忍者ブログ

徽宗皇帝のブログ

徽宗皇帝のブログ

It's a same old story


ですから、どこのでもよいのですが、今日繁栄しているような社会をみな心に思い浮かべ、しばらく歩をとどめたところで私がゆき当たるのは、おお神さまお助けください、公共社会という名と権利を利用して私利をむさぼる金持の共謀(コンスピラティオ)のようなもの以外のものは皆無です。彼らはまず、悪らつな手段でかきあつめたものを失う心配なく保持していくために、それから貧乏人たちからみんなの労苦と労働をなるべく安く買ってそれを悪用するために、ありとあらゆる方法、術策を考案、案出します。そしてこれらの術策は、金持たちが公共ーーそれには貧民も含まれますーーの名においてこれを実施すると決定するやいなや、法律になってしまうのです。しかし、こういうひどい人間たちが飽くことを知らぬ欲望にかられて、本来ならみんなのために分けても足りるだけのものを自分たちだけで山分けにしてしまったとしても、その結果はユートピア人たちの社会の幸福な状態からはどんなにほど遠いことでしょう。
あそこでは、貨幣の使用全廃とともに貨幣に対する欲望が完全に消滅させられ、それ以来、なんと多くの煩雑な重荷がかたづけられ、なんと多くの悪の穂が根こそぎ抜きとられてしまったことでしょう。詐欺、盗み、強盗、争い、騒擾、けんか、動乱、暗殺、反逆、毒殺など、(いまでは日ごとに処罰することにより、それを抑制するというよりもそれに対する報復が行われていますが、)そういうものはすべて、貨幣を廃止すると同時に死滅してしまい、そのうえ恐怖、心配、思いわずらい、労苦、徹夜というようなものも貨幣が消滅した瞬間に消滅し、おまけに、これだけが貨幣を必要としているように見えるもの、つまり貧困さえもが、貨幣がどこでも全廃されればさっそく消え去ってしまいます。こういうことがわからないひとがあるでしょうか。
このことをもっとはっきりさせるために、飢餓が何千人もの人間の生命を消し去ってしまったというような不毛、不作の年を心に想像して見てください。私ははっきり断言します。この飢餓の後で金持たちの穀物倉を調べたとしたら、多量の穀物が見つかるでしょう

       (トマス・モア「ユートピア」中公文庫より)*途中の括弧と色字と太字は私がつけたもの。括弧内の一文は、文脈上不要かと思う。赤字部分は現在の世界的飢餓の徴候についてタイムリーだと思ったので赤字にした。つまり「作られた飢餓」である。
要するに貧困、あるいは貧富や支配・被支配関係というのは貨幣の誕生と同時に生まれたわけだ。ルソーもマルクスもそこまで言っていただろうか。

拍手

PR

コメント

コメントを書く