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徽宗皇帝のブログ

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「国体護持」のために死んでいった無数の国民
「壺斎閑話」から転載。
おそらくテレビ放映された番組を録画して見ながらじっくり検討して書いた文章だと思う。その真摯な姿勢に頭が下がる。
とりあえず、重要資料として記録保存のため転載しておく。
意を尽くした文章であり、解説は不要だろう。



(以下引用)



終戦 なぜ早く決められなかったのか

2012年8月16日 19:12| コメント(0)| トラックバック(0)





戦後67年もたつというのに、アジア太平洋戦争の全貌はいまだに明らかになっていない。それは全貌解明のために必要な情報が出そろっていないことに原因がある。そうした情報は、終戦時に隠滅されたり、あるいは重要情報を知る人物が固く口を閉ざしてきたことで、なかなか出そろわなかったのだが、近年になって、少しずつ明るみに出てくるようになった。その一つとして、ソ連参戦にかかわる重要情報が最近明らかにされた。それも日本国内からではなく、イギリスの国立公文書館から。


これまで、天皇以下日本の最上層部は、ソ連参戦の情報を最後まで知らなかったとされていた。8月9日にスターリンが対日戦争を宣言したのは寝耳に水のことだったと広く解釈されてきた。その裏話として、日本政府はソ連に対して終戦の斡旋を依頼し、近衛前首相の派遣まで打診していたという、いまとなっては笑えない事実もある。ところが、少なくとも軍の上層部は、ソ連参戦の情報を終戦の年の5月頃には、確実に知っていたという事実が明らかになった。西洋各国の日本大使館の武官たちが本国に送った電報を傍受したイギリス側が、その記録を国立公文書館に保管し、それをこのたび公開したのであるが、それらの電報の中で、駐在武官たちがソ連参戦に関する情報を、本国に送っていたというのだ。

そのいきさつをNHKが取材の上、紹介した。(NHKスペシャル 終戦 なぜ早く決められなかったのか)

ソ連の対日参戦が正式に決まったのは1945年2月のヤルタ会談の席でだが、その情報は5月頃には、西洋各国で公然の秘密になっていた。それを察知した各地の駐在武官たちが、5月から7月にかけ、本国に向けて危機感を以て打電していた。だから、軍部のトップはそのことを知っていたはずだというのだ。もしそうならば、事態は深刻なわけで、終戦を急がなければ、対ソ連でも戦火を交えねばならない事態になる。逆にいえば、終戦をもう少し早めていれば、ソ連参戦によって蒙った膨大な損害はもとより、広島・長崎への原爆投下も防げたはずだ、こう番組は指摘して、日本のトップたちの間で、終戦をめぐってどのようなやり取りがあったのか、そのことを改めて検証していた。

日本のトップが終戦について真剣に検討を始めるのは、ナチスドイツの降伏直後の5月中旬のことだ。大本営政府連絡会議の後身というべき「最高戦争指導会議」の場においてであった。これには、鈴木首相、東郷外相、阿南陸相、寺内海相、梅津参謀総長、豊田連合艦隊司令官(軍令部総長の代理としてだろう)の6人が参加していた。いずれも天皇を直接に輔弼乃至補佐する立場として、平等の資格である。この最高の意思決定の場で、構成員たる6人は、情報を共有しながら共通の目的に向かって努力しなければならなかったわけだが、実際にはそうはならなかった。ソ連参戦に関する重要な情報について、阿南も梅津も一言も言わなかったのである。

こんな大事なことを軍部のトップは、首相や外相のみならず天皇に対しても黙っていた。その結果日本は、国家存亡の危機にあたって正しい判断をすることができなかった。

何故軍部は、黙っていたのか。阿南らは、できれば本土決戦まで頑張って、そこで敵に一撃を加え、そのことで少しでも有利な立場を作ったうえで終戦の交渉に臨みたいという、馬鹿げた考えを持っていた。それに固執したことで、ソ連参戦の影響を理性的に評価することができなかった。番組はそんなふうに解釈していたが、阿南らが本当にそう考えて、ソ連参戦の情報を隠匿したのだとしたら、実に馬鹿な奴らだといわざるをえない。

6月22日には天皇も臨席し、終戦の見込みについて検討している。その場で天皇は、いわゆる一撃論を排斥したが、それにもかかわらず阿南らは、ソ連参戦の情報について一言も言わなかった。そのために、終戦についてソ連に斡旋をお願いしようという馬鹿げた方針が出された。実際その方針に基づいて近衛前首相の派遣が検討され、その場合には終戦の条件は近衛に一任するという無責任な結論を出しているが、その近衛が終戦の条件として、沖縄・小笠原の放棄や強制労働の受け入れ(日本人の奴隷化)まで考えていたということについては、筆者も別稿で言及したことがある。(半藤一利「ソ連が満州に侵攻した夏」を読む)

それにしても、戦争を遂行していた日本の指導者たちの無責任ぶりには、改めて愕然とする。開いた口がふさがらないといった、生易しい気持ちではない。(写真はNHKから)

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