中国の習近平国家主席と、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は15日、電話首脳会談を行い、軍事分野での協力拡大について協議した。ロシアのウクライナ侵攻後、中国は静観姿勢をとってきたが、ここに来て、欧米諸国に対抗姿勢を示した。独裁・専制主義国家と自由主義国家の亀裂拡大が加速しそうだ。
「世界各国は責任のあるやり方でウクライナ危機の適切な解決を促進すべきだ」「主権や安全など核心的利益や重大な関心事に関わる問題で相互に支持することを望む」
習氏は電話会談で、ウクライナ侵攻や中露関係についてこう述べた。分かりにくいが、「ロシアと手を組む」という意図のようだ。
ロシア大統領府によると、会談では、エネルギーや金融、産業などの分野だけでなく、軍事や軍事技術分野における協力拡大についても協議した。プーチン氏も中国への協力姿勢を明確にし、米国などの台湾問題への干渉に反対を表明した。
電話会談は、ウクライナ侵攻が始まった直後の2月25日以来で、両国が踏み込んだ協力姿勢を見せることで、欧米諸国を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。
中露が強気に転じたのは、ウクライナでの戦況も影響していそうだ。
ウクライナ東部では、ロシアの砲撃などでウクライナ側の劣勢が伝えられている。東部ルガンスク州の中心都市セベロドネツクでは、ドネツ川を挟んだ対岸の都市リシチャンスクにつながる3つの橋が破壊され、避難や物資補給が不可能な状況にある。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は14日に公開された動画で、改めて軍事支援を呼び掛けた。ドイツなど武器供与を約束した国から兵器が現地に届いていない現状があるようだ。
このままでは、侵略国家の暴挙がまかり通る。「台湾有事・尖閣有事」にも悪影響必至だ。
福井県立大学の島田洋一教授は「ウクライナ東部での戦況が、ロシア側に傾いているため、中国は欧米を牽制している。ロシアが制圧に成功すれば、欧米諸国の失敗を強調できる。また、中国はロシアに協力しても、欧米の制裁が及ばないかを見極めている。習氏はロシア側に貸しをつくり、来る『台湾有事』に準備している側面もあるだろう。欧米の武器供与のスピードが鍵になる」と指摘した。
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