戦の日について書いた記事。まずまずの内容だと感じる。一つだけ、政治予測として結果的に誤ってしまった点がある。この年は米大統領選の年だった。バイデン政権に変わったら、トランプ政権の強烈な反中政策は受け継がれず、マイルドに転換すると甘く考えていた。 critic20.exblog.jp/31591900/
(以下引用)
二番目は中国との戦争の問題だ。野田佳彦が尖閣を国有化し、中国全土で怒濤の反日デモが起きたのが2012年9月のことだった。この頃から、私はずっと危機感に苛まれて日中戦争勃発の恐怖について書き続けてきた。2013年頃に書いた中身は、2016年に軍事衝突が起きるという予想で、日本側が尖閣沖で嘗ての盧溝橋事件のような謀略を仕掛け、そこから戦火が拡大するのではないかという展開が念頭にあった(尖閣事変)。そのとき何度も論じたのは、日本側の作戦の動機と理由であり、叩くなら早いうちにやらないと、5年もしたら中国軍がハイテクで軍備増強し、局地限定の海戦でも勝てなくなるからということだった。その頃は、装備だけでなく部隊の能力において、海上戦力の彼我に明確な差があった。7年後の現在、実力差は詰まり、総合的には逆転している可能性が高い。当時は、海自が素早く叩き、海上の中国軍を無力化した戦局で、圧倒的な軍事力を持つ米軍が「仲裁役」で出てきて両者を分け、紛争を収拾するという見方をしていた。以後、中国海軍が太平洋に出ないよう封じ込める目標を達成する作戦を推理していた。
その衝突が起きるのが、(2013年の)3年後の2016年ではないかと分析し、オオカミ少年のように頻回に警告を発していた。その後、2014年に日米新ガイドラインが策定され、2015年には新ガイドラインの国内法制化である安保法制が成立する。新ガイドラインには、南シナ海での海自の行動任務が明記されていた。安保法制をめぐる政治の激動の中、報ステのインタビューに答えた米シンクタンク日本部長のマイケル・オースリンは、米軍の戦略構想について実にあっけらかんと本音を吐き、安保法制に託した米国の思惑を正直にカメラの前で語った。何事も隠さず、率直に意思表示するのが米国人の美点で特徴だ。すなわち、米国が期待するのは海自の秀逸な戦力で、ぜひ南シナ海で中国海軍と戦闘して能力を証明し、戦果を上げ、米国のアジア太平洋戦略に貢献して欲しいという主張だった。日米新ガイドラインは日中軍事衝突を想定しフォーカスしたものであり、自衛隊は盾ではなく矛の役割で、戦場で真っ先に戦闘する位置づけになっていた。そのための2015年の安保法制整備だった。オオカミ少年の奇矯な予言は、徐々に信憑性の高い近未来図となって行った。
2016年に日中の軍事衝突がハプンせず、幸いなことに予言が外れた理由について、私は何度か弁解を言ってきた。簡単なことで、その年、世界政治が大きく変わったからであり、トランプが出現して米国のアジア太平洋戦略が揺らいだからだ。オバマ時代から構築された戦略構想が白紙化され、それまで東アジア戦略に関与し差配してきた者(ハンドラーズ)の地位と立場が不安定化した。2016年はトランプの年であり、全てがトランプ中心に激変して行った。大統領に就任したトランプはディールの外交を唱え、17年4月には習近平をマール・ア・ラーゴに招待して親密ぶりを強調、17年秋には北京の故宮に招かれて中国側から極上のもてなしを受けた。米中関係はトランプと習近平の独裁者のボス交に委ねられる次第となり、オバマ時代の中国封じ込め政策は後退する。その流れは、2019年の大阪サミット時の日中首脳会談にまで続き、2020年の桜の季節の習近平訪日という予定が組まれる良好関係に至った。今から考えれば、独ソ不可侵条約と日ソ中立条約の狐と狸の化かし合いみたいなものだ。その間、トランプは三度も金正恩と直接会談して米朝和平を協議している。
そうしたマイルドな流れが断ち切られた転換点が、2019年10月末のペンス演説で、中国に対する冷戦宣言のローンチである。年が変わってコロナ問題に埋まってからは、事実上の対中国宣戦布告に等しい攻撃が重ねられている。大統領選挙の情勢が思わしくなくなったことや、米国経済が未曾有の不況と急激な縮小に陥ったことも、中国への敵意を剥き出しにする理由の一つだろう。一方の中国はコロナ禍を科学的に克服し、年率換算で第2四半期11.5%というV字回復の成長を遂げている。
7年前の2013年と比べて劇的に変わった点は、現在では日本よりも米国の方が中国との戦争に積極的な姿勢であることである。構図が変わった。7年前、日本は安倍右翼政権が誕生し、一方の米国はオバマ政権であり、尖閣での軍事行動に逸る右翼日本を米国が注意深く監視し、不測の事態を避けるべく制御しているような関係性が顕著だった。クリントンの振る舞いはそういう印象だったし、軍産複合体の側は、あくまで米軍の指揮権に基づいたところの、米軍の論理と目標の枠内での、米軍の部品としての自衛隊の行動を要求していて、それが2014年の新ガイドラインに反映されている。その基調は中国封じ込め策であり、米中両軍が正面から激突する想定はなかった。その設定が今年から急転して変わり、むしろ米国側が早く米中戦争を始めたい衝動に駆られているように見える。7年前に私が見ていた図は、自衛隊は今すぐ中国軍を叩かないと5年後には勝利の見通しが立たなくなり、作戦計画を立案できなくなるからというものだったが、今では、同じ焦燥と論理を米国が持ち始めている。実際、そういう環境になるだろう。宇宙やサイバー、ミサイルやドローンの軍事技術で中国は米国と肩を並べる水準に達していて、このままだと確実に追い越される。
無論、そのとき自衛隊は米軍の駒として使われ、使い捨ての消耗品としての役割を与えられるだろうから、最も死傷率の高い現場に配置され、第一撃での攻防を受け持たされるだろう。米国は、中国との戦争を核戦争の第三次世界大戦にまでエスカレートさせず、あくまで中国と日本の小競り合いに定義し、日中の限定的な軍事衝突のレベルで押さえようとするだろう。安保理で非難の応酬をしながら、海上で中国軍を効率的に叩き崩し、中国国内で共産党政権に対する反乱を起こさせて瓦解に追い込む戦略に出るはずだ。戦略が成功するかどうかは分からないが、作戦計画はそういう絵になると思われる。いずれにせよ、戦争シミュレーションは別にして、指摘したいのは、今やらないと時機を失すると強く思っているのは、現在では日本ではなく米国の方だということだ。世界最大で最強の軍事力を誇る米国が、覇権国家の座を守るため、中国に軍事的圧力を行使しようとしている。引き金に指をかけている。コロナ禍の中で第三次世界大戦の危機が迫っている。私は再びオオカミ少年の口上を言わなくてはならない。ずいぶん老いぼれたが。
最後に三番目の論点を述べよう。靖国参拝が当然の風景になり、どこからも異論が出ないイデオロギー環境になっているにもかかわらず、9条改憲の機運は弱くなっていることである。9条はバカにされ、無視され否定されているが、平和な中で国民投票で9条を変える緊迫の政治的局面というのは、現実の日程でかなり遠のいた感を強くする。それを遂行するはずの安倍政権が、しわじわと死に体に向かっているからであり、改憲を強力に断行する体力が残ってないからである。コロナ禍の中で解散総選挙を打つタイミングは視界不良になり、刻一刻と総裁任期満了の刻限が迫っていて、衆院議員4年の任期も終わりつつある。また、その前に、安倍晋三の前にトランプ政権が終焉し、ペンスやポンペイオの狂気の対中戦略も破綻しそうな気配が漂う。余程のことがないかぎり、9条改憲の発議は難しいだろう。民主党政権は共和党政権よりも穏健で理性的だから、バイデンが当選後に南シナ海で戦争に突入する愚に出るとは思えない。軍産複合体の意向はともあれ、米国の新政権がトランプと同じ路線で中国への挑発や恫喝を引き継ぐとは思えない。期待もこめてそう楽観しよう。オオカミ少年を続けながら、戦争も改憲もない日常が延長されることを希望したい。
その衝突が起きるのが、(2013年の)3年後の2016年ではないかと分析し、オオカミ少年のように頻回に警告を発していた。その後、2014年に日米新ガイドラインが策定され、2015年には新ガイドラインの国内法制化である安保法制が成立する。新ガイドラインには、南シナ海での海自の行動任務が明記されていた。安保法制をめぐる政治の激動の中、報ステのインタビューに答えた米シンクタンク日本部長のマイケル・オースリンは、米軍の戦略構想について実にあっけらかんと本音を吐き、安保法制に託した米国の思惑を正直にカメラの前で語った。何事も隠さず、率直に意思表示するのが米国人の美点で特徴だ。すなわち、米国が期待するのは海自の秀逸な戦力で、ぜひ南シナ海で中国海軍と戦闘して能力を証明し、戦果を上げ、米国のアジア太平洋戦略に貢献して欲しいという主張だった。日米新ガイドラインは日中軍事衝突を想定しフォーカスしたものであり、自衛隊は盾ではなく矛の役割で、戦場で真っ先に戦闘する位置づけになっていた。そのための2015年の安保法制整備だった。オオカミ少年の奇矯な予言は、徐々に信憑性の高い近未来図となって行った。
2016年に日中の軍事衝突がハプンせず、幸いなことに予言が外れた理由について、私は何度か弁解を言ってきた。簡単なことで、その年、世界政治が大きく変わったからであり、トランプが出現して米国のアジア太平洋戦略が揺らいだからだ。オバマ時代から構築された戦略構想が白紙化され、それまで東アジア戦略に関与し差配してきた者(ハンドラーズ)の地位と立場が不安定化した。2016年はトランプの年であり、全てがトランプ中心に激変して行った。大統領に就任したトランプはディールの外交を唱え、17年4月には習近平をマール・ア・ラーゴに招待して親密ぶりを強調、17年秋には北京の故宮に招かれて中国側から極上のもてなしを受けた。米中関係はトランプと習近平の独裁者のボス交に委ねられる次第となり、オバマ時代の中国封じ込め政策は後退する。その流れは、2019年の大阪サミット時の日中首脳会談にまで続き、2020年の桜の季節の習近平訪日という予定が組まれる良好関係に至った。今から考えれば、独ソ不可侵条約と日ソ中立条約の狐と狸の化かし合いみたいなものだ。その間、トランプは三度も金正恩と直接会談して米朝和平を協議している。
そうしたマイルドな流れが断ち切られた転換点が、2019年10月末のペンス演説で、中国に対する冷戦宣言のローンチである。年が変わってコロナ問題に埋まってからは、事実上の対中国宣戦布告に等しい攻撃が重ねられている。大統領選挙の情勢が思わしくなくなったことや、米国経済が未曾有の不況と急激な縮小に陥ったことも、中国への敵意を剥き出しにする理由の一つだろう。一方の中国はコロナ禍を科学的に克服し、年率換算で第2四半期11.5%というV字回復の成長を遂げている。
7年前の2013年と比べて劇的に変わった点は、現在では日本よりも米国の方が中国との戦争に積極的な姿勢であることである。構図が変わった。7年前、日本は安倍右翼政権が誕生し、一方の米国はオバマ政権であり、尖閣での軍事行動に逸る右翼日本を米国が注意深く監視し、不測の事態を避けるべく制御しているような関係性が顕著だった。クリントンの振る舞いはそういう印象だったし、軍産複合体の側は、あくまで米軍の指揮権に基づいたところの、米軍の論理と目標の枠内での、米軍の部品としての自衛隊の行動を要求していて、それが2014年の新ガイドラインに反映されている。その基調は中国封じ込め策であり、米中両軍が正面から激突する想定はなかった。その設定が今年から急転して変わり、むしろ米国側が早く米中戦争を始めたい衝動に駆られているように見える。7年前に私が見ていた図は、自衛隊は今すぐ中国軍を叩かないと5年後には勝利の見通しが立たなくなり、作戦計画を立案できなくなるからというものだったが、今では、同じ焦燥と論理を米国が持ち始めている。実際、そういう環境になるだろう。宇宙やサイバー、ミサイルやドローンの軍事技術で中国は米国と肩を並べる水準に達していて、このままだと確実に追い越される。
無論、そのとき自衛隊は米軍の駒として使われ、使い捨ての消耗品としての役割を与えられるだろうから、最も死傷率の高い現場に配置され、第一撃での攻防を受け持たされるだろう。米国は、中国との戦争を核戦争の第三次世界大戦にまでエスカレートさせず、あくまで中国と日本の小競り合いに定義し、日中の限定的な軍事衝突のレベルで押さえようとするだろう。安保理で非難の応酬をしながら、海上で中国軍を効率的に叩き崩し、中国国内で共産党政権に対する反乱を起こさせて瓦解に追い込む戦略に出るはずだ。戦略が成功するかどうかは分からないが、作戦計画はそういう絵になると思われる。いずれにせよ、戦争シミュレーションは別にして、指摘したいのは、今やらないと時機を失すると強く思っているのは、現在では日本ではなく米国の方だということだ。世界最大で最強の軍事力を誇る米国が、覇権国家の座を守るため、中国に軍事的圧力を行使しようとしている。引き金に指をかけている。コロナ禍の中で第三次世界大戦の危機が迫っている。私は再びオオカミ少年の口上を言わなくてはならない。ずいぶん老いぼれたが。
最後に三番目の論点を述べよう。靖国参拝が当然の風景になり、どこからも異論が出ないイデオロギー環境になっているにもかかわらず、9条改憲の機運は弱くなっていることである。9条はバカにされ、無視され否定されているが、平和な中で国民投票で9条を変える緊迫の政治的局面というのは、現実の日程でかなり遠のいた感を強くする。それを遂行するはずの安倍政権が、しわじわと死に体に向かっているからであり、改憲を強力に断行する体力が残ってないからである。コロナ禍の中で解散総選挙を打つタイミングは視界不良になり、刻一刻と総裁任期満了の刻限が迫っていて、衆院議員4年の任期も終わりつつある。また、その前に、安倍晋三の前にトランプ政権が終焉し、ペンスやポンペイオの狂気の対中戦略も破綻しそうな気配が漂う。余程のことがないかぎり、9条改憲の発議は難しいだろう。民主党政権は共和党政権よりも穏健で理性的だから、バイデンが当選後に南シナ海で戦争に突入する愚に出るとは思えない。軍産複合体の意向はともあれ、米国の新政権がトランプと同じ路線で中国への挑発や恫喝を引き継ぐとは思えない。期待もこめてそう楽観しよう。オオカミ少年を続けながら、戦争も改憲もない日常が延長されることを希望したい。
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