野田総理がTPP参加の意向を示しているが、TPPによる災厄のうち、国民に真っ先に襲いかかるのが医療面だろう。TPP参加後におそらく日本は混合診療になる。つまり金の無い庶民が受けられる医療が非常に限定されるわけだ。
医者はほとんどが金儲けの容易な自由診療の方へ行き、やがて保険医療に従事する医者の減少から、医療保険そのものが廃止される。こういう崩壊は、始まったらあっという間である。
自分は金があるから自由診療の病院に行けばいいさ、という金持ち以外は病気になっても予約待ちになり、予約の期日が来た時には病気が治っていたという「寿限無」のラストみたいな話になるか、死んでいたという話になる。
まあ、TPPの内容を聞いてから参加しろ、という話なのだが、日本政府はまず参加してからその内容を勉強するつもりのようだ。おーい、船に乗るなら、その行先を聞いてから乗るもんじゃないのか?
難船を目の前にして「どうしてこんな船に乗り込んだんだろう」と青い顔で呟いても遅いって。
(以下「小野昌弘のブログ」から引用)
TPPと医療
90年代以来の医療関連制度の改変により、日本の平等な医療制度はすでに瀕死の状態です。菅直人政権が発足して以降、TPP(注1)への参加がにわかにいわれるようになりましたが、その実態は知られないままTPP参加、開国という言葉が呪文のようにいわれています。しかし、すでに明らかになってきているように、TPPは公汎な分野にわたる協定であり、その中には医療制度が含まれます。今日はTPPの医療制度への影響について述べます。
混合診療の解禁が迫られたのはTPPが初めてではありません。鳩山政権以前は、米国による年次改革要望書で医療分野を米国企業の都合のよいように改変するため事細かな要求が毎年出されていました。それをうけた規制改革会議が混合診療の解禁と株式会社参入を画策してきましたが、何とか押しとどめて来たというのが最近の歴史です。 http://goo.gl/BP1gi
今回のTPP参加について日本医師会は「混合診療を全面解禁すれば、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大する。これは外資を含む民間資本に対し、魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する。..公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。」と述べています. http://goo.gl/eGMVe
日本医師会は国民皆保険が崩壊すると懸念しているが、既に日本の医療制度・国民皆保険は瀕死の状態。非正規雇用増加で、健康保険料が払えずに病院にかかれない若者が増加しています。06で70万人程度が無保険、2割の国民が無保険になる可能性と指摘されています http://goo.gl/yIlcX 正確な実態の把握が急務です。
日本が先進国では稀なほど便利で質のよい医療が受けられる国であるということが忘れられています。例えば、お腹が痛くなって消化器専門医を受診したくなったとします。日本では、長くて数時間まてば専門医に治療してもらえます。欧米では、公的保険制度では一般医以外を直接受診出来ない事が普通です。
うまく一般医を納得させられて、専門医を予約できたとして、(どんなに今調子が悪くても)専門医に診てもらえるのは大抵早くて2週間後。ある友人は、最近、腹痛で度々一般医を受診していたが放置され、もちろん専門医受診の機会はないうちに虫垂が破裂、腹膜炎になり結局救急で緊急手術しました。
日本では考えられないのですが、緊急入院しても医者や看護婦がすぐに病室に来てくれるとは限らないそうです。その友人は、たまたま危篤になる前に医者が来てくれたので緊急手術にまわしてもらえて命拾いしたので運がよかったと思うとのこと。病院の中まで医療過疎地だということを改めて認識しました。
一方で、高額の民間医療保険にはいっている人や金持ちは、プライベートの病院を受診できます。ここは完全予約制で、待ち時間なく、専門医に30分ほどかけてゆっくり診察してもらえます。こういう病院は初診料だけで最低1-3万円はかかるので、庶民が受診することは不可能。これが医療格差の実態です。
TPPに含まれる、混合診療と医療への株式会社参入の解禁は、日本の平等で良質な医療システムの息の根を止めるためのもの、と言って過言ではないと思います。この結末は、高額な医療費・保険費用と医療格差です。そして、この改変で確実に得をするのは、外資の民間健康保険会社でしょう。
TPPにより日本の国民皆保険制度が終焉の危機です。(日本医師会) http://goo.gl/z8SrS ー「崩壊」の危機ではなく「終焉」の危機であることに注意してください。既に日本の平等な医療制度は瀕死の状態。医師会はこれまで業界利益団体としてマスコミにネガティブキャンペーンを受け続けてきましたが、国民の立場で皆保険を守ろうとしています。
これまでも医療規制緩和の議論と並行して、医療の些末な問題が大きくとりあげられてきました。ここでもマスコミの情報操作に惑わされて国民にとって誰が味方であり、誰が敵であるか、を誤ってはいけません。医療に問題が山積していることは、現場ではたらく医療従事者は重々承知です。これまでの医療における法的・社会システム上の問題は大きくなるばかりでしたが、医療関係者が皺寄せをうけても現場の努力で吸収して破綻を避けてきました。しかし、医療崩壊が進む中、現場にはもはや衝撃を吸収する余力はありません。また、上に述べたように皆保険制度が実質的に破綻しはじめていることは、社会全体のセーフティネットの問題と大きく関わっています。ここにも余裕があるはずはなく、日々状況は深刻になっていると思われます。人的にも経済的にも破綻は既に近いのです。今議論すべきなのは、逆であって、どのようにしてこの医療崩壊を食い止めるかという議論であり、実際にこのシステムを守るための方策作りです。
TPPを推進するひとたち、以前より規制改革会議などで混合診療の解禁と株式会社参入を求めて来たひとたちは、欧米にこうした医療格差が存在することを知っているはずです。知っているからこそ、日本の平等な公的医療制度が「ビジネスチャンス」に見えるのです。それを利用して金儲けができることを知っているのです。医療関係者で推進するひとは、実情を知っているからこそ、欧米の医療関係者と同じようなレベルで金儲けがしたくてたまらないのでしょう。
人は、このような人たちを新自由主義者と呼びます。しかしそれだけでは実態は分からない。私が重大な問題と感じているのは、ー主義でいえるような政治的立場ではないです。欧米の実情を知っていて、負の側面については何も言わずに、都合の悪い情報を隠して、あたかも日本の医療を改革してよくするかのような錯覚を与えながら、国民を騙して制度改悪をしようとする姿勢です。これには強い憤りを感じます。本当にためになるものならばオープンに議論すべきであり、それで困る事等何もないはずです。それが出来ないという事は、やましいことがあるからにほかならないと思います。
今後大きく動いて行く政局の陰に隠れてTPP(あるいは類似の条約・協定)を結んだり制度改悪を行われる危険性は当面続くと思います。国民の絶え間ない監視、関心をもち議論をし続けていくことが重要な課題だと思います。
(2011年2月2-8日ツイートより。改変、追加)
注1)TPP (trans-pacific partnership). なぜか環太平洋戦略的経済連携協定と訳しますが、これは作為的に感じます。まるで環太平洋(Pacific rim)諸国が全て参加するような錯覚をおこさせますが、日米で参加予定諸国の総計GDPの9割を占める実質的には日米条約です。trans-pacific partnershipをそのまま訳して「太平洋をまたいだパートナーシップ」とでも訳したほうがよいように感じます。trans-pacificは太平洋をまたいだ位置関係で、特に北米と日本・中国をはじめとする東アジア諸国との関係に使われて来ました。日本は地理上、trans-pacificの最前線に位置していることに注意。
医者はほとんどが金儲けの容易な自由診療の方へ行き、やがて保険医療に従事する医者の減少から、医療保険そのものが廃止される。こういう崩壊は、始まったらあっという間である。
自分は金があるから自由診療の病院に行けばいいさ、という金持ち以外は病気になっても予約待ちになり、予約の期日が来た時には病気が治っていたという「寿限無」のラストみたいな話になるか、死んでいたという話になる。
まあ、TPPの内容を聞いてから参加しろ、という話なのだが、日本政府はまず参加してからその内容を勉強するつもりのようだ。おーい、船に乗るなら、その行先を聞いてから乗るもんじゃないのか?
難船を目の前にして「どうしてこんな船に乗り込んだんだろう」と青い顔で呟いても遅いって。
(以下「小野昌弘のブログ」から引用)
TPPと医療
90年代以来の医療関連制度の改変により、日本の平等な医療制度はすでに瀕死の状態です。菅直人政権が発足して以降、TPP(注1)への参加がにわかにいわれるようになりましたが、その実態は知られないままTPP参加、開国という言葉が呪文のようにいわれています。しかし、すでに明らかになってきているように、TPPは公汎な分野にわたる協定であり、その中には医療制度が含まれます。今日はTPPの医療制度への影響について述べます。
混合診療の解禁が迫られたのはTPPが初めてではありません。鳩山政権以前は、米国による年次改革要望書で医療分野を米国企業の都合のよいように改変するため事細かな要求が毎年出されていました。それをうけた規制改革会議が混合診療の解禁と株式会社参入を画策してきましたが、何とか押しとどめて来たというのが最近の歴史です。 http://goo.gl/BP1gi
今回のTPP参加について日本医師会は「混合診療を全面解禁すれば、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大する。これは外資を含む民間資本に対し、魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する。..公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。」と述べています. http://goo.gl/eGMVe
日本医師会は国民皆保険が崩壊すると懸念しているが、既に日本の医療制度・国民皆保険は瀕死の状態。非正規雇用増加で、健康保険料が払えずに病院にかかれない若者が増加しています。06で70万人程度が無保険、2割の国民が無保険になる可能性と指摘されています http://goo.gl/yIlcX 正確な実態の把握が急務です。
日本が先進国では稀なほど便利で質のよい医療が受けられる国であるということが忘れられています。例えば、お腹が痛くなって消化器専門医を受診したくなったとします。日本では、長くて数時間まてば専門医に治療してもらえます。欧米では、公的保険制度では一般医以外を直接受診出来ない事が普通です。
うまく一般医を納得させられて、専門医を予約できたとして、(どんなに今調子が悪くても)専門医に診てもらえるのは大抵早くて2週間後。ある友人は、最近、腹痛で度々一般医を受診していたが放置され、もちろん専門医受診の機会はないうちに虫垂が破裂、腹膜炎になり結局救急で緊急手術しました。
日本では考えられないのですが、緊急入院しても医者や看護婦がすぐに病室に来てくれるとは限らないそうです。その友人は、たまたま危篤になる前に医者が来てくれたので緊急手術にまわしてもらえて命拾いしたので運がよかったと思うとのこと。病院の中まで医療過疎地だということを改めて認識しました。
一方で、高額の民間医療保険にはいっている人や金持ちは、プライベートの病院を受診できます。ここは完全予約制で、待ち時間なく、専門医に30分ほどかけてゆっくり診察してもらえます。こういう病院は初診料だけで最低1-3万円はかかるので、庶民が受診することは不可能。これが医療格差の実態です。
TPPに含まれる、混合診療と医療への株式会社参入の解禁は、日本の平等で良質な医療システムの息の根を止めるためのもの、と言って過言ではないと思います。この結末は、高額な医療費・保険費用と医療格差です。そして、この改変で確実に得をするのは、外資の民間健康保険会社でしょう。
TPPにより日本の国民皆保険制度が終焉の危機です。(日本医師会) http://goo.gl/z8SrS ー「崩壊」の危機ではなく「終焉」の危機であることに注意してください。既に日本の平等な医療制度は瀕死の状態。医師会はこれまで業界利益団体としてマスコミにネガティブキャンペーンを受け続けてきましたが、国民の立場で皆保険を守ろうとしています。
これまでも医療規制緩和の議論と並行して、医療の些末な問題が大きくとりあげられてきました。ここでもマスコミの情報操作に惑わされて国民にとって誰が味方であり、誰が敵であるか、を誤ってはいけません。医療に問題が山積していることは、現場ではたらく医療従事者は重々承知です。これまでの医療における法的・社会システム上の問題は大きくなるばかりでしたが、医療関係者が皺寄せをうけても現場の努力で吸収して破綻を避けてきました。しかし、医療崩壊が進む中、現場にはもはや衝撃を吸収する余力はありません。また、上に述べたように皆保険制度が実質的に破綻しはじめていることは、社会全体のセーフティネットの問題と大きく関わっています。ここにも余裕があるはずはなく、日々状況は深刻になっていると思われます。人的にも経済的にも破綻は既に近いのです。今議論すべきなのは、逆であって、どのようにしてこの医療崩壊を食い止めるかという議論であり、実際にこのシステムを守るための方策作りです。
TPPを推進するひとたち、以前より規制改革会議などで混合診療の解禁と株式会社参入を求めて来たひとたちは、欧米にこうした医療格差が存在することを知っているはずです。知っているからこそ、日本の平等な公的医療制度が「ビジネスチャンス」に見えるのです。それを利用して金儲けができることを知っているのです。医療関係者で推進するひとは、実情を知っているからこそ、欧米の医療関係者と同じようなレベルで金儲けがしたくてたまらないのでしょう。
人は、このような人たちを新自由主義者と呼びます。しかしそれだけでは実態は分からない。私が重大な問題と感じているのは、ー主義でいえるような政治的立場ではないです。欧米の実情を知っていて、負の側面については何も言わずに、都合の悪い情報を隠して、あたかも日本の医療を改革してよくするかのような錯覚を与えながら、国民を騙して制度改悪をしようとする姿勢です。これには強い憤りを感じます。本当にためになるものならばオープンに議論すべきであり、それで困る事等何もないはずです。それが出来ないという事は、やましいことがあるからにほかならないと思います。
今後大きく動いて行く政局の陰に隠れてTPP(あるいは類似の条約・協定)を結んだり制度改悪を行われる危険性は当面続くと思います。国民の絶え間ない監視、関心をもち議論をし続けていくことが重要な課題だと思います。
(2011年2月2-8日ツイートより。改変、追加)
注1)TPP (trans-pacific partnership). なぜか環太平洋戦略的経済連携協定と訳しますが、これは作為的に感じます。まるで環太平洋(Pacific rim)諸国が全て参加するような錯覚をおこさせますが、日米で参加予定諸国の総計GDPの9割を占める実質的には日米条約です。trans-pacific partnershipをそのまま訳して「太平洋をまたいだパートナーシップ」とでも訳したほうがよいように感じます。trans-pacificは太平洋をまたいだ位置関係で、特に北米と日本・中国をはじめとする東アジア諸国との関係に使われて来ました。日本は地理上、trans-pacificの最前線に位置していることに注意。
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