マスコミに載らない海外記事さんのサイトより
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2025/02/post-c77fa1.html
<転載開始>
サルマン・ラフィ・シェイフ
2025年1月27日
New Eastern Outlook

 最近、グリーンランドやパナマ運河の支配権の主張から、NATO防衛費増額要求に至るまで、新拡張主義をドナルド・トランプが推進しているのは、アメリカの優位性を回復しようという物議を醸す試みの兆候だが、世界的孤立を招くリスクもある。

 トランプ大統領の「アメリカを再び拡大する」計画

 ここ数日、ドナルド・トランプと政治同盟者は、アメリカ介入の新たな形を強調する声明を何度も発表している。パナマ運河とグリーンランド支配に関するトランプ発言から、イギリス国民をイギリス政府から「解放する」というイーロン・マスク発言まで、拡張主義的アメリカが再現しつつあるようだ。だが新拡張主義によって、アメリカは世界から孤立する可能性が高い。

 計画:アメリカ化

 グリーンランドは、いくつかのアメリカ企業が獲得を狙っている希土類鉱物の広大鉱床だ。

 1月7日、トランプはフロリダで記者会見し容赦ない態度を示した。トランプの言葉を引用すると「中国はパナマ運河の両端にいる。中国はパナマ運河を運営しており、彼らはバイデンに、大統領選に出馬することさえ許されるべきでなかった男に会いに来た」。更に「そういう時代は終わった」とトランプは宣言した。彼は近隣諸国にも挑むつもりだ。「カナダは年間約2000億ドルの補助金を受けており、他にも色々ある。彼らは本質的に軍隊を持っていない。彼らの軍隊は非常に小さい。彼らは我々の軍隊に頼っている。それは全く結構だが、彼らは費用を支払わなければならない。非常に不公平だ」とトランプは強調した。彼の考えはカナダに支払わせるだけではなく、アメリカ覇権の強化だ。安全保障のためにカナダがアメリカに支払えば、アメリカは責任を負う。これは、要するに、地政学的「アメリカ化」への道だ。
 アメリカ化を更に顕著に示すのは、メキシコ湾の名前をアメリカ湾に変更するというトランプの考えだ。「メキシコ湾の名前をアメリカ湾に変更するつもりだ。この名前の響きは美しい。この名前は広い地域をカバーする。アメリカ湾、なんと美しい名前だろう。ふさわしい。実にふさわしい」と彼は述べた。

 彼はアメリカのために、もっと領土を奪い取ろうとしている。実際には、彼はエリート層のために、これを望んでいるのだが、アメリカに何年も何十年も住んでいる移民には土地を与えずに、トランプはアメリカ領土を拡大しようとしているのだ。興味深いことに、トランプの領土拡大は、NATO加盟国デンマークとの衝突を招きつつある。「そう、我々は国家安全保障のためグリーンランドが必要だ。長年、私が立候補するずっと前から私はそう言われてきた。つまり、長年それについて人々は話してきたのだ。そこには約45,000人の人々がいる。実際デンマークがそこに何らかの法的権利を持っているかどうかさえ人々は知らないが、もし知っているなら、彼らはそれを手放すべきだ。なぜなら、それは国家安全保障上我々に必要なのだから」。彼がグリーンランドを欲しがっている主な理由は、いくつかのアメリカ企業が自分のものにしようとしている希土類鉱物の広大な鉱床だ。

 グリーンランド最大のレアアース鉱床開発者に、中国に売却しないようアメリカ当局は既にロビー活動を試みている。だが、これはうまくいっていない。そのため、トランプは、電気自動車を含む最高の電気製品生産を巡る中国との継続的戦いの一環として、グリーンランドを強引に奪取したいと考えているのだ。そこで、新拡張主義の理解やグリーンランド支配の必然性にイーロン・マスクなどのエリート連中が関与してくるわけだ。

 帝国主義的拡大から孤立化へ

 これを世界は一体どう見るだろう。トランプの発想を「新たな帝国主義者の思惑」とアメリカを本拠とする通信社APは呼んだ。主な狙いが衰退するアメリカ権力強化なのは確実だが、ヨーロッパのNATO同盟諸国によそよそしくし、世界の大半をアメリカに対抗させて、ワシントンが大きな利益を得られる可能性は低そうだ。この文脈で、NATO諸国にGDPの5%を拠出するようトランプが要求するのは、非現実的なだけでなく、極めて逆効果だ。

 この要求は、NATO同盟諸国を「動揺させた」とドイツの大手ニュース・ネットワークDWが報じた。結局、トランプと彼のアメリカ人同盟者がNATO諸国に防衛費をもっと支出させて実現したいのは、NATO諸国の資産をアメリカの資産へと移すことなのだ。多くのNATO同盟諸国はアメリカ製防衛装備に依存している。従ってNATO諸国が自国の防衛生産能力を本当に強化し、国内または大陸内で最先端兵器システムを生産できない限り、アメリカから大量購入する必要がある。いずれにせよ、トランプはNATOを窮地に追い込み、行動の余地を最小限にしてしまう。これがトランプがアメリカ支配を固めようとしている手口だ。

 だが、もしNATO諸国がGDPの3~5%を防衛費に費やすことになったら、アメリカを必ずしも関与させない共通防衛構想を彼らが発展させるのを一体何が妨げるのだろう?

 長期的には、大陸の安全保障をヨーロッパ化する動きは、アメリカ覇権からヨーロッパを解放することになるかもしれない。そのようなシナリオでは、競争相手に対するアメリカの政策調整能力は低下するだろう。これまで、アメリカが経済制裁や金融制裁によりロシアと中国の利益を損ねられた主な理由の一つは、ヨーロッパをアメリカに追随させること(同様の制裁や関税を課すこと)だった。

 だが、これらの国々の多くにとって、ドナルド・トランプが同盟者でないのは既にに明らかだ。彼らはアメリカの先導に依然従うだろうか? ヨーロッパがアメリカの後を追わなければ、ワシントンの世界的権力は拡大どころか縮小し、「アメリカを(再び)弱体化させる」ことになるだろう。

 サルマン・ラフィ・シェイフは国際関係とパキスタンの外交・内政研究者

記事原文のurl:https://journal-neo.su/2025/01/27/trumps-make-american-expand-again-programme/

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<転載終了>