「毎日jp」から転載。
下の記事がどれほど大きな意味を持っているか、気づいていない人が多いのではないかと思うが、これは議会制民主主義の否定に等しい暴挙である。
第一に、選挙でマニフェストを提示し、それが国民に信任されて政権を取った政権与党が、自らそのマニフェスト、つまり選挙公約を否定したということは、国民への裏切りであるということ。かつて某小泉首相が「公約って守る必要あるんですか?」と言った時、本当なら、その一言で彼の政治生命は終わって当然だった。選挙公約とは国民との約束であり、それを守らないということは、その選挙で選ばれた代議士の正当性と存在意義が失われたということなのである。
第二に、選挙公約の否定という重大事を、与党幹事長が自分の一存で簡単に決定したこと。これは、幹事長に事実上の政策決定権があることになり、総理や他の与党代議士の存在意義はない。しかも、これほどの重大事を国会ではなく、一部の人間が談合で恣意的に決めたということは、議会制民主主義そのものの否定である。
第三に、野党の自民公明両党が政権与党にマニフェストを撤回しろと迫ったことは、その与党に政権を与えた国民に対する侮辱であり、民主主義における国民意思を嘲笑する行為であること。言いかえれば国民主権の否定であること。選挙公約、あるいはマニフェストとは国民との約束である。それを破れと他党に強要することは、彼ら自身が選挙公約など守る意思が最初から無いことを露呈している。
これほどの暴挙を国民やマスコミが黙って見ているなら、もはや日本の議会制民主主義は終わったと言ってよい。
(以下引用)
特例公債法案:今国会で成立 民主主要政策、3党見直し合意
◇首相「発言には責任」 退陣条件に見通し
民主、自民、公明3党の幹事長は9日、国会内で会談し、今年度予算の財源となる赤字国債の発行に必要な特例公債法案の成立で合意した。その前提として、民主党の主要政策である高速道路無料化、高校授業料無償化、農家の戸別所得補償について見直し内容を3党が確認した。自民、公明両党は同法案に賛成する方針。菅直人首相の「退陣3条件」で最大の懸案だった同法案は、今国会で成立することが確実になった。合意を受けて菅首相は、3条件が整えば退陣する考えを改めて表明した。
菅首相は9日夜、首相官邸で「3条件が整えば退陣する意向に変わりはないか」との記者団の問いかけに「これまで自分が言ったことについては責任を持ちます」と述べた。
3党が9日交わした確認書は、(1)高速道路無料化は12年度予算の概算要求に計上しない(2)高校授業料無償化と戸別所得補償制度は、12年度以降の見直しを検討する--ことを明記。民主党の岡田克也幹事長が同日の協議でこれらの譲歩案を示し、自民、公明両党が受け入れた。子ども手当の見直しに加え民主党のほかの主要3政策についても自民党が見直しを要求。特例公債法案の成立を最優先する民主党は09年衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた政策の後退を余儀なくされた。
菅首相は9日夜、首相官邸で岡田氏と会談し、「大分前進した。苦労をかけたが、よくやってくれた。自民党もよくのんだ」と伝えた。
3党合意を受け、特例公債法案は10日の衆院財務金融委員会で可決後、11日の衆院本会議で可決され、衆院を通過する見込み。参院審議を経て24日にも成立する公算だ。
退陣3条件のうち11年度第2次補正予算は7月25日に成立し、残る再生可能エネルギー固定価格買い取り法案についても自民、公明両党は成立に協力する構えだ。自民党の谷垣禎一総裁は9日、同法案について「我が党の取り扱いの見通しがついてきた。3条件の出口が見えた」と述べた。
民主党執行部は特例公債法案の早期成立をはかり、日曜日の28日に党代表選を実施。31日の国会会期末までに自民、公明両党との政策協議を開始したうえで衆参両院で首相指名選挙を行い、本格復興に向けた11年度第3次補正予算案などが課題となる臨時国会に新首相で臨むことを目指している。ただ、首相の退陣時期を巡っては、なお不透明さも残る。【松尾良】
毎日新聞 2011年8月10日 東京朝刊
下の記事がどれほど大きな意味を持っているか、気づいていない人が多いのではないかと思うが、これは議会制民主主義の否定に等しい暴挙である。
第一に、選挙でマニフェストを提示し、それが国民に信任されて政権を取った政権与党が、自らそのマニフェスト、つまり選挙公約を否定したということは、国民への裏切りであるということ。かつて某小泉首相が「公約って守る必要あるんですか?」と言った時、本当なら、その一言で彼の政治生命は終わって当然だった。選挙公約とは国民との約束であり、それを守らないということは、その選挙で選ばれた代議士の正当性と存在意義が失われたということなのである。
第二に、選挙公約の否定という重大事を、与党幹事長が自分の一存で簡単に決定したこと。これは、幹事長に事実上の政策決定権があることになり、総理や他の与党代議士の存在意義はない。しかも、これほどの重大事を国会ではなく、一部の人間が談合で恣意的に決めたということは、議会制民主主義そのものの否定である。
第三に、野党の自民公明両党が政権与党にマニフェストを撤回しろと迫ったことは、その与党に政権を与えた国民に対する侮辱であり、民主主義における国民意思を嘲笑する行為であること。言いかえれば国民主権の否定であること。選挙公約、あるいはマニフェストとは国民との約束である。それを破れと他党に強要することは、彼ら自身が選挙公約など守る意思が最初から無いことを露呈している。
これほどの暴挙を国民やマスコミが黙って見ているなら、もはや日本の議会制民主主義は終わったと言ってよい。
(以下引用)
特例公債法案:今国会で成立 民主主要政策、3党見直し合意
◇首相「発言には責任」 退陣条件に見通し
民主、自民、公明3党の幹事長は9日、国会内で会談し、今年度予算の財源となる赤字国債の発行に必要な特例公債法案の成立で合意した。その前提として、民主党の主要政策である高速道路無料化、高校授業料無償化、農家の戸別所得補償について見直し内容を3党が確認した。自民、公明両党は同法案に賛成する方針。菅直人首相の「退陣3条件」で最大の懸案だった同法案は、今国会で成立することが確実になった。合意を受けて菅首相は、3条件が整えば退陣する考えを改めて表明した。
菅首相は9日夜、首相官邸で「3条件が整えば退陣する意向に変わりはないか」との記者団の問いかけに「これまで自分が言ったことについては責任を持ちます」と述べた。
3党が9日交わした確認書は、(1)高速道路無料化は12年度予算の概算要求に計上しない(2)高校授業料無償化と戸別所得補償制度は、12年度以降の見直しを検討する--ことを明記。民主党の岡田克也幹事長が同日の協議でこれらの譲歩案を示し、自民、公明両党が受け入れた。子ども手当の見直しに加え民主党のほかの主要3政策についても自民党が見直しを要求。特例公債法案の成立を最優先する民主党は09年衆院選の政権公約(マニフェスト)で掲げた政策の後退を余儀なくされた。
菅首相は9日夜、首相官邸で岡田氏と会談し、「大分前進した。苦労をかけたが、よくやってくれた。自民党もよくのんだ」と伝えた。
3党合意を受け、特例公債法案は10日の衆院財務金融委員会で可決後、11日の衆院本会議で可決され、衆院を通過する見込み。参院審議を経て24日にも成立する公算だ。
退陣3条件のうち11年度第2次補正予算は7月25日に成立し、残る再生可能エネルギー固定価格買い取り法案についても自民、公明両党は成立に協力する構えだ。自民党の谷垣禎一総裁は9日、同法案について「我が党の取り扱いの見通しがついてきた。3条件の出口が見えた」と述べた。
民主党執行部は特例公債法案の早期成立をはかり、日曜日の28日に党代表選を実施。31日の国会会期末までに自民、公明両党との政策協議を開始したうえで衆参両院で首相指名選挙を行い、本格復興に向けた11年度第3次補正予算案などが課題となる臨時国会に新首相で臨むことを目指している。ただ、首相の退陣時期を巡っては、なお不透明さも残る。【松尾良】
毎日新聞 2011年8月10日 東京朝刊
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