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徽宗皇帝のブログ 徽宗皇帝のブログ

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日本の家電業界の不振

「アフリカビジネス入門」芝陽一郎著という本があるが、その中に驚くべき表がある。「アフリカへの家電輸出(2002~08年)」という表(P11)である。
その表によるとアフリカにおける中国製品の輸出占有率は

1 室内エアコン90.75%(韓国2.1% 日本0.01%)
2 冷蔵庫72.53%(韓国2.84% 日本0%)
3 カラーテレビ83.89%(韓国3.32% 日本0.04%)

という状態である。韓国・日本は比較のために載せたもので、室内エアコンの2位はマレーシアの3.40%、冷蔵庫の2位はEUの11.06%、カラーテレビの2位もEUの10.15%である。アフリカはもともと欧州の植民地で欧州との縁が深いのだから、EUが上位に来るのはわかるが、それにしても中国のアフリカ輸出は突出している。
日本はアフリカに興味が無いのか、それともアフリカでは日本製品は評価されないのか、おそらくその両者だろう。ガラパゴス進化を遂げたのは携帯電話だけではない。日本人から見ても、日本の家電製品は要らない機能がごちゃごちゃ付いていて、その分耐久性が低くなっている。そして割高だ。アフリカで求められることはありえないだろう。
家電製品に求められるのは、安価さ、耐久性、そして基本的機能の性能の良さである。基本性能があまり変わらないなら、値段と耐久性が選択の決め手になる。その点で、日本製品はもはや世界で勝負するのが困難になっているのだ。
洗濯機にコンピュータをつけたりテレビをくっつけたりラジオをくっつけたりしても使い道はない。しかし、日本の家電メーカーはそれに近いことばかりしている。(こういうのはアイデアでも何でもないが、開発部としては何かしなければならないから、そんな無意味な結合ばかりやるわけだ)そのうち家中を走り回る洗濯機やアイロンかけする洗濯機を作りかねない。いや、アイロンかけしてくれる洗濯機なら需要はあるだろうが、原子力洗濯機などはどうか。鉄腕アトムが盥を使ってゴシゴシ洗濯してくれるのだ。
家事すべてが全自動の家、というのが昔の喜劇映画でよくあったのだが、マジックハンドで卵を割って目玉焼きを作り、自動的にプレートに載せ、食卓に出てくるような家だ。だが、未だにそういう家はない。なぜか。誰も必要としないからだ。
家電として最低限必要な機能だけつけて、耐久性があり、値段が安いのを作り、新興国向けに売る、という戦略もこれからは考えていくべきではないだろうか。いや、今のような格差時代では、日本でもそういう需要は高いはずである。
もちろん、日本のように労働者の平均賃金が高い国では価格競争は無理だ、という意見がすぐに出るだろうが、できないかどうか、やってからにするべきだろう。そもそも、生産ラインのほとんどが機械化されている日本の工場で、労働者の賃金がそれほど決定的要素になるとは思えないのである。それに、日本の労働者の賃金が本当に高いとも思えない。少なくとも、EUの労働者よりは下だろう。そのEUのアフリカでの健闘を見れば、日本の家電業界の不振は、ただの戦略ミスではないかと思われる。


(村上龍のウェブマガジン「JMM」の投稿記事から転載)

 これまで、日本の家電メーカーは、その高い技術力で高品質の製品を生産し、海外
で高価格でも評価が高かったと言えます。しかし、以前にも書きましたが、90年代
以降経済のグローバル化、IT技術の進歩と世界的な拡大で、冷泉さんが指摘してい
ますようにテレビをはじめ家電が新興国で生産可能となり、コモディティー(汎用品)
化してしまって、製品の品質差が急速に縮小、もはや価格差がすべてになってしまっ
たことにあります。そして、日本の家電メーカーは、液晶テレビで大画面化、薄型化、
ネット対応、3Dによる差別化を図ろうとしても、デジタル技術の陳腐化が予想以上
に早くて技術の優位性をすぐに失い、また安い部品を調達して、安価な製品投入する
海外の受託製造サービス企業の台頭もあって、急速な価格低下に対応できず、シェア
を落とし、採算悪化に追い込まれています。

 もちろん、日本という市場においては、高価格であっても、国内メーカーの多機能、
高品質にまだ顧客の支持を得ていますが、海外においては、もはや不要な機能を省い
て、品質的な差があまりなければ、低価格製品が市場を支配する中にあって、日本の
家電メーカーはシェアを落とすばかりとなってしまいます。それは、ヨーロッパに行
けば、かつてソニーの看板がどこにでも掲げられていましたが、今やそれがサムスン
電子やLG電子に取って代わられていることに表れています。とはいっても、その韓
国も、日本と同じ状況に追い込まれています。デジタル技術が、台湾や中国などの新
興国にあまり時間をおかずに広がり、低価格の製品を投入できる新興企業が続々誕生
して、韓国企業のテレビ事業も採算悪化を招いています。今後もこの流れは、中国か
らインドへと市場が拡大するにつれて変わらず、同じことが起きると思います。

 そういう中で、日本の家電メーカーが、高品質、高価格で売り出しても、今後市場
が拡大する新興国では、ほとんど品質に差がなく、価格で勝負が決まってしまうこと
を考えれば、もはや海外での拡大展開は難しく、日本という国内市場においても、技
術の優位性を失い、韓国勢や中国勢などとの競争となり、価格によりその地位が崩れ
るかもしれません。そう考えると、日本の家電メーカーが、現在のように、高品質を
謳って製品で勝負するのであれば、成長していくという明るい未来はあまり描けない
のではないかと思います。

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