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徽宗皇帝のブログ

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偽りの革命と真の革命
「ちきゅう座」掲載の、童子丸開氏によるジェームズ・ペトラスの論文の一部を転載する。
現代が新たな帝国主義、というより米国という巨大帝国と、それに追随するEU諸国という一国帝国主義の時代であることはこれまで何度も言ってきたが、米国が自分にとって邪魔な国を倒してきた卑劣なやり方(まあ、戦争や謀略に正々堂々などというのもナンセンスではあるが)を下記論文は明確に描いている。
つまり、「草の根民主主義」の利用である。これまで共産主義国家やイスラム諸国が倒されてきたやり方は、みな、その国内から「草の根民主主義」の声が上がり(もちろんCIAが背後にいる)、それに呼応して「自由主義」国家が軍事的支援をして「独裁国家」を倒すという図式であった。
今でもそういう表向きの図式を信じているおめでたい人間が庶民の中には無数にいるだろう。だが、そろそろ人々も目覚めてもいい頃ではないか。真の敵は外国にではなく、米国内にいると知った民衆の「戦う者の声」(ミュージカル『レ・ミゼラブル』「民衆の歌が聞こえるか」より)が聞こえる日が近いような気が私にはしている。

(以下引用)

 帝国の広報官たちは、ライバルたちの実際のあるいは捏造された暴虐さを発表する。そして植民地化の被害者たちの苦境を強調する。企業エリートと強固な軍事主義者たちは、資産を保護しあるいは戦略的な資源を手に入れるために軍事行動を要求し、人道主義者や進歩的な人々は「人道に対する犯罪」を非難してジェノサイドの被害者を救うための「断固たる措置を行う」ことを呼びかける。左翼のグループがこの合唱に加わって、その抽象的なイデオロギーにぴったりの被害者の集団を見つけ出し、「人々が自らを解放するために武装させよ」(ママ)と帝国権力に懇願する。帝国主義戦争への道徳的な支援と社会的な体面のお飾りを借りることによって、そして「被害者を救うための戦争」というプロパガンダを丸呑みすることによって、進歩主義者たちは「愚者の反帝国主義」の典型になる。「反帝国主義」の土台に立った広範な大衆的支持を確保したときに、帝国主義権力者たちは、正義のためにという道徳的な熱狂に盛り立てられて、戦争を遂行するために安心して国民の命と公共の財産を犠牲にできるのだ。血みどろの戦いが続き戦死者が増大し国民が戦争とその犠牲を心配するようなときになると、進歩的そして左翼的な熱狂は沈黙に変わり、あるいはもっと悪くすると、「戦争の性質が変わった」とか「これは我々が考えていたような戦争ではない・・・」などといった主張をしながら道徳的な偽善へと変化するのである(3) 。あたかも戦争実施者たちが前もって、どのようにどうして帝国主義戦争を行うべきかを、進歩主義者や左翼と相談していたかのように!
 現代という時代では、帝国による「反帝国主義戦争」と攻撃が、十分な資金を得た「草の根運動」、いわゆる「非政府組織」によって幅広く支持されそそのかされるようになった。それらは帝国主義的な攻撃を「招く」ことができる大衆運動を起こすために行動する(4) 。
 過去40年以上にわたって米国帝国主義は少なくとも24の「草の根」運動を扇動してきたのだが(5) 、それらは、民主的な政府を破壊し、集団主義的な福祉国家を破滅させ、標的とされた国々の経済に大きな損害を与えてきたのだ。
 チリでは民主的に選ばれたサルバドール・アジェンデ政府の下で1972年から73年を通して、CIAが資金を与えAFL-CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)を通した巨大な支援によって、私営の運輸業者たちに物品とサービスの流れを止めるようにさせた。彼らはまた、銅の産出と輸出を止めるために(エル・テニエンテ鉱山で)銅鉱山労働組合の部門によるストライキに資金を与え、そしてついにクーデターにまで至らしめた(6) 。軍が政権を握った後、多くの「草の根」キリスト教民主主義同盟の役員たちが、選挙で選ばれた左翼の組合活動者へのパージに参加した。言うまでも無いことだが、運輸業者と銅鉱山労働者たちは直ちにストライキをやめてその要求を引き下げ、結局のところあらゆる交渉権を失ったのである!
 1980年代に、CIAはバチカンの経路をとおしてポーランドの「連帯」を支援するために何百万ドルも送金した。そしてグダニスク造船所の労働者のリーダーであるレフ・ワレサを英雄にしたのだが、彼は共産主義政権を転覆させるためのゼネストの先頭に立った(7) 。共産主義政権が倒されると同時に保障された雇用と社会保障と労働組合組織もまた消えてしまった。ネオリベラル政権はグダニスクの労働者を50%に減らし終にはそこを閉鎖してしまい、全部の労働者を解雇したのである。ワレサは豪勢な大統領年金付きで退職し、一方でかつての彼の同僚は路上をさまよい、そして新たな「独立」ポーランドの支配者たちはアフガニスタンやイラクでの帝国主義戦争のためにNATOに軍事基地と軍需用品を提供したのである。
 2002年にホワイトハウスとCIAとAFL-CIO、そして複数のNGOが、ベネズエラの軍と産業界と労働組合と官僚が率いる「草の根」クーデターを支援して、民主的に選出された大統領チャベスを追い落とした(8) 。48時間のうちに、都市の貧困階層による100万人の強力な自然発生的な草の根の運動が、軍隊内の護憲勢力を後ろ盾にして、米国をバックにする独裁者を打ち破りチャベスを権力の座に戻した。続いて石油産業の重役たちがロックアウトを命じたのだが、それは米国に資金を与えられた多くのNGOの支持を得たものだった。彼らは労働者たちが石油産業を奪い取ることで打ち倒された。この不成功に終わったクーデターとロックアウトはベネズエラの経済に何十億ドルもの損失を与え、GNPが2桁も下降する原因を作った。
 米国は「草の根」武装イスラム聖戦主義者を支援してボスニアを「解放」し、「草の根」テロリストであるコソボ解放軍に武器を与えてユーゴスラビアを解体した(9)。米国がベオグラードを爆撃し経済を破壊してそれを「ジェノサイドへの返答だ」と主張したときに、ほとんど全ての西側左翼がこれを褒め称えた。コソボの「自由と独立」は、欧州最大の米軍基地を備えた巨大な白人奴隷商人のマーケットとなった(10)。そこは全欧州で外国に移住する割合が最も高いのである。
 帝国主義「草の根」戦術は、人道主義的、民主的、そして反帝国主義的レトリック、資金と訓練を与えられる各地のNGOと結びついており、マスメディアによる西側の世論、特に「著名な左翼人士の道徳的な批評」を動員するための大キャンペーンがその権力掌握の背後に付き添っているのである。

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