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徽宗皇帝のブログ

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ドイツは成功したか?
「孤帆の遠影碧空に尽き」というブログから資料的部分を引用。
EUはドイツの一人勝ち状態だが、それは労働者の賃金引き下げとセットであり、またそれはユーロ安の恩恵でもあるが、ユーロ安は他のEU諸国の経済情勢悪化とセットである。つまり、一人勝ちのドイツにしてもドイツ国民自体の生活が向上したわけではないし、EU他国の犠牲の上にドイツの「繁栄」はあるわけだ。
ドイツの失業率低下も数字の操作、つまり「多くの人は生活保障も受けているが、統計上は職業がある人として数えられる。」によるもののようだ。
まあ、ドイツの「成功」が新自由主義的政策によるものだと言いだす者が出てくるかもしれないので、それに釘を刺す意味で、この記事を転載するわけである。


(以下引用)

****3月のユーロ圏失業率は10・9% 財政緊縮策で****
欧州連合(EU)の統計機関ユーロスタットは2日、ユーロ圏(17カ国)の3月の失業率(季節調整済み)は2月から0・1ポイント悪化し、10・9%になったと発表した。EU全体(27カ国)では前月とかわらず10・2%だった。

EUが債務危機対策として進めてきた財政緊縮策が実体経済を圧迫、雇用情勢は改善せず、失業率は1999年のユーロ導入以来の最悪水準から抜け出せずにいる。

3月の失業率は、債務危機の本格波及が懸念されるスペインが24・1%、財政危機のポルトガルが15・3%と高止まり。フランスは10・0%、イタリアは9・8%で、ドイツが5・6%。ギリシャは最新データが今年1月時点で21・7%。
3月のユーロ圏の失業者数は前月比16万9千人増の1736万5千人。EU全体では19万3千人増の2477万2千人。【5月2日 産経】
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【労働規制緩和によるドイツモデル】
厳しい数字の欧州各国のなかで、ドイツだけは好調を維持しています。
(なお、日本の12年3月の失業率は4.5%です。)
そのドイツは、05年には失業者数は500万人に達し、失業率も11%を超え、戦後最悪になりました。この状態から抜け出せたのは、シュレーダー前政権時代に進めた労働市場の改革によると言われています。

失業手当を切り下げて就労を促し、派遣労働などの非正規雇用の道も広げました。
その結果、輸出競争力は高まり、現在の低い失業率が可能となりましたが、一方で、国内の格差は広がったとも言われています。
ドイツモデルが経済危機に喘ぐ他の欧州各国にも適用できるかについては、問題を指摘する向きもあります。

****ドイツ、労働規制緩め一人勝ち 輸出絶好調、格差は拡大****
・・・・欧州の景気は、債務危機の底に沈む。そのなかでドイツだけが絶好調だ。2011年の経済成長率は2年連続で3%を超え、失業率も5.7%(欧州統計局調べ)と東西ドイツ統一後、最低水準に達した。
危機の震源地となったギリシャの成長率がマイナス約7%に落ち込んだのとは対照的だ。

成長を支えているのは好調な輸出だ。昨年の輸出額は前年比11%増の1兆600億ユーロと過去最高。伸び盛りの新興国への輸出が顕著だ。(中略)
ユーロ安が輸出を加速させている。ユーロ安の原因はドイツ以外の国があえぐ債務危機だ。陰では「ドイツは欧州危機でもうけている」とささやかれている。

ギリシャ、イタリア、スペインといった危機に陥った国が取り組み始めたのが、ドイツがシュレーダー政権時代に進めた労働市場の改革だ。失業手当を切り下げて就労を促し、派遣労働などの非正規雇用の道も広げた。その結果、輸出競争力は高まったが、国内の格差は広がった。

サルコジ仏大統領は大統領選を前に「ドイツシステムに近づけていくことが私の仕事だ」とまで言った。
欧州を主導してきたフランスのプライドは見る影もない。東西ドイツ統一の負担に苦しみ、「欧州の病人」と揶揄(やゆ)されてきたドイツが今や欧州の覇権を握ろうとしている。

■福祉国家路線を転換
危機に苦しむ欧州各国を尻目に、ドイツ経済は絶好調だ。その要因はシュレーダー前首相が取り組んだ一連の改革と言われる。失業率が下がり、産業競争力は高まったが、社会の格差は広がった。欧州各国が学ぼうとする「ドイツ・モデル」は、有効なのか。

「現在の発展の起源は、1990年代の東西ドイツの統一過程だった」。ライプチヒ大学のシュナーブル教授はそう解説する。
90年の東西ドイツ統一で失業者は増え、旧東の再建にかかる費用で財政も悪化。99年のユーロ導入が追い打ちをかけた。同じ通貨を使うようになった低賃金の周辺国に工場が逃げ、雇用が減った。
シュレーダー政権下の05年、失業者数は500万人に達し、失業率も11%を超え、戦後最悪になった。

ドイツの復活には産業競争力の回復が必要だった。そこで、企業側の規制や負担を減らす代わりに、雇用を増やしてもらう。さらに、失業給付を削る荒療治を同時に実行した。
手厚い福祉国家だったドイツでは改革前、失業者は手取り給与の6割ほどの失業給付を受け取れたが、就業を促すために支給期間を限った。終了後は生活保護にあたる基礎保障の支給に変えた。一方、非正規労働の規制をゆるめた。

社会民主党のシュレーダー氏による改革には支持母体の労働組合が反発し、05年に政権を失う一因にもなった。だが、その後、輸出産業を中心に改革の効果が表れ始める。

08年秋のリーマン・ショックを乗り切れたのも、政府の関与があったからだ。
自動車のフィルターを作るマン・ウント・フンメルは当時、受注が減り、操業短縮に踏み切った。賃金をカットしたが、技術者や職工を解雇しなかった。政府は給与減の一部を補填(ほてん)する政策で後押しした。同社のウォルフ自動車産業部門長は「従業員を解雇しなかったので、急回復に全速力で対応できた」と話す。
ダイムラーやポルシェなど多くの企業が同様の対応をとった。「経営が組合、政府と協力して熟練工の雇用を維持した点が今の成功につながっている」。ドイツ自動車産業連盟のウィスマン会長もそう振り返る。

昨年は失業者数が統一後の92年以降、初めて300万人を割った。好景気で税収が増え、借金に苦しむ他の欧州諸国をよそに財政均衡まで達成しようとしている。

■非正規労働が急増
「今の仕組みのせいで、希望を失っている人はたくさんいる。きちんとした仕事に就くことは無理だし、生活保障をもらっていると怠慢だと思われる」

ベルリンで長男(9)を一人で育てているスザンヌ・ザローラさん(51)は9年前から定職についていない。家賃込みで毎月980ユーロ(約10万4千円)の生活保障をもらっている。家賃480ユーロ、長男の教育費、電気代などを支払えば、残りはわずかだ。
だが、高学歴の彼女に紹介される仕事はウエートレスやコールセンター勤務など月給400ユーロ以下の「ミニジョブ(僅少〈きんしょう〉労働)」ばかりだ。

シュレーダー改革以降、外食や小売り、介護といった産業ではミニジョブなどの非正規労働が飛躍的に増えた。今では490万人がミニジョブを唯一の生業とする。最高でも400ユーロの月給では生活が成り立たず、多くの人は生活保障も受けているが、統計上は職業がある人として数えられる。
ドイツの賃金水準が低下し、競争力が向上した裏にはこうした現実がある。

「ギリシャは国家機構を現代化し、構造改革を実行しなければならない」。2月末、ギリシャへの追加支援を審議する連邦議会で、メルケル首相は強調した。
ドイツは危機に陥った国の支援に反発する国民をなだめるため、見返りに自国が実行したような競争力を回復するための改革を実践するよう求めてきた。

だが、ベルリン自由大学のジャクソン教授は「シュレーダー改革は多くの低賃金労働者を生み、格差を広げた。他の国のお手本にはならない」と批判する。
企業が高品質な製品を作る技術や技能を持たない国が、生産性を向上させたところで、ドイツになるのは難しい。改革を進めることで経済が縮小し、税収が減って財政がさらに悪化する恐れさえあるのが現状だ。

「私が改革を始めた時と比べて今ははるかに厳しい経済状況だ。どの国も10年早く取り組んでほしかった」。シュレーダー前首相はそう語る。【5月2日 朝日】
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【「35時間制はフランス人の勤労意欲をむしばんだ」】
サルコジ大統領が「ドイツシステムに近づけていくことが私の仕事だ」とまで言うフランスでは、週35時間労働制の見直しが争点となっています。
サルコジ大統領は「35時間制はフランス人の勤労意欲をむしばんだ」と指摘、もっと働き、企業の競争力を高め、雇用を創出することを提起しています。

一方、社会党オランド候補は、時短政策によるワークシェアリングにより多くの雇用が生まれており、週35時間労働制の見直しは失業率増加につながるとしています。

****もっと?そこそこ? フランス大統領選、働き方も争点に*****
フランス大統領選の決選投票を控えたメーデーの1日、現職サルコジ氏が「働くフランス」を訴えた。経済危機のもと、「そこそこ働いて、しっかり休む」欧州流の生き方を問う。
セーヌ川越しにエッフェル塔をのぞむトロカデロ広場でサルコジ氏は、数千人規模の集会を開いた。「働くことで危機を脱せる。借金も返し、成長できる」

高級住宅街のパリ16区。若手の企業経営者や、汗水を流して右肩上がりの時代をつくった退職者らの「真に働く者の祭典」という。
メーデーにぶつけ、先行するオランド候補の社会党や労組をやり玉にあげる。失業者らも手当という既得権にしがみつくと映る。

これに対しオランド氏は、サルコジ氏を「真に失業を招いた候補」と酷評し、2日前のパリでの大集会であげつらった。「失業率を5%にすると言ったのに現状はどうか。全体で10%、若者は23%だ」

完全失業者は288万人。失業保険の会計は3年連続の赤字で累計約138億ユーロ(約1.5兆円)に膨らんだ。危機脱却に向けてサルコジ氏は、「そこそこ働く」欧州流にメスを入れる。社会党のジョスパン首相時代からの週35時間労働制の見直しがその象徴だ。

1日8時間働けば、学校が休みの水曜日を加えて週休3日。残業手当などを有給休暇に振り替えてバカンスはたっぷり1カ月――。「35時間制はフランス人の勤労意欲をむしばんだ」と指摘する。
もっと働き、企業の競争力を高め、雇用を生むという。時短政策の見直しのほか、付加価値税の増税で企業の社会保障負担を減らすことなども掲げる。

サルコジ氏を支持する大学生、ラファエル・ゼノンさん(20)は「手当に頼る社会を変えないと、財政はますます苦しくなり、ギリシャ化する」と話す。
中小企業経営者団体「クロワサンス・プリュス」のエマニュエル・アモン氏(41)は「35時間制は企業の競争力を著しく弱める」として、法定労働時間を「39時間」に増やし、超過勤務の有給休暇への振り替えをやめる代わりに、給与を10%引き上げるよう求めた。

絶好調のドイツがサルコジ氏の改革のモデルだが、非正規雇用の拡大で「ワーキングプア」が増え、格差も広がる。だれもが納得しているわけではない。
ドーバー海峡に面した港町カレー。失業率16%の街だ。地元バス会社は「32時間労働」を定着させた。モクタル・エラリさん(56)は「一人ひとりの時短で、15人の雇用を生んだ」と強調する。自らも「家庭菜園ができる余裕を手に入れた」。

「問われるべきは雇用」というオランド氏の陣営は「35時間制」を守る。少なくとも35万人の雇用を生んだとの統計もあり、時短の見直しは失業率に跳ね返るとみるからだ。富裕層などへの課税強化で、税収を教職員の増員や若者の職業訓練にあてると提案する。フランス伝統の「連帯」だ。

雇用対策を担うアラン・ビダリー下院議員は「家事の分担や子育て、余暇など暮らしの隅々まで入り込んだ制度を変えれば、経済は大混乱に陥る」と話す。「サルコジ氏の『35時間つぶし』は、公務員を嫌う企業経営者らに配慮した選挙の方便にすぎない」 (後略)【5月2日 朝日】

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