「JBプレス」から転載。元記事は英フィナンシャルタイムズのようだ。転載部分はその記事の後半である。
ギリシャについてはEUを離脱するかどうかの予測よりも、ギリシャ国民にとっての、その損得を私は書いてきた。私の考えは、短期的には経済的混乱や被害があっても、長期的にはプラスだというものだ。ついでにIMF融資、EU他国からの融資を踏み倒せば最高である、と。
もちろん、借金踏み倒し(デフォルト)だけで経済が好転するわけはないが、借金返済に今後何十年も苦しんで、緊縮財政を強要されれば、それだけで経済的発展はまったく不可能になるに決まっている。IMFやEU他国から新たな借金をしたところで、借金返済のために働くことに変わりはない。
つまり、個人に置き換えて考えれば簡単だ。あなたが毎月の借金返済額が20万円あり、あなたの毎月の収入が25万円あるとする。その25万円のうち20万円は優先的に支払うように定められているとする。これが今のギリシャという国家なのである。ならば、その20万円の返済が不要になれば、生活が楽になるのは当然だろう。
国家の借金も同じことだ。借りた金は返すもの、などというのは下層階級の人間だけの美徳である。1929年の大恐慌で、銀行は預金者に金を返したか? 「取り付け騒ぎ」などと言って、自分の金を引き出すことがまるで悪事であるかのような扱いを受けたのである。で、表向きは銀行の一部は潰れたが、では預金者の預けた金はどこへ行ったというのだ? 預金者に返してもいない金はどこへ行ったのだ? こんなのは猿芝居である。これが金融資本主義の正体だ。
まあ、借りた金は返すものだ、という庶民の道徳は私も称賛するが、それは庶民間の話にすぎない。ギリシャの場合は、国民の大半が貧窮し、苦しんでいるという事実、国民を救わねばならないという目的が、まず優先されねばならないのであり、借金を返すことなど一番後廻しでいいのである。
今日の記事タイトルは、一つの案だ。EUやユーロという詐欺的結合より、信頼できる国家同士で連帯するという選択肢もある、ということだ。
(以下引用)
SYRIZA党首はチャベス大統領を信奉、ND党首はロシアとの関係を重視
SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首は2009年にベネズエラを訪問しており、その反米主義の世界観がギリシャ左派が代々抱く帝国主義への憎しみと重なるウゴ・チャベス大統領の信奉者だ。
チャベス大統領はベネズエラの埋蔵石油を外交手段として使うことを得意としている。エネルギー輸入に大きく依存するギリシャでツィプラス党首が権力を握れば、この要素は大きな重要性を持つようになるかもしれない。
一方のNDのアントニス・サマラス党首は1月にモスクワを訪問し、キリスト教正教派の仲間であるロシアとギリシャの文化的な絆を強調した。ロシアはギリシャのガス輸入の大半を供給しており、ロシア政府はキプロスに25億ユーロの低利融資を手配している。キプロスを率いるギリシャ系キプロス人の指導者たちは、トルコに対する警戒心を共有するギリシャ政府と親密だ。
親欧米派のギリシャの政治家にとって問題は、経済危機のおかげで、ギリシャ国民がある程度、EUやNATOの忠実な加盟国であることを、金融支援と引き換えに厳しい条件を課してきた欧州とIMFの監督官への屈服と関連づけてしまっていることだ。
比較的若いギリシャ人は近代の欧州国家としてのアイデンティティーを誇りにしているものの、現在、若者の半分は失業しており、将来に不安を抱いている。一方、年配のギリシャ人は、1974年にトルコがキプロスに侵攻した時にNATOが傍観姿勢を取ったことや、1967~74年のギリシャ軍事政権に対する米国の支援として思い起こすものを覚えている。
ギリシャの国家安全保障の問題
このため、ギリシャを親欧米路線にとどめておくべき根拠を正当化するのは、債務危機が勃発する前の3年前と比べても難しくなっている。最終的にその論拠は、ギリシャはユーロ圏外にいるよりも圏内にいた方が安全だという議論にある。だが、欧州の一部の政策立案者は今、安定したユーロ圏にはギリシャの追放が必要かもしれないと話している。
名高いEU問題専門家のパナギオティス・イオアキミディス氏は、ギリシャがユーロ圏に迎え入れられる2年前の1999年にこの問題の核心を突き、ギリシャ外務省向けの政策文書の中で「単一通貨圏の正式メンバーであることは、ギリシャの対外安全保障が著しく強化されることを意味している」と書いた。
日曜の選挙の結果がどうなろうとも、欧州の係留装置から切り離されたギリシャでは、国家不安の意識が高まる一方だろう。
By Tony Barber
© The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
ギリシャについてはEUを離脱するかどうかの予測よりも、ギリシャ国民にとっての、その損得を私は書いてきた。私の考えは、短期的には経済的混乱や被害があっても、長期的にはプラスだというものだ。ついでにIMF融資、EU他国からの融資を踏み倒せば最高である、と。
もちろん、借金踏み倒し(デフォルト)だけで経済が好転するわけはないが、借金返済に今後何十年も苦しんで、緊縮財政を強要されれば、それだけで経済的発展はまったく不可能になるに決まっている。IMFやEU他国から新たな借金をしたところで、借金返済のために働くことに変わりはない。
つまり、個人に置き換えて考えれば簡単だ。あなたが毎月の借金返済額が20万円あり、あなたの毎月の収入が25万円あるとする。その25万円のうち20万円は優先的に支払うように定められているとする。これが今のギリシャという国家なのである。ならば、その20万円の返済が不要になれば、生活が楽になるのは当然だろう。
国家の借金も同じことだ。借りた金は返すもの、などというのは下層階級の人間だけの美徳である。1929年の大恐慌で、銀行は預金者に金を返したか? 「取り付け騒ぎ」などと言って、自分の金を引き出すことがまるで悪事であるかのような扱いを受けたのである。で、表向きは銀行の一部は潰れたが、では預金者の預けた金はどこへ行ったというのだ? 預金者に返してもいない金はどこへ行ったのだ? こんなのは猿芝居である。これが金融資本主義の正体だ。
まあ、借りた金は返すものだ、という庶民の道徳は私も称賛するが、それは庶民間の話にすぎない。ギリシャの場合は、国民の大半が貧窮し、苦しんでいるという事実、国民を救わねばならないという目的が、まず優先されねばならないのであり、借金を返すことなど一番後廻しでいいのである。
今日の記事タイトルは、一つの案だ。EUやユーロという詐欺的結合より、信頼できる国家同士で連帯するという選択肢もある、ということだ。
(以下引用)
SYRIZA党首はチャベス大統領を信奉、ND党首はロシアとの関係を重視
SYRIZAのアレクシス・ツィプラス党首は2009年にベネズエラを訪問しており、その反米主義の世界観がギリシャ左派が代々抱く帝国主義への憎しみと重なるウゴ・チャベス大統領の信奉者だ。
チャベス大統領はベネズエラの埋蔵石油を外交手段として使うことを得意としている。エネルギー輸入に大きく依存するギリシャでツィプラス党首が権力を握れば、この要素は大きな重要性を持つようになるかもしれない。
一方のNDのアントニス・サマラス党首は1月にモスクワを訪問し、キリスト教正教派の仲間であるロシアとギリシャの文化的な絆を強調した。ロシアはギリシャのガス輸入の大半を供給しており、ロシア政府はキプロスに25億ユーロの低利融資を手配している。キプロスを率いるギリシャ系キプロス人の指導者たちは、トルコに対する警戒心を共有するギリシャ政府と親密だ。
親欧米派のギリシャの政治家にとって問題は、経済危機のおかげで、ギリシャ国民がある程度、EUやNATOの忠実な加盟国であることを、金融支援と引き換えに厳しい条件を課してきた欧州とIMFの監督官への屈服と関連づけてしまっていることだ。
比較的若いギリシャ人は近代の欧州国家としてのアイデンティティーを誇りにしているものの、現在、若者の半分は失業しており、将来に不安を抱いている。一方、年配のギリシャ人は、1974年にトルコがキプロスに侵攻した時にNATOが傍観姿勢を取ったことや、1967~74年のギリシャ軍事政権に対する米国の支援として思い起こすものを覚えている。
ギリシャの国家安全保障の問題
このため、ギリシャを親欧米路線にとどめておくべき根拠を正当化するのは、債務危機が勃発する前の3年前と比べても難しくなっている。最終的にその論拠は、ギリシャはユーロ圏外にいるよりも圏内にいた方が安全だという議論にある。だが、欧州の一部の政策立案者は今、安定したユーロ圏にはギリシャの追放が必要かもしれないと話している。
名高いEU問題専門家のパナギオティス・イオアキミディス氏は、ギリシャがユーロ圏に迎え入れられる2年前の1999年にこの問題の核心を突き、ギリシャ外務省向けの政策文書の中で「単一通貨圏の正式メンバーであることは、ギリシャの対外安全保障が著しく強化されることを意味している」と書いた。
日曜の選挙の結果がどうなろうとも、欧州の係留装置から切り離されたギリシャでは、国家不安の意識が高まる一方だろう。
By Tony Barber
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コメント
1. 無題
借金などユーロという制度的欠陥で起きたことですから2の次3の次です
ユーロに止まろうと、離脱しようと、デフレギャップを無くす(潜在成長率を達成する)政策を格差改善と共に最優先にすれば良いことです。
http://www.asyura2.com/12/hasan76/msg/543.html